入学
学園入学当日。
殆どが貴族の子供で、後は下手な貴族より金を持っている商家の子供が少し。普通の平民なのは俺だけである。
その俺が第二王子と一緒に登場したので、最初は他国の王族かなんかだと思われて居たようだ。
一応、職業に大賢者が出た平民が入学することは通達されていたのだが、親の判断で子供に伝えたり伝えなかったりしたそうだ。
何でかって?第二王子と共に行動することも通達されていたので、自分の子供がケンカ売りに行ったら危ないからである。
王城側も、子供達が勘違いするように服等も追加で用意した。殿下的に問題は起こる前に潰すのが仕事の出来る人なんだとか。
それには成る程と思ったが、それを自分で実践しよう!とはならなかった。まだまだ『思考する』ことに慣れてなかったのだ。
考えて実行するのは大剣豪の訓練で行っていたが、人付き合いでの経験が無かったとも言える。つまり思ったことをスルッと言った時、相手はどう思うかどう反応するか等の思考経験が乏しいのだ。
だからこその、なるべく喋るな!とのお達しだった。
「エクス、今日から寮になる。王族は本来なら王城からの通学となっているが、俺も寮に入り、お前と同室になっている」
「えっ!?寮に入るって、ジーク洗濯とか出来るの!?掃除は?食事は食堂だって聞いたけど、その他の家事出来るの!?」
入学までの間に、名前で呼び合うくらいに仲良くなった俺達だった。
「使用人が居るに決まってるだろ」
「えっ!?」
聞いてた話と違うと思った。さてはワガママ殿下がワガママを言ったのか?と疑った。
「エクスは最初平民用の寮に入る予定だったんだが、学園側から貴族でもない大商家でもない農民では平民寮でも使用人扱いされる恐れがあると指摘されてな。国としてはお前に勉強してもらって魔法の制御を学んでもらい、あわよくば何か国に役立てば良いなという思いも有るが、国の敵にならなければ最低限よしという考えなんだ。それを虐めなどでお前が貴族なんかに憎しみを抱いてみろ、大失敗だろ?」
俺のためだったようだ。むしろ俺のせいで第二王子という重要人物が慣例を破って寮に入るなんてことになったようだ。
「エクスを王城に住まわせるのも、変に反感買うらしいから、俺が寮に入るって言ったんだ。ふふん、兄上は毎日通って大変そうだからな!俺は自由を手に入れたんだ!」
「おぉー!」
自慢げな殿下に俺は拍手を贈ったが、その殿下の後ろで侍従さんがニッコリ笑ってたのは見なかったことにした。
後で、陛下に報告されてちょっと叱られた殿下は、ぴえんと泣いた。
因みに、第一王子は二つ歳上らしく、この頃はまだ会って無かったが、第一王子は変わらず通学である。
俺が毒物等に気がつけるので、一緒に居るなら問題無いと特例で第二王子の入寮が決まったようだ。貴族寮の最上階ワンフロアは俺と殿下の部屋、その他王城からの使用人と侍従さんの部屋になっている。
俺が王都に来て一週間で寮の割り振りをし直した学園の教員達が一番大変だったかもしれない。