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死の優先席

作者: ベルモット



今日は一日中体調が悪く、授業にも出られないほどだった。



帰り道。



今日だけはいいだろうと、いつもは座らない優先席に座った。



だが、不運なことに、途中で杖をついたおじいさんが電車に乗ってきてしまった。





「誰か席、譲らないかな。このままだと近くにいる私が席を譲ることになってしまう。」





そう思ったが、誰も席を譲る気はない。




というより、誰もおじいさんに気づいていない。





不親切な世の中になったと感じながら、仕方なく席を譲った。





最寄駅に着くと、救急車が二台止まっていた。




しかし、事故の様子もない。



さらに、誰も乗っていない。



「なんだろう。」と不思議に感じた。




そのまま帰り道を歩いていると、


交差点を渡り切ったときに、

複数の男女がこっちに向かって走ってきた。



しかし、こっちが見えてないかのように、全速力で私の横を走り去っていく。




目の前を見ると、どこから落ちてきたのか、不自然に新聞が2枚落ちていた。



その新聞の一面を大谷翔平が飾っていて、

そこに写った彼はこっちを見て不気味に笑った。




その瞬間、急に身体がふわっと浮いた感覚がした。




「あ、わたし、死んでる」




そのとき初めて死の感覚を知った。




今日起きた出来事、全てがフラッシュバックして思い出される。





そして、悟った。





電車で席を譲ったおじいさんと私は、2人だけ時間軸が反対に進んでいた事に、、




私とおじいさんは、爆発に巻き込まれて死んだのだ。




この目の前に落ちている新聞は、爆発物が爆発したときに飛んできた新聞。





交差点を走り去って行った複数人の男女は、爆発に驚き、逃げていた人たち。





駅の近くに泊まっていた救急車は、私とおじいさんの救急車。



だから、誰も乗っていない救急車が二台あったのだ。





いや、誰も乗っていないのではない、私には自分の姿が見えなかったのだ。






その後、死んだ事に気づいていない私は電車に乗り込んで、同じように死んだ事に気づいていないおじいさんと優先席で遭遇するのだ。





まるで、死を譲り合っているかのように。









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