決意と責任
『体外受精児』とは。
私はその事について、産科を訪ねた。
「基本的に『体外受精』 とは。 子宮から卵子を取り出し、顕微鏡で受精させる事です。
卵子の状態、 タイミングがありますが、お若い方なら大体健康な卵子が採れます。 しかし、 お若い方の中にも卵子の状態が良くない方もいますし、 状態を見てみないと何とも。
年齢を重ねるにつれ、 数も減るし鮮度も落ちます。 早く採らなければ体外受精は難しくなりますね。 子宮の状態も加味して、 貴女はギリギリより少し上かと……」
産科の女医さんは、ゆっくり丁寧に説明してくれた。
全くの無知ながらも大体は理解できた。
「先生……。 体外受精して、 子宮に戻した場合の確立は?」
いくら体外受精してお腹に戻しても、着床しなければ意味はない。
「そうですねぇ。 人によりますが……。 やはり子宮の状態が良い事と、 運ですね。 いくら状態が良くても、 受精卵が着床するのは
中々難しいです。 受精卵が元気な事と運です。 命は奇跡なんですよ? 奇跡が重なり誕生します。 また奇跡があり、 出産できる。 五体満足で誕生するのもまた奇跡……」
「奇跡ですか……」
「そうです。 二人生まれたのは、 奇跡ですよ。 誕生までに何らかのリスクがあります。
現代医療でさえも立ち入れない領域があります」
子供二人を誕生させた私は、本当に有難い運に恵まれたのか。
確かに。色々な問題で手放すしかない人もいる。 生まれる前にも後にも。
育てるのは大変だが、やはり尊い命。
大切な命だ。
産科を後にし、私は思った。
「姉さんにも奇跡を味わって、 感じて欲しい。 どれだけのドラマがあるか、 人を生む事とはどれほどの事か……」
ある決意を胸に私は姉に電話した。
直ぐに姉が実家にやって来て、部屋に入るなり私めがけて飛びついた。
「ありがとう! ありがとう香乃子! 決心してくれたのね。 早速話を進めましょ」
「香乃子……。 あなた決めたの?」
母が心配そうに尋ねた。
「うん。 何かね……。 私の年齢でギリギリとか言われたら。 それに、 奇跡を感じて欲しいし」
「奇跡……?」
「そう。 命の誕生の奇跡。 凄く大変なんだよ? 私は出産の奇跡を体験したから、 姉さんにもって。 子供ができて生まれるまで。 その過程を見て欲しいし」
「香乃子……。 私も色々本読んだり、 病院に聞いたりしたけど、 本当に大変なんだよね。 リスクとか。 でも! 全面的に支援するから」
私達のやり取りを複雑な顔をしながら母は見ていた。
これからの娘達の人生、どうなるかと。
「まず、 来週から病院で色々検査して……」
「あ。 大丈夫。 産科で検査したから」
「そう? じゃあ改めて診てもらって、 卵子採取の期間を聞きましょう。 うちの人、 出張だからその間に病院連れて行くわ。 で、 香乃子のお子達は……。 母さんにお願いするしかないけど、 幼稚園の送り迎えはこちらでします。 無事妊娠したら、 環境変わるの良くないと思うけど、 近所の目もあるからうちの別宅へ移ってくれる? もちろん子供達とは頻繁に会えるわ。 生活費は最初に幾らか渡しておくから。 追い追い考えましょう」
まさにとんとん拍子に話は進行した。
私は事情があり、来月中に花屋を辞める。
姉からの融資は相当で、かえってプレッシャーを感じた。
姉は上機嫌。
だが、お舅や姑の目があるので、派手には動けない様で……。
でもやはり嬉しいのか、私の病院の送り迎えやら何やらを楽しそうにやってくれた。
病院は有名な病院で、名家も御用達だとか。
色んな手続きは私には分からないので、お任せ。
検査結果は、いたって良好。経産婦な事も良好条件の一つ。
私の卵子も年相応だが数はあった。
人間と同じに劣化するらしい。だが、じゅうぶん受精卵になると言う。
採取のタイミングなどが告げられ、その間もそうだし、その後もストレスは禁物。食事面も指摘された。
姉により、食事面は改善され適度な運動などする様になった。
中々面倒だ。
しかし良い結果の為なら仕方ない。
私は姉と医師に全てを委ねた。
子供達が唯一の癒しだ。
将来の為に貯金ができたと思えばいい。
因みに……。
弁護士は双方お抱え済み。
何かあってもやだし。
何事もなく。それが一番だ。




