一話 始まり
ハアーと息が白くなるのを坂上 太陽は確かめる。
そして、手を擦りあわせがらながら石の階段を登る。辺りは、人、一人いない。あるものをあげるとすれば、ペンキが剥げた鳥居があるだけだ。
そう、ここは、鳥取の田舎にある七池神社だ。鳥取は、全国人口ランキングワースト一位だ。そのため鳥取は、こういった人気のない神社が多く見られる。
その使われなくなった神社の最期を見届けるのが俺の仕事だ。
そして、ジヤリという音を数回聞いたあと、賽銭箱の前で足を止める。
「酷いもんだ」
俺が目にしたものは、賽銭箱の中央に直径5cmほどの穴が空いており、賽銭が抜き取られたあとだった。俺は、何度もこの光景をなんども見てきたがやはり慣れない。俺は鐘を鳴らし、二礼する。
「なんでこんなんになってしまったんだろな」
昔は、多いとまではいかないがそこそこ人が参拝しにきていたのにどうしてこうなってしまったんだろな。そう思い階段を降りる手前まで歩いた。
「待って」
「うーん、空耳か」
「待って」
この二度目の声を聞き、俺は確信に変えた。そして、また神社のほうへ再び足を向け、辺りを見回した。すると目の前には靴も履かずに白一色のワンピースを着た少女が立っていた。
俺は、靴を心配し「靴はどうしんだ?」と問いかける。
「ううん、大丈夫だよ」少女は、華やかに笑ってくれた。
直接聞きすぎたかと思ったが大丈夫そうだった。
「そうか」
再び、足を帰路に向けようとするが、少女が「まって」を繰り返す。
「なんだよ。俺は、君みたいに暇じゃないんだよ」
「少し、話を聞いてくれるだけだいいから」
「分かった。少しだけだ」
「実は私、見た目少女なんです」
「見たらわかるよ」なにが言いたいんだこいつ。
「実年齢は、373歳なんです」
「お遊びは、辞めてくれ」こんなやつに付き合わされていたのか、めんどくさ早く帰ろうと。
「俺、帰るわ」
「待ってくださいよ」
「いいや、俺は帰る」
「仕方ないですね。ここは、奥の手を」
俺は、このガキがなにをするんだろうと思いチラッと後ろを振り返ると
「ひっさーーつ、すね蹴りッッ」
「痛ったー。なにすんだよ。このガキが」
俺は、少女の首をつかもうとするが右によけられ、少女の右手が俺の頬へ殴られた。
「痛ったー」
あれ痛くない、なんでだ
「寸止めですよ。次やったら、まじやりますよ」
こいつ意外に強い。ここは、自分のために言うことを聞いておくか。
「分かった。聞くよ」
「やったー、ありがとうございます」
素直に喜ぶ姿が可愛らしいと思った。本当に373歳なのか。年は、俺より低い17、6歳にみえる。
「ささ、中へ入ってください」
俺は、言われるままに中へ入り少女は、お茶を入れてくれた。
「話の続きをしますね。私が373歳なのは、私が七池の神社の神だからです」
「はッ、神?」
「そうです私は神です」
「意味わかんね。神だって言うことを証明できるものはあるのか」
「そうですね。これぐらいですかね」
パチンッと指を鳴らし、俺の額に右手をかざしてきた。すると、俺は、平衡感覚が失われ、ついには倒れて眠ってしまった。