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空の顔

作者: nisaka

聖歴1435年 春

大陸の覇権を握っていた王国が他国への侵略戦争に出ていた


タッタッタッタ


「待ってくださ~い」


1人の女性が走り出す

先には一人の男


「ん、なんだ……ゴフ」


男が振り向いた瞬間

走ってきた女がぶつかり二人して倒れる


「いててて、そんなに急いでどうしたんだ」


男が頭を摩りながら上半身を上げる


「いえ、りょーじ様の姿が見えたのでつい……」

「まったく、お前は我慢が出来ないんだな」


すいませんと言いながら顔を赤らめる女

陵二はその頭をなでながら起き上がろうとする


「あのーどいてくれないか……」

「あ、スイマセン。今どきますね」


急いで立ち上がる女

そこに近づく一人の男


「いや~相変わらずいちゃいちゃしておられますね。陵二さん」


ニヤニヤしながら二人を見る甲冑姿の男性


「止めてください。ゲオルグさん」

「そうです、その……照れます」


顔を赤面させる二人


「何言ってるんですか。新婚さんなんですからそれぐらいが普通ですよ」

「まあ、お前ら二人は少しいちゃいちゃし過ぎな気もするがな」


ゲオルグの後ろから現れる一人の男


「ガイ兄さんか、なんか文句でもあるんですか?」

「あ、ガイヤさんおはようございます」

「あ、おはようシリル」

「俺の話は無視ですか……」


さらっと陵二の言葉を無視しシリルの方に挨拶するガイヤ


「そもそも、なんでオヅトリアとの戦闘に出していたはずのガイ兄さんがここにいるんだ」


顔を険しくしガイヤを睨む陵二


「あーそれ、ローメルさんに預けてきた」


さらっと受け流すガイヤ


「まったくあなたは……まあローさんなら大丈夫か……」


空を見上げる

今日の空は雲一つない晴天だった



とある晴れた日の事


チュンチュン


「くぁ~~」


大あくびを上げながら起き上がる陵二

窓から空を見上げる

雲一つない晴れた日に自然に顔も元気になる


「今日も一日頑張っていこう」


そう決意した


トントン

部屋のドアがなる

陵二が許可を出すとドアを開けてゲオルグが入ってきた


「陵二さん、政務の時間ですよ」

「今日はいい日だな」

「そうですね、政務の時間ですよ」

「特に鳥の鳴き声がきれいだな」

「そうですね、政務の時間ですよ」

「あ、……」


陵二がゲオルグの後ろに指を刺す

ゲオルグが振り向く

しかしその先には何もない


「いったい何が……やられた」


ゲオルグが振り向いたときそこには誰もいなかった


所かわって窓の下


「政務何てめんどくさくてやってらんないよ」


走りながら自身の部屋から離れる


「ここにいられたのですね」


急に聞こえた声に驚き前を向きなおす

そこにはシリルがいた


「おい、そこどけ。危ないぞ」

「へ、……?」


が急にあらわれたシリルに反応してブレーキをかける事も出来ずぶつかる

二人仲良くごっつんこ


「良くぶつかるな……」

「そうですね……」


二人とも頭を抱えながら起き上がる


「それにしても何で俺のいるところが分かったんだ」

「勘です」


きっぱりと言い放つシリル


「まさに以心伝心か……」

「以心伝心とは何ですか?」

「気にするな」


興味津々といった感じで近づいてくるシリル


「そう言えば、お前はかなりの勉強家だったな」

「はい、とにかく何でも知りたいのです」

「そうだな~俺のいた所の言葉なんだが簡単に説明するとこうかな」


そう言って顔を近づけるシリルに自分の顔をつける陵二


「……」

「……」


しばしの沈黙が続く

戸惑ったまま何をされているのか理解できないシリル

数秒後、ようやく頭の回転が始まったのか顔を赤面させる


「いったい何をされるのですか」

「いでー、舌噛むなよ」


スイマセンと謝り言葉を続けるシリル


「要するにこういう事だ」

「へ?」


意味を理解できず変な声を上げるシリル


「さっきお前恥ずかしかったろ、俺も恥ずかしかったんだ」

「……いや私は別に恥ずかしくは……」

「え、そうなのか?まあいいけど。とりあえず以心伝心ってのは二人とも同じ事考えてるみたいな感じの意味だったはずだ」

「私は陵二様の事が大好きなので全然恥ずかしくありません。むしろ夫婦ですのでこれくらい」

「なんだか、こっちがスゴイ照れるな」


顔をポリポリとかきながら顔を赤面させる陵二

シリルから離れる陵二

するとあたりを見回り出す


「この気配……まさか」

「ずいぶん見せつけてくれるな陵二」

「やはりいたかガイ兄さん」


草むらからひょこっとガイヤが現れる


「ああ、最初から最後まで見せてもらったぜ」

「え、じゃあさっきのも」


少し震えた声でシリルが聞く


「ああ、いいキスだったと思うぞ」


その言葉を聴いてシリルの顔が真っ赤になる


「なんかデジャブな感じがする」


ぼそっと陵二がつぶやく

シリルがデジャブってなんですかと聞こうとしたところで口を止める

それを見てガイヤが顔をニヤっとゆがめる


「なあ、デジャブってなんなんだ?」

「ん、デジャブ?」

「そうそうデジャブだ。少し実践してみてくれ」

「実践か……これでいいのかな。おーいシリル」


シリルに手招きする陵二

それに反応しシリルが近寄る

と陵二がその顔に自分の顔をくっつける

シリルの顔が再び赤面する


「こんな感じ?」

「本当にお前らはお似合いの夫婦だよ。そのまま一生いちゃついてやがれ」


ガイヤがそう捨て台詞を呟いて去っていく

シリルが陵二の顔を向かい直し


「あの……」


何か言おうとしたところに

また違う声


「見つけましたよ陵二さん。政務の時間です」

「やべ、見つかった」


陵二はその声を聴いた瞬間その場を去って行った


これまたある晴れた日の事


「そういえばもうすぐアイツの誕生日だな」


執務室にて

部屋の中でだらだらと寝そべっているガイヤに話しかける陵二


「あいつ~?」


顔を上げしかしだるそうに話すガイヤ


「ああ、シリルの誕生日がもうすぐだ」

「ふ~んで、何する気なんだ、夫さんは?」


とてもどうでもよさそうに聞くガイヤ


「そうだな……なにがいいかな」

「俺に聞いてもわからんぞ」

「やっぱりか……」


ガイヤさんに聞こうとしたところで先に断られ仕方がないので断念する陵二


「仕方がないゲオルグさんに……」

「ゲオルグさんには分かんないと思うぞ」


またしても思考を先読みされ手段が無くなった隆二

仕方がないので奥の手を使う事にした


コンコン

シリルの部屋


「はい、なんでしょうか?」

「はいるぞ」


ドアを開けて陵二が部屋の中に入る


「なあ、誕生日何が欲しい?」

「おい、何して……もう遅いか……」


慌てて追いかけてきたガイヤが頭を抱える


「どうして言っちゃうんだよ。こういう時はサプライズだろ」

「あ、……そうか。すまん忘れてくれ」


急いで先程の発言を取り消そうとする陵二

シリルが微笑む


「あなたのその笑顔があれば十分です」


ガイヤの横でズっキューンと言う音がして陵二が倒れた


「おいおい、おまえもなかなかだな」

「お…まえ……の好きな……薔薇でも……おく……てや……る」


バタ


「おいおい、何やってんだよ」


ある曇りの日の事


トントン


「政務の時間です」


扉の奥からゲオルグの声が聞こえる

陵二が窓の外を見ると窓の外には衛兵がたくさんいた


「やるじゃないですか。ゲオルグさん」


流石に観念し政務の為に会議の間に行く

会議の間にいる者の顔はどこか暗い


「では現状を報告しろ」


一人の男が前に出る


「現在オヅトリアを取り返すために王国の軍勢がこちらに迫ってきております」

「ふむ、王国か……帝国の動きはどうだ」

「どうやら傍観の様です」

「現在オヅトリアの最前線にはローメル将軍の第三軍しかおりません。圧倒的な戦力不足です」

「ふむ、了解した」


その後も会議は続くがなかなかいい情報は出てこない

どれもマイナスな情報ばかりだった


「わかった。ならば俺が出る。」


その一言で会議が終わりぞろぞろ人が会議室から出てくる


外で待っていたシリルが陵二に近づく


「どうなされたのですか?何やら皆さん暗い顔をしておられるようですが」

「ん~大丈夫だ。気にするな」


そう言ってシリルの頭をなでる


「シリルに気づかれないよう早朝出発するぞ」


シリルに気づかれないようゲオルグに耳打ちする陵二


その日は厚い雲空を覆っていた


次の日


「やはり出陣ですか」

「ん、まあな。安心しろ直ぐ帰る」


出陣前の準備をしているところにシリルが気づき陵二に迫る

シリルの言葉をいなしながら準備をする陵二


「すぐとはいつですか?」


陵二の事をしっかりと見つめるシリル


「そうだな……お前の誕生日までには帰ってくるさ」

「本当ですか?」

「俺を信じろ」

「分かりました。絶対帰ってきてくださいね」


陵二はシリルの頭をなでるとそのまま去って行った


「あ、雨……」


気が付くと雨がザーザーと降っていた


「大丈夫でしょうか……」


あくる日


ドンドン


シリルの部屋の机が強くたたかれる

いつもと違いその荒い扉の叩き方にシリルも驚いて跳ね起きる


「何事でしょうか」


扉の奥にはゲオルグがいた


「先ほど陵二さんの軍と王国の軍が激突したようです」

「そうなのですか……勝てそうですか?」


少し下を見ながら聞く

ゲオルグさんも顔を上げない


「戦力差がすさまじいです。流石に難しいかと」

「ゲオルグさんのそう言う正直なところは好きです」


そう言ってシリルが部屋を出ようとしたところでゲオルグがそれを閉ざす


「ダメです。今戦地にいってはなりません」

「何故です。私の夫がいるんですよ」

「それでもです。あなたは一国の主の嫁。その自覚を持ってください」


そこでシリルの足が止まる


「あの方が死んでもあなたがいれば国はどうにかなります」


シリルの体が固まる


「あなたには国の為に生きて貰います」

「あの方の代わりなんていません!!」

「それは分かっております。先程のは失言でした」


どうしても自分の感情を抑えられないシリル

気が付けば涙が流れていた


「私は陵二さんから一つの伝言を受けてここにいます。聞かれますか?」


ゲオルグの問いかけに涙を拭いたシリルはまっすぐにゲオルグを見る


「どうぞ言ってください」

「分かりました」


一度下を見たゲオルグが上を向き紙を開く


「では言います。陵二さんはあなたに兄たちがいる王国に行けと言われました。以上」

「それはどういう事ですか?」

「それは当方の口からは言いかねます」


そのままゲオルグは部屋を出て行った


翌日


「分かりました。王国に行きます」

「分かっていただけましたか」


シリルの発言の安堵の息を漏らすゲオルグ


「はい。この国の王の妃としていきます」

「はい?」


シリルの発言に唖然とするゲオルグ


「だからこの国はまだ負けていません。だから私は妃として王国に行きます。文句はないですよね」

「は、はぁ……」


少し考えてゲオルグはシリルの顔をまじまじと見る


「まあ暇がそう言うのであれば私は余計な事は言いません。どうかご無事で」


その日城から一騎の騎馬が出て行った

雨は一向に降りやまなかった



「シリル様、大変です」

「どうしました?」


王国内に来たシリルの所に召使が近寄る


「どうやら王国とかの国との決戦でかの国の軍勢が負けたそうです」


その話を聞いて最大の不安がシリルを襲う

もしかしてと頭の中で思考が回る

怖くて聞きたい一言が聞けない


「おおシリル元気か?」


いきなり聞こえた声に驚いて窓の方を見る

その窓の先にいたのはガイヤだった


「ガイヤさん、何故ここに?」

「ああ、俺?俺の部隊は一番端で戦ってたんだが陵二から聞いた最後の伝言を伝えに来たんだ」

「伝言?」


合えて最後の部分を聞き逃してガイヤに聞き返す


「幸せになれ。以上だ、じゃあな」


去ろうとしたところで足を止める


「ああ、そういえば陵二の行方が分からなくなってるな」


そう言って去って行ったガイヤの服装は泥だらけでボロボロだった

が、今の彼女にそんなことどうでもよかった

ガイヤの持ってきた情報はシリルの相当のショックを与えた


「行方不明……」


その日屋敷にはすさまじい悲鳴が響いたと言う

嵐の日だった


それから一週間後


「本当に大丈夫なんでしょうか、もうかれこれ一週間ご飯にも何にも手をつけておられないのですよ」

「流石にショックだったんだろうな。大陸一のおしどり王家ともいわれてたぐらいだし」


召使たちがこそこそと話す

だがそんな事もシリルにはどうでもよかった

もはや生きる気力すらわかなくなっていたシリルは痩せほせていた


昔の記憶が走馬灯のように舞う


「陵二様……」


「最近はあのお方の名前だけ呟くだけ、今日は誕生日だと言うのに……」


召使たちの会話からふとあの時の事を思い出した

―――誕生日までには帰ってくるよ


「陵二様、今日が誕生日ですよ……」


コンコン

扉が叩かれる

ひょこっと使用人が顔を出す


「お嬢様、気分転換に外に出られてはいかがですか?」

「お外ですか?行く気になれません」

「では少し無理やりにでも行かせてもらいます」


グイっと使用人がシリルの手をひッぱって部屋の外に出す

そのまま屋敷を出ると屋敷の玄関に一本の真っ赤なバラ


「あら、この薔薇はなんでしょうか」


薔薇の下に置手紙が一つ

それを見たシリルはあたりを見回す

しかしどこにも人影は見当たらない

だが走り出した

屋敷を出て表の道に出る

屋敷に背を向けて歩き出す人を見かけて追いかける

もう消えそうなぐらい遠くにいる人を追いかける

馬車に乗ったその人を追いかける

馬車の男がシリルに気が付いて馬車を下りる


「おいおい、どうしたんだよ。せっかくの美人が台無しだぞ」


そう呟いきいきなり止まった男に止まれずにシェリルがぶつかる


「おいおいデジャブだな」

「私も同じことを考えておりました」

「「以心伝心だな、ですね」」



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