109.暴言-兄
「いや、でも障碍年金貰ってんだろ? やっぱ、税金泥棒じゃねーか!」
ゴミニートが無知を晒す。
年金は税金じゃねーよ。
「ゆうちゃん、この国に住んでる人は、外国人もみんな年金加入の義務があるんだよ。
宗教は、十八歳までの国籍は日之本で、父さんが生きてる間は扶養家族だったし、受給用件も満たしてる。
税金泥棒じゃなくて、正当な権利なんだよ」
言葉に詰まるノリ兄ちゃんの代わりに、ツネ兄ちゃんが説明した。
ゴミニートの纏ったヘドロが膨れ上がり、雑妖が噴出する。
「いや、もし仮に、帝大の准教授だったとしても、魔道学部なんか卒業したって就職できねーだろ。折角、帝大なのに、世間の役に立つならともかく、クソの役にも立たねーアホー学部って……Fランク私立の医学部とかの方がまだマシだろ。日之本帝国は科学の国なんだから、魔法の研究なんか役に立たねーし! 国費の無駄遣いしやがって! 国立大の予算ってのはな、国民が一生懸命汗水たらして働いて納めた血税なんだよ! 税金泥棒! しかも手帳持ってるって事は、この国に医療費とか、集ってんじゃねーか! 税金泥棒! どうせムルティフローラでも、王族ってだけで、国民の血税で贅沢三昧してんだろ!? ババアの骨折も治せねー癖に、癒し系気取って調子こいてんじゃねーぞ! 税金泥棒! そもそもお前、余分に生まれた要らん子じゃねーか! 無駄飯食って日之本帝国とムルティフローラの税金食い潰す寄生虫の分際で、メイドさんだけじゃなくて、女騎士まで侍らせるとか、生意気なんだよ! 声変わりもしてないキモいロリ声で、何もできねー分際で、女二人もキープとか、生意気なんだよ! 税金泥棒のエロガキが! そう言う事は他人様の役に立つ仕事をして、男として一人前になってからにしやがれ! 税金泥棒の分を弁えてさっさと死ねよ! 穀潰し!」
ゴミニートの一言一言が、穢れた妖魔を生みだす。
座卓も畳も、ヘドロと妖魔に埋め尽くされる。
ノリ兄ちゃんの周囲だけ、ヘドロと雑妖が避け、円形の安全地帯ができた。
俺は少し身を引いた。
ノリ兄ちゃんは、声も出さずに大粒の涙をぽろぽろ零して泣きだした。その膝の上で黒猫がゆうちゃんを威嚇する。
もう、このゴミニート、殺っちゃってくれていいよ。
「ちょっとホントの事言われただけでメソメソ泣きやがって! 三十路にもなった大の男が情けない! 豆腐メンタルが! 打たれ弱過ぎだろ! 過保護か!?」
ゴミニートはドヤ顔でふんぞり返って、追い打ちを掛けた。
汚らわしい雑妖製造機の分際で偉そうに。
近所の人に色々聞かれて逃げた癖に。豆腐メンタルはお前だよ。
「宗教、今日は疲れたろ? もう休ませてもらおう。な?」
ツネ兄ちゃんが優しく言った。
ノリ兄ちゃんは、タワシみたいになった黒猫を抱き上げ、三枝さんに支えられながら、のろのろとした動作で立ち上がる。
双羽さんが共通語で許可を求めた。ノリ兄ちゃんが短く答え、ツネ兄ちゃんと三枝さんが頷く。
これ以前のシーンでも、ゆうちゃんが罵詈雑言吐いていますが、差別を助長する意図はありません。
ゆうちゃんの暴言は、半分くらいゆうちゃんの自己紹介になっているというブーメラン。
まぁ、こんなん読んで、ゆうちゃん思想にハマって人を差別するような思考になるとも思えませんが、念の為。よい子のみんなは、ゆうちゃんのマネしませんように。