お茶を飲む会
「こほん、では、えーと、そうだ!何故大剣豪を目指しているのか俺が聞いてやろう!」
微妙な空気を誤魔化すように、咳払いして何とか話題を捻り出した殿下。
実は、殿下には側近候補という奴らがまだ決まって無いらしく、同年代の子息子女とはまだ顔合わせをしていなかったらしい。だからお茶会で何を話せば良いのかわからなかったので、とりあえず疑問に思ったことを聞こうとしたらしい。
「それはですね……」
俺は素直に全部、子供だったので結構時系列はバラバラだったが、全部話した。
目をキラキラさせながら語るので、俺のじいちゃんっぽい人物が大剣豪として活躍したなんて話しは聞いたこと無いと、周りの大人達は誰もつっこめなかった。
「……ちょっとした疑問なんだが、その程度の訓練で大剣豪になれるのか?」
「はぇ?じいちゃんは訓練も大事だけど一番は何でも斬れるって強い意思だっていってました!大剣豪は何でも斬れるので、何でも斬れたら大剣豪になれるんです!俺はまだ石しか斬れないので、岩とか鉄とかドラゴンとか斬れたら大剣豪ってことです!」
「えぇぇ……」
「……あれ?でも領主様の所で兵士さんの剣も斬れたし、あとはドラゴンだけかな?」
「えぇぇ……」
「はわわ!俺、ドラゴン斬れば大剣豪になれるかも!殿下はドラゴンが何処にいるか知ってますか!?」
「………聞いてどうする?」
「斬りにいきます!」
「知らない。というか、ドラゴンの前に学園を卒業しなきゃだし、魔法を学ばないといけないんじゃないの?」
「あ!魔法を斬るの忘れてた!うぅー、まだまだ大剣豪には遠かったぁ」
「えぇぇ……ヤバくない?ねぇ、コイツヤバいって」
俺が落ち込んでたら、慌てた様子の殿下が侍従さんの服の裾を引っ張りながらヤバいヤバいと言っていた。
「……トイレですか?」
「違う!」
「なんだ、漏れそうでヤバいのかと思いました」
「お前、そのスルッと口から思ったこと出すのやめた方が良いぞ」
当時の俺は、ちゃんと考えて丁寧な言葉を心がけて話していたので、ちゃんと考えて話してるが?という気持ちだった。でも一応言われたので頷いといたのだ。
テキトーなじいちゃんの孫である俺も大概テキトーなとこがあった。なんかワケわからないこと言われたら頷いときゃ良いやとか思ってた。
俺は『思ったことを口から出してはいない』のに、そう注意されてもやってないんだけどなぁ、まぁ頷いとけば良いか!って感じだった。