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which…?

which…? 5

作者: 渡辺律

≪登場人物≫

華乃…主人公。自分が転生していることに気付き、もし乙女ゲームへの転生だったら悪役令嬢ポジションじゃん、とわたわたしているあほのこ。

梓・祀…あんまり出てこないけど、華乃の兄。どちらも華乃を抱き枕にして寝るのがお気に入り。

北大路・御園…華乃の幼馴染で二人とも大企業社長子息。こいつらと仲良くすると死亡フラグが立つからいやだなと思いつつも、嫌な人間ではないのでそれなりに仲よし。当然のごとく美形。

ヒロイン候補…本名、桃野胡桃。守ってあげなきゃと思わせる美少女で高校からの外部入学生。その呼び名のごとく、乙女ゲームでヒロインとなる存在ではないかと華乃は疑っている。

塩見さん…本名、塩見佐奈。美少年系美少女。こちらも高校からの外部入学生。ヒロイン候補とは中学が同じらしい。


≪簡単なあらすじ≫

乙女ゲームの世界に転生したかも、だけど主人公ヒロインがわからない!と嘆く華乃。華乃はひとりの外部入学生に目を付けるが、彼女と攻略対象候補(仮)たる北大路・御園コンビと野外研修における同じ班になってしまう。

そこで、主人公ヒロインなら当然料理だってうまいよね、とヒロイン候補が本当にヒロインなのかどうかを華乃が考える話。

 華乃は慄いていた。

 今日は梓兄様たちに抱き枕にされたって文句言わずに、それどころかむしろ己から抱き枕になりにいこうかとさえ思えるほど慄いていた。


 目の前に見えるは、ぐつぐつと怪しい色をした物体。

 青なんだか赤なんだか黄色、白、茶色、紫などどうしたらそのような色になるのかわからない液体状のものが煮えたぎっている。

 おかしいのは色だけではない。

 匂いも食品なのか疑わしいレベルでおかしい。人外魔境ってここにアッタンダー。



「えへへへ~」

「ね、だから言ったでしょ?」


 鍋の前でにこやかな笑顔をふりまく可憐な美少女と、となりで呆れた顔をしてみせる美少年びしょうじょ


「いやぁ、まじすげーのな」


 野球少年はこんなときもさわやかに感心しているけど、え、そういう問題?

 北大路と御園にはやっぱり刺激が強かったらしく、北大路は顔を背け、御園も笑顔を浮かべてはいるものの、ずるずると後ろへと逃げて行っている。





 なんでこうなったのか、というと至極単純。

 キャンプ中に自分たちで料理を作る、という実習があった。お金持ち学校でもそれは一緒らしくて作る料理は定番のカレー。

 野菜もルーも全部用意してあるからそれほど変なことにはならない、はずだった。



 調理開始のときは何らおかしなことなどなかった。むしろなぜかピーラーが四つと微妙な数しかなく、ヒロイン候補と塩見さんが自分たちは包丁で皮むきできるから、と順調な滑り出しだった。

 ヒロイン候補も塩見さんも素晴らしい包丁さばきで、やはりこれがヒロイン力か!といかにこの後に待ち受けるフラグ建設を避けるべきかに思いをはせていたのである。


 そんな順調な調理に、待ったをかけたのは塩見さんだった。


 材料のすべて切り終わり、あとは煮込むだけとなった時だ。

 塩見さんはヒロイン候補に鍋に触れるなと注意した。ところがヒロイン候補はそれが不満だったらしくどこからか一人用の鍋を取り出してきて、これで作るならいいでしょ?と可憐な微笑みを見せた。

 当然、華乃たちには何の話なのかわからない。

 塩見さんは自分の分は自分の責任で処理しなさいよ、とだけ言って一人分の材料をヒロイン候補に手渡した結果、できあがったのがあの人外魔境というわけだ。




 うん、ない。

 まさかここでこんなどんでん返しがあろうとは。

 乙女ゲームにおいて主人公たるヒロインが包丁さばきは絶品だけど料理させると壊滅的なんてことがあるのだろうか。いや、ない。

 そうすると、桃野さんはヒロインではない、ということになる。


 はっ。


 そこで天啓を得た。


 ヒロインはむしろ塩見さんだったのではないか、と。



 というのも、乙女ゲームというのはつまるところ主に女性をターゲットとし、プレイヤーをどきどきさせるためのゲームである。なので、どれほどストーリーが違っていても、世界観が違っていても、ある程度、王道と呼ばれる過程を踏むのが普通だ。

 しかし、その一方で王道であればどきどきはするものの、どれも同じようなゲームになってしまい、新鮮味がない。ゲーム会社としては新作が売れないのは困る。つまるところ、ある程度王道のポイントは抑える必要があったとしても、そのゲーム独自のスパイスが加味されているべきなのだ。

 スパイスの一例としてはヤンデレ系があげられるのではなかろうか。

 あれは二次元だから許されるのであって、三次元だめ絶対。あと二次元だから許されるといってヤンデレ要素を詰め込まれすぎたらトラウマになる。ヤンデレはそこらへんのさじ加減が難しい。うむ。


 ただし、そろそろヤンデレも飽和気味。

 そうするとまた新たなスパイスが必要である。


 ヤンデレでもなく、王道のストーリーを取り込めてなお乙女ゲームとして成立し得る新たな要素とはいったい何があるだろうか。

 転生する前の記憶をあれこれ思い出してみる。

 華乃自身は乙女ゲームをやったことはなかったけれど、乙女ゲームにはまっていた友人は何人かいて、彼女たちがあれこれ絶叫しているのをぼんやり聞き流していた記憶はある。


 と、そこで、彼女たちがはまっていたのが乙女ゲームだけではなかったことを思い出した。

 つまるところ、BLである。


 当然、そちらの人にはそちらの人用にBLゲームというのは存在する。そっちはそっちで王道やらヤンデレやらてんこもりである。

 しかし、中にはBLもやるけど乙女ゲームだって好きなんだ!というよくばりさんがいてもおかしくはない。むしろ華乃の転生前の友人たちは乙女ゲームもBLゲームもどんとこい!といわんばかりだった。そういう人にとって、妄想という特殊なフィルターを使えばBLにもなり得、それでいて澄んだ目でみれば乙女ゲームというヒロインはなかなかにおいしいのではなかろうか。

 要するに、チョコレートとアーモンドの関係である。



 うん、だよね、そうだよね。と華乃は無理やり納得することにした。癪だがキャンプが終わって家に帰れた暁には、祀兄様か梓兄様の布団にもぐりこんでやろう。あの人外魔境の恐ろしさから逃れるには、自分より目立つ人身御供が必要だもの。









 

 

 

本日(5/21)の活動報告にて投稿についてコメントをさせていただいております。連載ではなく短編という形で今のところアップしていくつもりです。そのことに関して説明を載せていますので気になる方がいらっしゃればご一読いただけたら幸いです。

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