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汚屋敷の兄妹  作者: 髙津 央
第五章 汚屋敷の兄妹
107/130

107.説明-兄

 「ゆうちゃん、そんな無神経な事言って、真穂ちゃんの神経逆撫でするんなら、俺達も今から、ゆうちゃんに気を遣うの、やめるからな」

 マー君が取り皿を山盛りにしながら、ゆうちゃんの方を見もせずに言った。

 「まず俺から。商都大学(しょうとだいがく)の経営学部在学中、経済(つねずみ)の発明品で特許取って起業。卒業後もぼちぼち会社経営を続けてる。はい次、経済(つねずみ)な」

 「都立高専を卒業して、三回生から古都大学に編入して、院で機械理工学を専攻して、卒業後は政治(まさはる)の会社で技術部長してるよ」

 マー君に促されて、ツネ兄ちゃんも簡潔に略歴を語った。

 二人とも大卒。しかもツネ兄ちゃんは「東の帝大、西の古都」って言われるこの国で一番難しい大学の院卒。


 「いや、いやいや、どうせ学生ベンチャーなんか、どれも中小ブラックで、万年赤字じゃないか。大学も特許も、オレを凹ます為に話盛ってるだけじゃん」

 「確かに、俺と経済(つねずみ)入れても七人の小さな会社だ。ちゃんとした技術者は経済(つねずみ)だけだし、今の所、生産も人手も不足分は外注で賄ってる。

 会社を大きくし過ぎても動き難いから、人増やしたり規模を大きくする気はない。ここ数年の年商は毎年、百十六億くらい。そんなに儲かってはないけど、とんとんで、赤字もないぞ」

 ゴミニートは、羨ましくて妬ましくて、認めたくないらしい。

 何か喋る度に、口から雑妖がボロボロ零れる。


 汚らしい。


 マー君は、普通に会社の説明をした。

 学生ベンチャーを十年以上維持できるって、それだけでも相当凄い。

 マー君に促されて、ノリ兄ちゃんも口を開きかけた。

 ゴミニートがそれを遮る。

 「いや、言わなくてもわかる。障碍年金でニートだろ」

 「宗教(むねのり)はちゃんと働いてる。ほら、宗教(むねのり)、教えてやれ」

 マー君が口を挟んだ。


 障碍年金の受給者は、働けなくても正当な理由があるから、ニートじゃない。


 ノリ兄ちゃんが、遠慮がちに説明しようとする。

 ゴミニートは、また遮った。

 「いや、働いてるったって、どうせ金払って働かせて貰う作業所とかなんだろ?」

 「ゆうちゃん、聞きたくないのはわかるけど、遮らずにちゃんと聞けよ」

 今度は、俺も我慢できずにゴミニートを黙らせた。


 「あのね、僕、母校で先生してるの」

 「宗教(むねのり)、そんな省略せずに、経済(つねずみ)みたいに言うんだ」

 ノリ兄ちゃんの控えめな説明に、マー君がダメ出しした。

 「えっ? う……うん。僕、帝国大学の魔道学部に入学して、院で術理解析学を専攻して、卒業してからも、ずっと大学に居るの。えっと……今それで、准教授してます」

 ゆうちゃんが全力で否定する。

 「いや、いやいやいやいや、そんな見え見えの大嘘……」

 「優一! いい加減にしないか!」

 半笑いで否定するゆうちゃんに皆まで言わせず、米治叔父さんが眉間に皺を寄せて一喝した。

 ※三回生……「105.集合-妹」のあとがき参照。経済(つねずみ)も配慮するのをやめました。

 高等専門学校は五年制なので、卒業後、大学に進学すると、三回生(=三年生)からの編入になります。

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【関連  「汚屋敷の跡取り
ゆうちゃん視点の話で「汚屋敷の兄妹」と全く同じシーンがあります。

▼用語などはシリーズ共通設定のページをご参照ください。
野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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