王城にて
王様との顔合わせはモヤのせいで有耶無耶になったが、顔合わせ自体はしたので良いことになった。
入学準備や学園からの説明を受けなきゃならないって事情もあったんだけどな。
王様の部屋(謁見室)から出た後で、執事っぽい人に案内されて別の部屋に入ると、部屋の中には本や筆記具等の学園での必需品が用意されていた。
あと、何故かお針子さんも。
「さぁ!皆さんちゃっちゃと採寸しちゃいますわよ!」
掛け声と共に俺を囲んでグルグルと紐を巻いたり当てたりし始めた。勿論俺は驚いたし、触られたり囲まれたりで混乱していたけど、何故か逆らっちゃいけない気がして動けなかった。
学園には制服があったらしい。制服着用は義務じゃないけど、一応あるんだとか。
俺が平民で金持ちでもないから、制服着用で過ごした方が良いだろうって判断らしい。
そもそも俺は領主にもらった服しか服を持って無いので、制服は有り難かった。
因みに、この制服や本等の勉強道具たちは国からのプレゼントだ。強制入学なので、学業に必要なものは国で用意するということらしい。
自由になるお金が欲しいなら、バイトも紹介してくれるとか説明された。
冒険者ギルドや商人ギルドへの登録もその場でやった。十歳での登録は早いが無いわけではないとのこと。
因みに、この時初めてステータスを確認した。ステータス見なくても生活出来るので忘れてたのだ。
ステータスを確認して教えてくれと言われて見てみたら、スキルが多くて驚いた。でも聞かれたことを言わなきゃいけなかったので興味を抑えて答えていく。
「えーと、HPはたくさん、MPはとてもたくさんって書いてあります!」
「……数字を教えて欲しいんだが?」
「うー?えーと、オープン!」
書いてあった通りに教えたのに理解されなかった俺は、面倒だったのでステータスオープンして皆に見れるようにした。
本当はやっちゃ駄目なことである。
「……本当にたくさんと書いてあるとか、思わんだろう?」
ギルドの偉い人たちと、お城の人たちが頭を抱えてしまっていた。
「アーカイブってヤバくないか?」
「それより魔眼の種類が問題だろう、なんだ神眼って…」
「アシストスキルって何?」
「なんか他にも年齢による封印中のスキルがあるんだが?」
「何故大賢者に剣豪スキルがあるんだ?」
皆が頭を抱える中、俺は出されたお菓子をウマウマ食べていた。オレンジジュースも出されて美味しくておかわりまでしてしまった。
この時の俺は、なんか皆が大変そうだなぁと他人事だった。
「少し確認したいんだが…」
「はい!」
「魔力操作のスキルがあるということは、既に何か魔法が使えるのか?」
「はい!生活魔法をマスターしてます!」
「生活魔法…?生活魔法とは着火や給水といった誰でも使える魔法か?」
「それと送風と盛土と洗浄と収納もマスターしてます!」
再度言うが、洗浄や収納はじいちゃんの『あったら良いな魔法』であって実在する生活魔法ではない。
「洗浄と収納……?そんな生活魔法は無いが?」
「え!?でもじいちゃんが教えてくれましたし、使えます」
俺は洗浄と収納を皆さんに見せてあげた。本当に、じいちゃんの言ったことを素直に信じていたのだ。
「………これが、大賢者か」
後になってから思い出してみると、この時たぶん何人かの目が死んでた気がする。
たまにあるのだそうだ、そもそも神様から授けられるのはその人の元々持ってる才能に、向いてる職業なのだ。
つまり、大賢者を授かる前から魔法の創造をやらかしていた。