102.優劣-妹
双羽さんが、泥水を従えて玄関から出て来た。座敷でお兄ちゃんがゴミ袋の口を括ってる。
ゆうちゃんは、双羽さんが怖いみたい。
「本家の長男ってそんなに偉いの? ムルティフローラ国王の玄孫で王位継承権持ってるノリ兄ちゃんよりも、ゆうちゃんの方が偉いの? 何で? 根拠は?」
藍ちゃんが畳みかける。
双羽さんが泥水の汚れを捨てて中に入ると、ゆうちゃんはやっと口を開いた。
「いや、それは違うだろう。別にオレ……何も頼んでねーし、お前らが勝手に……」
「ノリ兄ちゃん、こんな奴もう放っとこう! ゴミと一緒に腐ればいいのに!」
「でも、折角ここまで片付けたし、おばあちゃんは、これからもここに住むし……」
「あー……そうだねー。おばあちゃんが困っちゃうねー」
藍ちゃんは諦めて、作業に戻った。
「優一さん、藍さんのご質問に、回答なさらないのですか?」
「え……いや……回答って……その……」
クロエさんが質問する。
ご主人様にお礼を言わないのは、悪魔でも気になるんだ。
ゆうちゃんは考えて、考えて、考えて、やっと答えた。
「いや、あの……オレよりも、ムネノリ君の方が……偉いよ。こ……根拠は多数決で……その……」
藍ちゃんが吹き出した。ゆうちゃんが睨みつける。
変な事言うからなのに。
ノリ兄ちゃんが、話題を変えてくれた。
「ゆうちゃん、お掃除続けるんだったら、クロエに手伝わせるけど、どうする?」
「いや、やる。続ける」
「そう。よかった。クロエ、昨日までと同じように、お掃除のお手伝いをしてあげて」
クロエさんがイイお返事をして、ゆうちゃんを連れて家に入った。
あ、ちゃんと掃除はするんだ。
一応、会話もするようになったし、進歩してんじゃん。
お礼は言えてないけど。