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汚屋敷の兄妹  作者: 髙津 央
第五章 汚屋敷の兄妹
112/130

112.嘲笑-兄

 ツネ兄ちゃんが深刻な顔で説明を始めた。

 「乳幼児の胃って縦型で食べ物を貯め難いから、ちょっとした刺激ですぐ吐いてしまう。小さい子が泣き過ぎて吐いて、嘔吐物で窒息死って、よくある事故なんだよ」

 「いや……デヒャヒャヒャヒャ……み、三十路でそれはフヘヘねーってフヒャヒャ……」


 叔父さんが食卓を拳で叩いた。

 外まで響き渡る音に驚いたのか、ゴミニートの下卑た笑いが止まる。

 「優一! お前は人の話もまともに聞けないのか! ……大人でも、病人や高齢者、酩酊者(めいていしゃ)が嘔吐物で窒息死するのは、ままある事だ。お前、ヘタしたら人殺しだったんだぞ?」


 「二人は宗教(むねのり)が子供の頃、護衛に任命されて、教育係も兼ねてる。三枝さんには、宗教(むねのり)と同じように、心臓に障碍がある息子さんが居たんだけど……その子は、護衛の辞令が出る直前に亡くなったんだそうだ。私達と同い年だったんだけどな……」

 ツネ兄ちゃんが、しんみりした声で説明した。


 「いや、計算合わねーだろ。二人とも、どう見ても二十代……」

 「二人はゆっくり年を取る人種だから、見た目よりもずっと高齢なんだ」

 魔法と科学を折衷する「両輪(りょうりん)の国」も含めて、魔法文明圏の人口の約三割は、何百年も生きる長命人種(ちょうめいじんしゅ)だ。

 「それで三枝さんは、宗教(むねのり)を我が子同然に思ってくれてる。……大体、ゆうちゃんが暴言吐いて傷つけた癖に、何、笑ってるんだよ!」

 ついに怒ったツネ兄ちゃんに説明を任せ、マー君は食器を回収する。


 藍ちゃんが下座の土鍋を持って座敷を出た。


 「いや、そんなのお前らが、先にオレに暴言吐いたからだろうが。何が『傷ついた』だよ。ニートは何言われても、サンドバッグでいろってのか!? そもそもオレを怒らせて、あんな事言わせたお前らが悪いんじゃねーか!」


 何で、何もかも他人のせいなんだよ。呆れて声も出ない。


 ゴミニートは「論破した」とでも思ってるのか、ドヤ顔でみんなの顔を見回す。

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【関連  「汚屋敷の跡取り
ゆうちゃん視点の話で「汚屋敷の兄妹」と全く同じシーンがあります。

▼用語などはシリーズ共通設定のページをご参照ください。
野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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