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汚屋敷の兄妹  作者: 髙津 央
第五章 汚屋敷の兄妹
108/130

108.証拠-兄

 親子丼を食べ終わった三枝(さえぐさ)さんが、丼を置いて叔母さんに向き直り、深々と頭を下げた。叔母さんは三つ指をついて返礼し、空になった丼を持って座敷を出て行った。

 居たたまれなくなったんだろう。


 「さっきから否定してばかりで、どうして人の言う事を素直に聞けないんだ」

 「いや……だって、証拠が……」

 「特許の事なら、特許庁で手続きすれば、登録情報を見せてもらえるよ」

 「会社の事なら、法務局で手続きしたら、登記簿を開示してもらえるよ」

 ツネ兄ちゃんが淡々と説明し、マー君が真似して言った。


 「ごっ……ごちそうさま。アッ君も食い終わったよな!? 宿題教えてやっから来いよ」

 「う……うん。ごちそうさまでした」

 中坊二人が、空の食器を持って立ち上がった。気まずくなったらしい。

 団欒ブチ壊し。


 「この国で魔法使いって珍しいし、帝大サイトの学部紹介とかに載ってるんじゃない?」

 藍ちゃんが冷やかに言った。

 下座の土鍋はほぼ空になっていた。

 「いや、そんなサイトなんて、その気になれば、いくらでも改竄(かいざん)できるし……」

 「ゆうちゃん騙す為だけにそんな犯罪までしてどうすんだ。ハイリスクノーリターンじゃないか」

 マー君がご飯を頬張りながら、呆れて言った。

 双羽(ふたば)隊長が、空になった食器を重ねる。


 「うるせえ! そんなに言うなら証拠見せろよ! 証拠!」

 ノリ兄ちゃんが、ポケットから身分証を出して、おずおずと開いてみせた。

 帝大の職員証、帝大の健康保険証、障碍者手帳、外国人登録証。

 「いや、こんなの偽造しようと思えば、子供でも簡単に作れるし! て言うか、これ本物だったらお前、外人じゃねーか!」

 「宗教(むねのり)は、十八歳の時にムルティフローラ籍を選択したんだ。今は『教授』の在留資格で働いてるんだよ。それに、病気や障碍で働けない人は『ニート』じゃないよ」

 ツネ兄ちゃんが、わかりやすく説明する。


 ゴミニートは鼻で笑った。

 「は? いや、三つ子なのに、ムネノリ君だけ?」

 「ムルティフローラは魔法の国だから、魔力がない人は国籍を取得できないんだ。(ともえ)の親族は王家と血縁があっても、宗教(むねのり)以外、誰も魔力を持ってないよ」

 面倒臭い込み入った事情を、ゆうちゃんの為だけに説明し直す。

 ツネ兄ちゃんが気の毒だ。マー君は、ツネ兄ちゃんに説明を任せて、土鍋の中から鳥のささみをかき集めている。

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【関連  「汚屋敷の跡取り
ゆうちゃん視点の話で「汚屋敷の兄妹」と全く同じシーンがあります。

▼用語などはシリーズ共通設定のページをご参照ください。
野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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