105.集合-妹
そこそこ食べ進んだ頃、マー君がゆうちゃんの手を引っ張って来た。
ゆうちゃんの肩を押さえて、ノリ兄ちゃんの向かいに座らせる。マー君は「いただきまーす」と言って、お兄ちゃんの隣に腰を下ろした。
「いや、あの、メイドさんは?」
「クロに用事? 今、ちくわ食べてるから、後にしてくれる?」
ノリ兄ちゃんが答えた。
メイドさんって……クロエさんって呼び名がちゃんとあるのに。
ゆうちゃんが、いただきますも言わずに箸を鍋に伸ばした。
マー君がその手を叩く。
ゆうちゃんは、マー君に嫌みたっぷりに言われて、嫌々「いただきます」と言った。
叔父さんが、藍ちゃんとコーちゃんを紹介する。コーちゃんが、箸を持ったままぺこりと頭を下げた。
ゆうちゃんは無反応。
マー君も、政晶君を紹介した。
「いや、中二って……マー君、幾つの時の子だよ!?」
「算数も忘れたのか? 大学一回生で結婚して、二回生の時に生まれた子だよ」
マー君が説明する。政晶君は、気まずそうに小声で「初めまして」と言った。
他のみんなは、黙々と鍋をつついていた。
マー君がゆうちゃんを肘でつついて促す。
「ゆうちゃん、自己紹介は?」
「いや…………えー……優一です」
誰も何も言わずに頷いて、食事を続ける。
何か気まずくなった空気を変えようと、叔父さんが明るい声で聞いた。
「ゆうちゃん、元気にしてたか?」
ゆうちゃんは無言で頷く。
叔母さんが、コーちゃんにご飯のおかわりを渡した。
「元日におばあちゃんが退院してくるけど、まだ完治してないから、ゆうちゃんがしっかり看病してやるんだぞ」
「えっ? いや、賢治と真穂は?」
「俺はもう家を出て大学行ってるし、大掃除終わったら、すぐ戻ってバイトに出るから」
「私も、大掃除終わったら、家を出るから」
「はあ? いや、いやいやいやいや、お前ら、何言ってんの?」
まぁ、初めて説明したし、狼狽えるのも仕方ないか。
真穂視点、一旦終了。
※一回生、二回生……リアル世界の関西地方の大学では、一年生、二年生と言わずにこういいます。
政治と経済も、この世界の関西に相当する地方の大学出身です。
経済は「077.対面」で、他の地方に住むゆうちゃんにも通じるように「大学四年生」と言いましたが、政治は配慮する気ゼロです。