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汚屋敷の兄妹  作者: 髙津 央
第五章 汚屋敷の兄妹
106/130

106.記録-兄

 ここから賢治視点開始。

 俺はICレコーダの録音ボタンを押し、ネルシャツの胸ポケットに戻した。

 打ち合わせ通り、証拠として聞きとりやすいよう、事務的に説明する。


 「今から言う事、記録するぞ。

 ……二二一三年十二月二十九日、山端賢治(やまばたけんじ)真穂(まほ)は、もうこれ以上、ゴミ屋敷の住人とは付き合い切れない為、ゴミと一緒に実家も捨てます。

 大掃除完了後は、今後一切、山端の本家とは縁を切ります」


 「私、山端真穂は、このまま家に居たら、高校卒業と同時に、(なわて)家の長男と結婚させられてしまいます。

 祖父が勝手に縁談を決めて、畷家は完全にその気です。

 私は、自分の父親より年上の男性との結婚なんて、絶対に嫌です。好きでもない人との結婚は、絶対にしません。

 役所には、婚姻届不受理届を提出済みです。引っ越し先も既に決まっています。

 歌道山町(うどうやまちょう)には、もう二度と、絶対に、戻ってきません」


 ゆうちゃんはポカンとしたが、一応、常識的な言葉を口にした。

 「いや、でも、そんなの、普通に断ったらいいだろ」

 「お祖父ちゃんもお父さんも、向こうの家の人達もみんな超乗り気で、嫌がってるのは私一人なの! ここに住んでたら、何されるかわかんないの! だから卒業前に出て行くの! 頼むから邪魔しないで!」

 真穂が食卓を叩いて、ゴミニートを睨みつける。空の茶碗が跳ねた。


 菜摘(なつみ)ちゃんから、(なわて)さんがよからぬ事を企んでいると言う噂を聞いて、俺達は真穂が一人にならないように気を配っていた。

 ノリ兄ちゃんの魔法で、畷さん本人は近付けなくなったけど、あっちの家族はフリーだからだ。


 「いや、お前、家出て、それで、どうやって生活すんだよ?」

 「都会の大学に進学するの。お母さんに書類書いて貰って奨学金受けて、バイトもして自分で生活するの。それで、そのまま都会で就職するの」

 「いや、お前なんかに大学は無理だって。身の程を知って、身の丈に合った目標立てろよ。どこ受けてもどうせ落ちる。就活も、お前みたいな田舎娘が都会で雇われる訳な……」

 「ゆうちゃんと一緒にしないで! 私は命懸ってるの!」


 絵にかいたような「お前が言うな」を目の当たりにするとは……

 身の丈に合わない目標立てて、大学に落ちて引きこもってる分際で、何でこんな上から目線になれるんだろう?

 こんなのと血が繋がってると思いたくない。


 真穂は高校に入ってからずっとバイトして、必要な物は自分の稼ぎで賄ってる。成績も見せてもらったけど、余程の事がない限り、志望校には落ちないだろう。

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【関連  「汚屋敷の跡取り
ゆうちゃん視点の話で「汚屋敷の兄妹」と全く同じシーンがあります。

▼用語などはシリーズ共通設定のページをご参照ください。
野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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