遊ぶとは?
「あぁ、そうだった。学園の入学式まで一週間はあるので、その間エクスを王城で預かることが決定した……という説明をするために来たのだった」
後で殿下が確認したところ、部屋に呼び戻すのではなく宰相さんがやって来た理由は『散歩兼サボり』という理由だった。
これで仕事は出来るんだよなぁって殿下がぼやいてた。
「はい!質問です!」
手を挙げた俺に、一つ頷いて続きを促す宰相さん。
「大剣豪の訓練がしたい時はどうすれば良いですか?」
「……そういえば大剣豪を目指すとか言っていたな、ふむ……その訓練には何が必要なのだ?」
「えっと、走るのと、クワを振るのと、雑草抜くのと、柔軟……あ!領主様の所では訓練所ってところを使わせてもらってました!道具は収納に入ってるので大丈夫です!」
訓練所の端っこは雑草がぼうぼうだったので、雑草を抜いてからクワで耕して、走ることで地面を均していた。
「ふむ、後で騎士団に確認してみよう」
「ありがとうございます!」
「客室には後で案内があるだろう、昼食まではそのまま過ごしてもらってかまわん……殿下は今の時間マナーの講義があった筈ですが、教育係について陛下にご相談せねばならないのでエクスと遊んでおいてください」
宰相さんはそう言って去っていったんだが、残念ながら当時の俺は友達が居なかったので遊びというやつがわからなかった。ついでに殿下も遊びとは?という感じだった。
なので、宰相さんが去ったあとはなんとも言えない微妙な空気が流れていた。
「遊びって何をすれば良いんですか?」
俺は自分が無知なことを知っている素直な子供だったので、わからなければ聞けば良いのだ!と侍従さんと殿下に聞いてみた。
「………俺が下々のやる遊びなど知ってるわけ無いだろ!」
「そう、ですね……一般的な遊び……チェスやオセロはエクス様がご存知かどうか…外での遊びといっても鬼ごっこやかくれんぼでは警備の問題が……」
無駄に領主の奥さんとのお喋りをしていた俺は、そっぽ向いて怒った風に答える殿下をみて、殿下はツンデレなんだなと思った。
そして、侍従さんは色々と悩んでいた。なんせ王子と大賢者の二人だ、下手な遊びを提案して何か問題が起こったらまずい。
「……いきなり遊ぶというのも難しいみたいだから、お茶を飲みながらお互いのことについて話すのはどうだ?」
難しいことを察した殿下が、遊ぶのではなく茶会はどうだと提案した。特に問題は無かったので、俺も同意した。
直ぐ様準備が整えられ、俺と殿下は席についたのだが……またしても変な空気になった。