第三話
「やっ!」
扉を開けるとそこには、控え目に手を上げて挨拶をしてくる結城梓の姿があった。
「や、やぁ」
意外な人物の登場に僕は、若干きょどりながら挨拶を返す。
結城は、そんな僕を見てニッと人懐こい笑みを浮かべた。
「ちょっと話したいことがあってさ今いいかな?」
「う、うん。いいよ。」
別に断る理由もないし、僕は結城の問いに二つ返事で了承した。
部屋の前で立ち話をするのなんだし、結城を部屋に招き入れて椅子に座らせ、自分はまたベッドに腰を下ろす。
今更だが、女の子と二人きりの空間にちょっと緊張する。
話っていったいなんだろう。
「あの、さ、えーとなんていうか」
結城も僕と同じく緊張しているのか顔を下に向け手を足に挟んでもじもじさせながら喋りだした。
「私が言うのも何だけど、さっきの話、八神君あんまり気にしない方がいいよ?別に魔力とかそういうのなんて元の世界に帰ったら意味無いんだしさ。八神君からしたら、巻き込まれただけだったなんて拍子抜けかもしれないけど、逆に考えれば危険な目に会わなくて済むっていうかさ…… 。」
「えっ」
これはもしかして結城は、役立たずのレッテルを貼られた僕に気を使って慰めに来てくれたのか。
僕は、思わず結城をまじまじと見つめてしまった。
顔を下に向けているせいで表情は分かりづらいが、結城は気恥ずかしさかからか、耳を真っ赤にしている。
結城は、上目遣いでこちらを見ながら言葉を続けた。
「一年我慢すれば、元の世界に返してくれるって姫様達も約束してくれたし……さ。」
「……そうだね。」
「だからさ八神君も気にしない方がいいよ。」
「……ありがとう。心配してくれて。」
「…………。」
クラスでは、全然接点がなくて分からなかったが結城はいい奴なんだな。僕は、胸が熱くなるのを感じた。
僕が、お礼言うとしばらくお互い沈黙してしまい変な空気が流れる。
なんかこの状況気恥ずかしいな。
結城はそんな沈黙を破るように咳払いを立ち上がった。
「は、話はそういうことだから。じゃ、じゃあね!また明日。おやすみ。」
そう言って結城は、部屋から出て行った。
「あ、うん。また明日。」
僕は返事を返しドアが、閉まるのを見届けて体をベッドに投げ出す。
自然と頬が緩むのを感じた。
まだ気持ちは、少し落ちこんでいるが、随分楽になった。
クラスの可愛い女子に慰められて元気になるなんて僕も随分単純だなと思う。
でもなんか前の異世界召喚とは、違い今回は、自分独りじゃないんだと思うことが出来た。
まぁ、他の人達とは違い巻き込まれただけだけど、自分と同じ境遇の人が他にもいて気にしてくれているというのは、素直に嬉しい。
これからどうなるか予想は、つかないけど、なんとかなりそうな気がしてきた。