103.跳躍-妹
座敷の畳から黴を剥がしていた双羽さんが、汚水を連れて廊下に出た。ゆうちゃん達に何か言って、玄関から出て来た。
私の視線に気付いて、「血で汚れた衣服の洗い方を説明しただけです」と教えてくれた。
何から何まで、ホント、ゴメンナサイ。
日が落ちる前に何もかも片付け終わった。
後はゆうちゃんの部屋と、その真下だけ。
マー君から、お兄ちゃんのケータイに連絡があった。
「今日こそは、ゆうちゃんを分家に連れ行くから、先に食べてて、だってさ」
私達が、明日売りに行く物をガレージに仕舞っていると、中学生コンビが呼びに来た。玄関口で、政晶君がクロエさんにも声を掛ける。丁度、マー君も帰って来た。
手分けして、換気の為に開放していた窓や雨戸、襖を閉めて回る。
「何買って来たんだ?」
「ゆうちゃんのパンツ」
ツネ兄ちゃんに素っ気なく答えて、マー君は二階に上がる。
入れ替わりにクロエさんが出て来た。
ノリ兄ちゃんが、ゴミ焼きとは別の円を描いて待っていた。
いつも通り一人ずつ、双羽さんと三枝さんに魔法で洗ってもらう。
「みんな、この中入って。今日は疲れてるし、魔法で帰ろう」
「うぉーッ! スゲーッ!」
コーちゃんが叫んだ。私も胸がドキドキする。
みんなが円に入ると、ノリ兄ちゃんは今までのとは全然違う雰囲気の呪文を唱えた。何か、詩の朗読みたい。
一瞬、目眩みたいな感じがした。
分家の庭に居る。
「えっ? もう着いたの?」
「うん」
ホント、魔法ってスゴイ。
みんなもキョロキョロ見回しながら、分家に入った。
ホントに分家だ。凄過ぎて頭がついて行かない。
手を洗って、ちょっと落ち着いたら思い出した。
お礼がまだだ。
私が、ありがとうって言うと、ノリ兄ちゃんは、いいよいいよって笑った。