表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
汚屋敷の兄妹  作者: 髙津 央
第五章 汚屋敷の兄妹
104/130

104.水炊-妹

 今夜は水炊き。

 ノリ兄ちゃんも食べられるように、お肉は脂の少ない鶏のササミ。それと、ちくわ。

 鍋物はみんな同じのを食べるから、リスク分散の為に護衛の二人は別メニュー。双羽(ふたば)さんは焼き魚とご飯と漬物、三枝(さえぐさ)さんは親子丼。


 にゃんこの形になったクロエさんが、バットに盛られたちくわをじーっと見てる。

 「クロ、ちくわ欲しいの? 叔母さん、クロに少しあげていいですか?」

 「いいよいいよ。まだあるから、別のを出してあげようね」

 ノリ兄ちゃんが聞くと、叔母さんは台所に引っ込んだ。

 お皿に一口サイズに切ったちくわを盛って、畳の上に置いた。

 「ありがとうございます。クロ、みんなが、いただきますしてから食べようね」

 「いいえ、どういたしまして」

 ノリ兄ちゃんが、にゃんこのクロエさんの代わりにお礼を言った。おあずけ状態の黒猫は、ちくわをじーっと見てる。

 そんなに好きなんだ。

 真知子叔母さんは、くすぐったそうに笑った。


 上座、床の間を背にしたお誕生日席に、米治叔父さん。

 廊下側の席に上座からノリ兄ちゃん、ツネ兄ちゃん、政晶(まさあき)君。ノリ兄ちゃんの膝の上ににゃんこのクロエさん。

 政晶君の向かいにお兄ちゃん。お兄ちゃんの隣は空の座布団が二枚。

 下座卓にはコーちゃん、私、末席に真知子叔母さん。叔母さんの向かいに藍ちゃんが座った。


 上座卓七人に大きな土鍋、下座卓四人にちょっと小さめの土鍋が湯気を立てている。

 ノリ兄ちゃんの後ろの小さい卓袱台(ちゃぶだい)に、双羽さんと三枝さんが座った。

 言われた通り、二人を待たずに食べ始めた。

 おいしい。真知子叔母さん、料理上手だなぁ。

 私達は、塩と酢で食中毒にならないようにするだけで、味を良くする余裕なんてなかった。


 お母さんと二人になれたら、ちゃんとした味のを作れるようになるかな?


 お祖母ちゃんは、食中毒にならない作り方を教えてくれた。

 学校の調理実習で習うのとは、全然違う。

 塩分が多くて、体に悪い作り方。食中毒は防げても、後で確実に病気になる。

 実際、お祖母ちゃんは入院してから、腎臓が悪くなってるのがわかった。

 健康診断に行かないから、気付かなかっただけ。


 真知子叔母さんの料理は、どれも薄味で優しいおいしさ。

 新鮮な材料で作ってて、栄養のバランスも塩加減もいい。

 家族のことを考えた愛情いっぱいのご飯。

 藍ちゃんとコーちゃんが羨ましい。


 わたしも毎日、こんなご飯を食べたかった。


 ノリ兄ちゃんの膝の上で、黒猫のクロエさんが、一生懸命ちくわを食べてる。

 かわいい。お掃除いっぱい頑張ってくれたもんね。

 お金が余ったら、ちくわ買ってあげようかなぁ?

 お礼のお金は受け取ってくれなかったけど、クロエさん用のちくわなら、受け取ってもらえるかな?

 クロエさんの栄養はノリ兄ちゃんの魔力だって言ってたけど、今、ちくわ食べてるし、本物の猫じゃないから、人間用のちくわで大丈夫だよね?

 お礼の品がアクセサリーとか残るものだと、後でガラクタになって迷惑かけちゃうかも知れないけど、消え物だったら、いいよね?

 まぁ、悪魔みたいなものとは言え、他人が勝手に食べ物を与えるのは躾によくないし、後で聞いてみよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【関連  「汚屋敷の跡取り
ゆうちゃん視点の話で「汚屋敷の兄妹」と全く同じシーンがあります。

▼用語などはシリーズ共通設定のページをご参照ください。
野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ