私の前世曰く、ここは乙女ゲームの世界らしい
作者は初心者です。温かい目で見てくださると嬉しいです(笑)
誤字脱字等あれば、お知らせください。
「わぁ、今日もまたやってる」
「毎日やってて飽きないのかな?」
中庭でのやり取りを屋上から見ていた私は、思わず呟いた。
隣に浮いている、私の前世さんも顔をしかめながら言った。
はじめまして。私は相楽雪乃。一応、名家相楽一族本家の娘。周りの人曰く、庇護欲を誘う美少女、らしい。らしいというのは、私自身がそうは思っていないから。皆が言うから、そこまで酷い容姿ではないというのが私の見解。
そんな私には、ある秘密がある。
その秘密とは、前世の記憶を持っていること。いや、持っていた、というのが正しい。
生まれたときから前世の記憶を持っていて、六歳になったある日突然、今世の私と前世の私が離れてしまったのだ。
今世の私は体に残り、前世の私は体から追い出された。簡単に言えば、半幽体離脱である。しかも、前世の私の自我が確立してしまっている。ついでに言うと私も自我を持っているので、前世の私と今世の私はまったくの別人になった。
何故こうなったのかは分からないけど、お互い上手くやってきていると思う。平穏に暮らしていたある日、前世の私こと佐藤由香さんが、あんなことを言い出すまでは。
「ちょ、雪乃ちゃん雪乃ちゃん雪乃ちゃん!!」
「?由香さん何かあったの?」
「お、落ち着いて聞いて雪乃ちゃん」
落ち着くべきなのは、私より由香さんのほうだと思う。
「あのね、この世界が私が昔やってた、乙女ゲームの世界かもしれない!!!」
「‥‥‥‥‥‥は?」
「うんまあ、それが普通の反応だよねぇ」
面倒なので簡単に説明すると。
由香さんが家の中をうろうろして、お父様の書斎に入ると、何枚か写真があった。大方私の婚約者候補なのだろうと写真を見ると、会ったこともないのに知っている顔があったそうな。気になったので記憶を探ってみると、由香さんが最初にやった乙女ゲームの攻略対象の容姿と合致した。別に放っておいてもいいかと考えたが、そのうちの誰かと私が婚約すると、私が悪役にされてしまうかもしれない。だから慌てて私のところに報告に来た。
だそうだ。
由香さんの記憶によれば、私はゲームに登場しないらしい。けど、婚約したりしたら私が悪役令嬢となる可能性もある。悪役令嬢には、暗い未来しかないのだそうだ。仮にここが本当に乙女ゲームの世界だった場合、世界が強制力を働かせるかも分からない。
つまり由香さんはこう言いたいのだ。
フラグを叩き折れ、と。
結果、私は日本でも有数の大企業の社長令息達との縁談を蹴った。私も自分が可愛いからね。
代わり、といってはあれだけど、お父様の親友の息子さんと婚約した。世界に名を轟かせている大企業の社長令息と。彼との関係は怖いくらい良好だ。
ちなみに彼は、王子を地で行くイケメンである。
それでも念には念を、という由香さんに降参して、先生から薦められていた海外の姉妹校に留学した。
が、高校二年生の春に呼び戻された。たった一年で生徒会が使い物にならなくなったかららしい。
どうやら本当に乙女ゲームの世界だったようだ。
攻略対象である生徒会メンバーが揃いも揃って、ヒロインと思われる女子生徒に骨抜きにされていた。奴等が仕事を放って恋愛に走っているせいで、私は向こうでの勉強もそこそこに帰ってくるはめになったのだ。許すまじ。
しかも帰って来て早々、中等部までの私を知る、ほとんど人が泣きついてきた。可哀想に。奴等がやらない仕事を彼らが片付けていたのだ。
彼らのために私は動くことにした。溜まっていた仕事を片付け、信用できる人に声を掛けていき、生徒会をリコールする準備を進めている。
私はもう一度中庭に目を向けた。
そこには変わらず、茶番を続ける元生徒会メンバーとこの学園屈指のイケメンが数人、そしてヒロインの少女が居る。
「暢気にしていられるのも、今のうちよ。せいぜい楽しむと良いんだわ」
「雪乃ちゃん、なんか黒いよ‥‥?」
「黒くもなるでしょう、あんなの見たら」
「まあ、否定はしないけど」
「雪乃、誰と話してるんだい?また、由香さんとかな?」
声の主を振り返ると、私の婚約者、宮国七祈が立っていた。七祈は私の秘密を唯一知っている人物だ。
七祈は私に歩み寄ると、私を抱きしめた。
「リコールする準備が整ったよ」
「ありがと。‥‥だけど、この体勢は一体‥‥?」
「頑張った俺にご褒美だよ」
「由香さんに見られてるよ?」
「俺には見えないから関係ないよ」
私が見えるから問題大有りだよ!というツッコミは、この後の七祈の台詞のせいで吹っ飛んだ。
「雪乃の手を煩わせた落とし前、どうやってつけて貰おうかな」
背筋を冷たい汗が流れた。私が思っていた以上に、七祈は怒っているようだ。
心の中で奴等にそっと手を合わせた。骨は拾うから安心してほしい。
奴等の将来が急に心配になってきた。生きて帰って来いよ。
ヒロインは、知らない。元々自分が撒いた種だしね。
知らないったら知らないよ。
「‥‥‥今日も空が青いなぁ」
そう言って、私は七祈に手を引かれながらリコール選挙の告知放送をするために放送室に向かった。ニヤニヤしている由香さんに見守られながら。
その後の生徒会メンバー達がどうなったか?
‥‥‥‥‥知らないほうが良いとしか言わない。
お読みいただきありがとうございます。
連載にするかどうかは、ちょっと悩んでいるので分かりません。




