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序幕
彼の母は、とても厳しい人だった。
彼に向かって、お前は強くなくてはいけない勝者でなくてはいけないとひたすらに教え続け、ある日忽然と姿を消した。
そんな母が彼に残した唯一の物、それは一枚のメモ、そこにはとある住所とメッセージ。
「五年後、この場所へ行きなさい」
そして彼は今、メモの通り、とある屋敷へ行き、扉を叩いた。ただ一つ、気になったことがあるとすれば、その屋敷の住所が国内ではなくイタリアだったこと。
出て来たのは今まで一度も見たことの無いような、美しい少女。
その少女は、日の光にキラキラと輝く長い金髪をたなびかせながら、柔らかく笑い、日本語で喋る。
「待っていたよ、大河」
その時彼、霧島大河は、思いもしなかった。その笑顔が、自分のことを突飛で、非常識で、非日常的な争いに巻き込んで行くことを。