100.収納
電機屋さんが帰った後、冷蔵庫と食器棚の中身を新しいのに移した。
段ボールや梱包材は庭へ。一升瓶もゴミに出した。
俺がミニ本棚を組み立てている横で、真穂と藍ちゃんは、ミニ箪笥に祖母ちゃんとジジイとオヤジの服をきっちり畳んで仕舞っている。
引出しは三段だけで、一番上は、タオルと手拭いとハンカチ、二段目に下着類と寝巻き、一番下に普段着や作業服。
ジジイ用箪笥の一番上には、通帳とかも入れた。
祖母ちゃん名義の通帳は、後で本人に直接渡す。
居間の電話は、畳替えの邪魔になるから、外して物置部屋へ移動。
箪笥三つと本棚、座敷箒も物置部屋へ。
布団はトイレの隣の納戸に入れた。畳替えの後で部屋に入れる。
庭に出て、仕分けの続きをする。
タオルと洗剤はもうない。後は売る物と捨てる物の仕分け。
品名は箱やラベルに書いてあるけど、賞味期限は開けてみないとわからない。
ノリ兄ちゃんが、梱包材や古い食器棚、冷蔵庫を燃やす。
「ゆうちゃん、やっと起きたー! もう三時過ぎよー? ご飯は? 食べたの?」
藍ちゃんが二階から覗いていたゴミニートに気付いた。
ゴミニートは無言で窓を閉めた。
みんな、ゆうちゃんについて何も言わず、過剰包装を解く作業に集中した。
どんどんゴミ山が大きくなる。
マー君が、「台所は終わってるし、座布団付けて来る」と中に入った。
「鼠があれだけ居たと言う事は、天井裏も汚れているでしょうね」
双羽さんの指摘に、俺達は背筋が凍った。
「あ、水道使って下さい。使わないと錆びそうなんで」
真穂が言うと、双羽さんは台所に向かった。
俺は天井板をずらしに家へ走る。座敷箒の柄で、部屋の隅や押入れの天井板を動かして回った。
双羽さんが、塩素系漂白剤を混ぜた水を天井裏に流す。案の定、一瞬で泥水化。
「全く! ここんちは、どんだけ害虫飼育してんだよ!」
台所でマー君が叫んだ。
会話の内容はよく聞こえないが、マー君は鬼の形相で出て行った。
何かホント、すんません。
俺は双羽さんの横でゴミ袋を広げ、鼠の糞を受けとめながら、小さく溜め息を吐いた。
廊下でクロエさんとゴミニートが、何か話している。
ゆうちゃんの滑舌が悪くて、何言ってるかわからなかった。
賢治視点、一旦終了。
※箪笥の単位は本来、「一棹、二棹……」です