第四話
私の名前は、結城梓。今年で17歳になる普通の女子高生だ。
いや普通の女子高生だったの方が正しいかもしれない。
なぜなら自分でも信じられないが、私はマクシアという異世界に勇者として召喚されてしまったのだ。
幸いにも召喚されたのは、私だけでなくクラスメイトの友達も一緒に召喚されたのでなんとか平静を保つことが出来た。
召喚された先は、アニメや漫画によく出てくるような立派なお城でちゃんと美人なお姫様が私達を出迎えてこの世界のことや召喚の経緯を教えてくれた。
そして私達を召喚した国のお姫様のお願いと同じく召喚されたクラスメイトの橘勇という少年の提案でとりあえず自分達に出来ることなら、とこの世界の人族の助けをすることになった。
しかし、とんとん拍子で話が進んでいく中で、一つの問題が発生した。
なんと一緒に召喚されたクラスメイトの一人である八神光君にだけ本来召喚されたのなら備えているはずの魔力が全くなかったのだ。
私やリサ、橘君は、実感が湧かないがかなりの魔力を持っているらしい。
姫様達が言うには、八神君は、私達の召喚に巻き込まれたか可能性が非常に高いとのことだ。
その時の八神君の自分にだけ魔力が無いと判明した時の自嘲したような顔が、私の胸を締め付けた。
実は私は、八神君のことがかなり気になっている。
彼は覚えていないかも知れないが、高校の入学式の時に怪我をして困っていた所を八神君に助けてもらったことがあるのだ。
一年生の時は、クラスが違ったのであまり彼を知ることが出来なかったが、二年生になり八神君と一緒のクラスになることが出来て私は、正直嬉しかった。
同じクラスになり八神君をちょくちょく観察していたのだが、ふとした時に見せる困ったような笑いが、なんだかとても大人びて見えて私は、どきっとしていた。
そんなわけで、今回見せた八神君の表情が私的にかなり気になってしまった。
だから、姫様達が用意してくれた夕ご飯の後に八神君の部屋を訪ねることにした。
ちょっと元気づけようと思ったのだ。
部屋を訪ねた私を八神君は、びっくりしたように見ていたけど普通に部屋に入れてくれた。
緊張して顔が赤くなってたかもしれないけど、八神君と話せて良かった。
部屋に戻ってきてベッドにうつ伏せになりながら私は、そう思った。
明日からは、他の召喚された勇者の人達とは違い戦闘経験がない私達の為に国の騎士の人達が訓練をしてくれるらしい。
そこには、一応八神君も参加することになっている。
「八神君少しは、元気になってるといいな。」
私は、ひとり呟いて瞼を閉じた。