初めての友達
「そもそもなんだが……石が斬れるという意味がわからない」
気を取り直して再度聞いてきた殿下に、最初は自分もそうだったと納得した俺は、実際に見せることにした。
収納から、いつも使ってる木の枝と、訓練のために複数収納している石を出した。
「これを、こう!」
いつものように、スパッと斬れた。きっと俺は自慢気だったと思う。
「……は?」
わかんなかったのかな?とおもったので、もう一度やってみた。もう石は完璧に斬れるので岩とか入手したいなぁと思いながらでもスパッと斬れた。
「お、お、おま、お前なんなの!?おかしくない!?何で木の枝で石が斬れるの!?おかしいだろ!それに魔法職だよな!?何で!?普通の剣士でも出来ないことを何で魔法職のお前が出来るんだよ!?」
「大剣豪目指してるからです!」
凄く驚いてくれてる!となんだか嬉しくなっていた俺である。
「大剣豪は何でも斬れるし、斬る物を選んで斬れるし、ちぇぇいっ!ってすると何でも治せるんです!凄いでしょ!大賢者なのは、魔法も使える大剣豪はカッコいいから神様がくれたんだってじいちゃんが言ってました!大剣豪には自力でなれるから、大賢者をくれたんです!」
「…………」
この時『そもそもいくら大剣豪といえど何でもは斬れないし、選んで斬れるってなんだよ、ちぇぇいっ!とか意味がわからん。それに授けの儀式はその人の持つ才能を神が教えて、ステータスを授かる儀式であって神が職業をくれる儀式ではないのだが?あとお前の祖父はいったい何者なんだ!』と殿下は思っていたそうだ。
しかし、俺が自信満々で、何の疑念もなく言ってることはわかっていたので、こう、夢を壊して良いものか?と思い、言わなかったそうだ。
根は優しい気配り王子なのである。
因みに、このお茶会の様子も全て報告されており、事あるごとに出てくるじいちゃんとは何者だ!と偉い人達が無駄に気合い入れて調べたらしい。
だが何の情報も出てこず、というか出てくる筈もなく、直接凸することになったらしい。
じいちゃんの自業自得である。
そして、殿下は俺を放置したらヤバいのでは?とも思ったそうだ。高度な教育を受け、魑魅魍魎の巣窟といわれる王城で生活している身としては他の同年代より『人』というものを知っている第二王子の自分が、放置したらヤバいと感じるなら、宰相やその他大臣達は尚更だろう。
つまり、友達というよりは監視と補助の役割を求められているのだと察したらしい。
それに、第二王子の自分にこれでは学園で他の貴族子息子女に相対した時、問題が起こる気しかしない。
というわけで……
「エクス、お前という奴が良くわかった。わかったので勉強したことと現実の差を理解出来るよう頑張ってくれ。俺もお前の友人として協力しよう」
「わぁ!初めての友達!よろしくな!」
……この後、学園が始まるまで徹底的に貴族や王族に対する礼儀作法や暗黙の了解などを教え込まれ、最終的にはなるべく喋るな!と新しい殿下の教育係にさじを投げられた。