011.旅立
十二月二十二日。
高校最後の二学期も無事終了。三学期は、受験対策の為に登校日は少ない。
お兄ちゃんと同じ方法で、大学受験の手筈も整っている。当然、お祖父ちゃんとお父さんには、秘密だ。
帰ってすぐ私服に着替え、荷物を詰めたスーツケースを持って家を出る。
一応、お祖父ちゃんとお父さんに声を掛けた。TVに夢中で返事どころか、こっちを見もしない。
私は色々諦めて、門の前に出た。
今は雪に埋もれてるけど、ウチの庭は、ほぼ産廃置場だ。
古タイヤ、壊れた農機、折れたビニールハウスの骨組、破れたハウスのビニール、壊れたハウス用照明、破れたマルチ、割れたプラケース、割れたプラ箱、割れた植木鉢、折れた脚立、刃こぼれした鋸や剪定鋏、化学肥料や農薬の袋やボトル、水漏れするホース、壊れたストーブや家電、何に使うかわからないまま朽ちた材木、壊れた自転車、車検切れの壊れた乗用車が積み上がっている。
プラ籠は、野菜運搬用の大きいアレだ。
それ以外も、ほぼ全てプロの農家用なので、大きくて重い物ばかり。
猫の額レベルの空きスペースには、物干し台が置いてある。
洗濯物を干しても、なかなか乾かない。風が通らないから。
庭木は枝が伸び放題で、農道にはみ出して、落ち葉と毛虫を撒き散らす。ご近所さんに申し訳ないから、農道だけ、私が掃除する。
でも、庭はガラクタに占領されてて、落ち葉掃きとかできない。車庫と倉庫の前は空いてるけど、古い蔵の前には近付く事もできない。
蔵の横に柿の木があるけど、一度も取って食べた事がない。
毎年、鴉が食べておしまい。家の裏も、木が鬱蒼と生い茂っていて、ちょっとした雑木林みたいになっている。
白いセダンが近付いてきた。大畑さんちの車だ。
ウチの前に停まって、すぐ後部扉を開けてくれた。
菜摘ちゃんのお父さんが、ハンドルを握ってる。お母さんが助手席から降りて、後ろの荷台にスーツケースを積んでくれた。