第二話
ひとまず、カレラ王国に協力することになった僕らだが、ここでひとつ衝撃の事実が発覚した。
今回の召喚魔法の対象者は、高い魔法順応能力と高魔力保持者に限られる。
実際、他の国で召喚された勇者達も例に漏れずこの世界とは体系は違うが、高スペックの魔法能力を持つ人達ばかりらしい。
また、橘達の魔法能力をカレラ王国の魔道具を使用し、能力を測定したところ他の勇者達と同等特に橘に至っては、結城や神城と比べてもさらに抜きん出た高魔力保持者という結果が出た。
結果を知ったエル様や測定に立ち会った人達なんて思わず歓声を上げたくらいだ。
さて話が戻るのだが、他の三人とは違い僕の測定結果は、魔力なしという散々なものだった。
この結果を知った橘達の苦笑いや姫様達の落胆顔は、前の異世界でのトラウマを蘇らせた。
……橘達の態度は、まだ我慢出来るが、呼び出した側にこうもあからさまに外れ引いちゃったなぁって顔をされるとかなりきつい。
ちなみに前の世界で魔力とかがなくてもなんとか勇者をやれていたのは、聖剣という装備者の能力をとんでもなく高める武器を使っていたからで、あれがなかったら僕は、今頃あの世界で野垂れ死にしていただろう。
結果として分かったことは、僕にはこの世界マクシアに召喚される素養は備わっていなかったのだ。
僕に魔力がないことを知ったエル様曰く
「召喚の場に橘様達以外の方も多く存在したと聞いております。……その大変申し上げにくいのですが、八神様は、おそらく巻き込まれただけの人だと推測されます。す、すいません。」
今にも泣きそうな顔で僕に謝るエル様を見て思った。
……泣きたいのはこっちだよ。
僕は、勇者召喚に巻き込まれただけだった。
召喚された城の中にある来客用の一室で僕は、頭を抱え途方にくれていた。
……まさかただ単に巻き込まれただけなんて。
しかも元の世界に帰るための準備には一年ほどかかるとのことだ。
泣きっ面に蜂とは、まさにこのことである。
正直、二度目の異世界召喚でもあるし、今回も自分には何かこの世界で特別な能力が備わっているんだと勝手に勘違いをしていた。
前の世界での召喚の対象は、聖剣が使用出来るかどうかというものだったので、魔力が全くなくてもどうにかこうにかあの世界の脅威を無くすことが出来たが、今回ばかりは、お手上げである。
「まぁ、仮に何か特別な力があってもそんな簡単に勇者を引き受けるつもりもなかったけどさ。」
ブツブツと独り強がりにも似た弱音を吐いているとコンコンと遠慮がちなノックの音が木製のドアから聞こえてきた。
誰だろう。
腰掛けていたベッドから立ち上がり、ドアを開けるとそこには意外な人物が立っていた。