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婚約破棄された氷の令嬢は、嫁がされた枯れおじのもとで花開く  作者:


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14/15

14 処罰

「ガフタは王位継承権剥奪。クランとともに爵位を剥奪し、平民として国外追放とする」


 この決定にガフタだけでなく集まっていた貴族たちも慌てる。


「なっ!? 父上、どうしてですか!?」


 当然、抗議するガフタに王が淡々と話す。


「理由はローサ陛下が語った通りだ。それにこれまで散々、言ったであろう? 婚約破棄を撤回するなら今のうちだと」

「そんな言い方では分かりません! あんな辺境の田舎が重要な地であると、なぜハッキリと教えてくれなかったのですか!?」

「そのことについては婚約の話の時に説明した。だが、まともに聞いていなかったのはおまえだ」

「ですが、この婚約発表の前にもう一度その話をしていただければ……」

「はい、はい。そこまで」


 ガフタの話を切るようにイーラスがパンパンと手を叩く。


「ゼフ王は君に自分で考えてもらうために敢えて詳しく言わなかったんだよ。君は学園を卒業して、教えられるだけの生徒ではなくなった。これからは王族として自分で考えて動かなければならない立場になる……はずだったんだけどね。まあ、ちゃんと学園で勉強していたら、あの地がただの辺境じゃないって分かるはずなんだけど」


 ここで黄金の瞳が学園長を映す。


「いつから、そのことを教えなくなったのかな? 学園の生徒の親たちも重要視していなかったってことは、だいぶん前からだったのか……それとも、親も自分で考えることを放棄した愚民、ということかな?」


 穏やかな口調だが辛辣な内容。

 イーラスが奥歯を噛んで堪えている貴族たちへ話を続ける。


「帝国はなぜ、ここまで広大な土地を治められていると思う? それは、あらゆるところに目と耳があるからだ」


 その言葉に応えるように書類を持ってきた鷲がイーラスの肩にとまる。

 その姿にティリアは毎日世話をしている動物たちを思い出した。


「あの鷲は鳥小屋にいた……」


 イーラスが肩にのせていた鷲を逃がし、悠然とガフタへ語る。


「自分で考えることができないなら、腹の探り合い(貴族社会)では生き抜いていけないよ。気が付いた時には呑み込まれ、消される。ちょうど今みたいにね」

「クッ……」


 ガフタが反論できないでいると、耳を割るような甲高い声が響いた。


「私が平民になるなんて、聞いておりませんわ!」


 そう叫びながら激しく髪を振り乱すクラン。

 第三王子の婚約者となることを自慢し、学園では女王のように振る舞っていた。そんなクランに取り入ろうと同級生たちは媚びへつらい褒め称えていた。それが、今は冷めた視線をむけられ、距離を置かれている。

 あれだけクランを囲んでいたご機嫌取りをしていた令嬢たちも誰一人声をかけず静かに見守るのみ。


 そんな腫れ物を扱うような対応をされているクランに王が淡々と声をかけた。


「先程、確認したであろう? それにそなたも言ったではないか。ガフタと一緒にいられるなら、どのようなことでも受け入れると。それとも、王へ虚言を申したというのか?」

「そのようなことは……そうよ! お父様は!? お父様がお許しになるはずありませんわ!」

「そなたの父からも許可は得ておる。ここにいないことが承諾の証だ」


 クランの父にも事前にこうなることは伝わっており、クランには何度も第三王子との婚約を思いとどまるように忠告していた。

 だが、クランはまったく聞く耳を持たず。ここまでの騒ぎとなれば、有力貴族の侯爵家でもどうすることもできない。そのため侯爵家の当主であるクランの父は今宵の婚約発表に出席しなかった。

 つまり、クランは侯爵家から捨てられたのだ。


「そんな!? 私が平民になんて……」


 ここでフッとクランが倒れる。


「きゃー!」

「クラン様!?」


 ざわつく令嬢たち。

 一方で王が冷静に命令する。


「連れて行け」


 使用人が素早くクランを別室へ運ぶ。

 その光景を見ながらガフタがティリアを睨んだ。


「おまえが……おまえさえいなければ!」


 ガフタが護身ように身につけていた短剣を抜き、ティリアに振り上げる。


「やめぬか!」


 王の言葉にもガフタの勢いは止まらない。

 そのまま短剣の刃が白銀の髪に迫り……


「ガウ!」

「バウッ!」

「痛っ!?」


 ガシャン!


 短剣が床の上を滑り、ガフタが倒れた。


「クソッ! 噛むな! なんだ、この犬は!?」


 大きな犬たちがガフタの上に圧し掛かり、その内の一頭は短剣を持っていた右腕に噛みついている。


「わんちゃん!?」

 

 それは、ティリアが毎日世話をしてブラッシングをしている犬たちだった。

 

「わふ!」


 驚くティリアに大型犬たちがガフタを踏みつけたままいつもの甘えるような声で吠える。


「こら、勝手に出てきたらダメだろ」


 イーラスが注意するが犬たちは抗議するように吠えた。


「ワン、ワン!」

「ガウ!」

「あぁ、わかった、わかった。おまえたちのお姫様はちゃんと守るから、おまえたちはさがって」

「ワン!」


 念押しするように吠えると犬たちはサッと姿を消した。

 代わりに兵が素早くガフタを拘束する。


「え? え?」


 戸惑うティリアにイーラスが近づく。


「屋敷の鷲たちは帝国の目であり、犬たちは帝国の耳であり、私の護衛でもあるんだ。ただ、命令なしで私以外の人を守ろうとするのは初めてだけど。犬たちにとって、君はそれだけ大切な存在になっていたんだね」


 その言葉にこれまで世話をしてきた記憶が蘇る。

 築けていた信頼関係。


 そこで兵に両腕を押さえられたガフタがイーラスに叫んだ。


「クソッ! おまえは何者なんだ!?」


 その言葉に王の前にいた女帝が悠然とドレスの裾を翻す。


「おや、おや。私の大切な者を何者呼ばわりとは感心しないな」


 そう言ってイーラスの隣へと移動すると、誘惑するようにイーラスの顎に手を添えてゆったりと撫でた。他人ではありえない距離の近さ。それが二人の親密さを表しているようで。


 その光景にティリアの胸がざわついた。キュッと苦しくなり、息ができないような感覚に襲われる。


 大人な美貌を放つ女帝と大人の余裕と渋さを持つイーラス。お似合いの二人。


 その光景にティリアの足下がくらりと揺れる。


 フッと意識が遠くになりかけたティリアは床へと倒れた。




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