野生の第二王子と出会った
「なっ!?なんだと!貴様!不敬だぞ!?俺を誰だと思っている!」
思い返せばまぁ、顔真っ赤にして怒るよなって感じだが、当時は何故怒られてるのか全くわからなかった。
「??デンカですよね?さっき侍従さんが言ってました。あと、不敬というのは尊敬するべき人に対して失礼なことを言ったりすることなので、俺は不敬じゃないです!」
言われたことに対してそのまま思ったことが出てきた。不敬というからには偉い人なのではないかという考えはまったくなかった。
だって子供なのだ。当時の俺と同じくらいの子供なんて儀式の時に顔を合わせた隣村の二人くらいしか居ない。
つまり、俺にとってはデンカも子供として認識していたのだ。
「なんだと貴様!バカにしやがって!」
「バカにはしてないです」
「俺は偉いんだぞ!」
「んー?偉いんですか?」
「そうだ!」
「どんな功績があって偉いんですか?」
勉強したての俺は、偉い人=貴族、貴族=先祖が功績立てた人(自らが功績立てた人)、という構図が出来ていた。
ついでに現在の貴族は様々な国に関する仕事をする人という認識である。
つまり、偉いと言い張るデンカに、ならどういう功績を立てたのか?と尋ねたのだ。
「エクス様、こちらこの国の第二王子でございます」
こそっと小声で侍従さんが教えてくれて、ようやくデンカが殿下であると気がついた。
「第二王子……」
「そうだ!ようやくわかったようだな!さぁ俺に土下座して謝れ!」
俺が立場の違いに気がついたと気付いた殿下は調子に乗って言い出した。
「それって働いてる王様が偉いだけで特になにもしてない子供が偉いわけじゃないですよね?」
そう、俺は学んだことをそのまま受け取ったのだ。親が貴族の場合、その子供は社交界デビューするまでは貴族ではない準貴族扱いで権力の行使は認められていない。という王国法を素直にそのまま受け取った。
「は、はぁっ!?」
「王国法に書いてました。貴族は仕事するから偉いのであって仕事も出来ない子供は偉くないので権力は認められないって」
「俺は王の息子で王子なんだぞ!王国法なんて知らない!俺は偉いんだ!」
もう殿下が言いたいことがわからなすぎて首を傾げていたと思う。でも思い返してみると十歳なんてこんなもんだよなと思った。
「職業で偉さを比べるなら、今現在俺一人しか確認されてない大賢者の俺が一番偉いと思う」
俺は田舎の農村で暮らしていた十歳だったので、本当の意味で王や貴族というものを理解していなかった。神様に授けられた職業を天職とするなら、天職ではなく貴族や王様という職業に就いた人という認識だったのだ。
だからこその暴論だったと大人になってからはわかる。
「……っ、う、うわぁぁぁぁんっ!おれはえらいんだもーん!バカにしゅるなぁー!」
どんなに言っても俺が謝らないので、限界に達したらしい殿下は泣き出した。
それにビックリしたのは俺で、おろおろしたのはそれぞれのお付きの人たちだった。
そう、影は薄かったが殿下にも付き人が居たのだ。でもなんか仕事出来なさそうな付き人だった、殿下が俺に喧嘩売ってきた時もおろおろするばかりで諌めもしないし、侍従さんがひっそり帰らせろとか合図を出してたのに気付きもしない人だ。
因みに、侍従さんが無理に俺を連れていかなかったのは、俺に最大限配慮するように王命がされていたので、第二王子との言い合いを中断させて良いものかと判断がつかなかったらしい。
「……なんで泣くんだろう?」
そして、俺は同年代との絡みが無さすぎてどうすれば良いのかまったくわからなかった。しかも俺のなんで泣くの発言を聞いて殿下は更に泣いたし、侍従さんはドン引きしたそうだ。
村では放置気味だったせいで情緒が育たなかったのだから仕方ない。