第六話
昼飯を食べた後、橘達はギルドへ行き、僕はノイマンさんと一緒に再び訓練場へと向かった。
「そう言えば、他の召喚された勇者の人達ってどんな人達なんですか?」
訓練場へ行く途中、僕は、今更ながら気になっていたことをノイマンさんに質問した。
「んー。俺が、知っている限りだとまず勇者は、勇達を除いて全員で4人召喚されている。ガルシア帝国に2人とマルクス皇国に1人とアーク王国に1人だ。召喚された勇者は、全員申し分ない戦闘能力の持ち主で、文字通り一騎当千の強者だな。話によるとガルシア帝国の勇者は、男と女の兄弟の勇者で複合魔法という魔法の使い手でマルクス皇国の勇者は、男で魔法剣という戦闘技能の使い手、あとアーク王国の勇者は、とんでもない美少女らしいぞ。」
へーそうなんだ。なんか最後のアーク王国の勇者の説明だけおかしかったが、聞いてみると確かに全員勇者適性ばっちりという感じだった。
複合魔法とか魔法剣とかなんか凄い勇者っぽい。
でも、
「意外と少ないですね勇者。もっとたくさん召喚されてるのかと思いました。」
「正直、俺には召喚魔法のことは 分からないが、もともと人数をたくさん呼べるように出来てないんじゃないか?少数精鋭ってやつだな。勇達が特別だったんだよきっと。」
僕の疑問にノイマンさんは、頭の後ろをかきながら罰が悪そうに答えた。
まぁ、確かに僕とか巻きまれて召喚された人間も実際いるし、僕達の召喚は、少々イレギュラーだったのかな。
それはそれとして
「ちなみなんですけど、逆に魔人族ってどの位強いんですか?」
「……1体1の戦闘だと俺たち人間は、まず間違いなく簡単殺されるだろうな。奴らとは、生き物としてのスペックが違いすぎる。だいたい普通の魔人に対して騎士が10人以上挑んでようやく互角くらいだ。魔人には階級があるんだが、最高位の魔人ともなればこちらの一個師団級の戦闘能力を持っている。今まで俺たちが奴らに対して優位に立てていたのは、奴らと比べてそれでもなお人族側の兵力の方が優っていたからだ。しかし今は、魔王とかいうさらにとんでもない奴が現れて、魔人族の他に別の魔族も支配下にしやがった。これじゃあ、今までなんとか均衡を保っていた人族側は、ジリ貧だ。」
なるほど。
魔人族の強さが、だいたい分かった。今聞いた感じや、この世界での騎士のレベル、魔法の威力を参考にすると僕が前に召喚された世界で、闘って来た敵達と程度の差はあるが、だいたい同レベルだろう。
しかし、そう考えると今の橘達の力では、一般的な魔人族を倒す事が出来ても最高位の魔人に対しては、かなり厳しい戦いになりそうである。
「そんな怖い顔するなよ、ヒカル。」
ノイマンさんは、自然と顔が強張ってしまった僕の頭にごつごつした手を載せてがしがしと撫でた。
「そうは言っても、だ。確かに高位の魔人に対して単体で、挑んでは勝ち目は薄いが、俺たちには召喚された勇者達がいる。彼らの力を合わせて戦えば、決して勝てない相手じゃないさ。あとは、勇者に次ぐ戦力として連合軍から選ばれた四刃と呼ばれる連合最強の戦士達だっているからな。それに勇達の成長速度は、凄いよ。あと一ヶ月もすれば、多分もうこの国で彼らとまともに戦える人間は、ほとんどいないだろうな。ヒカルも勇達が心配だろうが、応援してやってくれ。」
「ええ、そうですね。」
確かに実際に戦うのは自分じゃないんだから、あんまり考え過ぎない方がいいな。
「よし。ヒカルも負けないように気合い入れて頑張らないとな!」
ばしんと背中を叩かれ僕は、気合を入れられた。
今日の午後の訓練では、木剣で素振りを僕がぶっ倒れるまで続けさせられた。
……気合い入れ過ぎだ。