報告書だけでは駄目
俺と宰相さんがほんわかお話していたら、無視されていると思ったのか殿下が怒った。
「なんなんだよお前!宰相も!俺を無視するな!」
「無視はしてないです、泣いてばかりなのが悪いと思います」
「おや、殿下はようやくお話が出来るようになりましたか」
俺は思ったことを言っただけだったが、宰相さんは確実に煽っていたと思う。でも宰相さんは大抵こんなもんらしい。王様でも第一王子でも煽る時は煽るのが宰相クオリティーと、宰相さんの部下の人が言っていた。
「俺が第二王子だからって馬鹿にしてるんだろ!兄上より馬鹿な出来損ないだから名ばかりの王子だって思ってるんだろ!」
殿下に叫びを聞いて、宰相さんは急に真顔になった。たぶん殿下に変なことを吹き込んでる馬鹿が居ることに気がついたんだろう。
「……?えーと、俺は馬鹿にしてないですって言いました。それに俺はそのアニウエという人を知らないのでアニウエより馬鹿だとかも知らないです。あと、お仕事してないならアニウエでも殿下でも名ばかりだと思うんですけど違うんですか?」
「エクス様、アニウエはお兄さんってことです」
この時はさすがの侍従さんだった。俺がアニウエっていうのが名前だと勘違いしているのを見抜いて教えてくれたのだ。
「あ、兄ちゃんのことか!兄ちゃんと比べたら駄目じゃん!比べるもんじゃないよ。初めての子供は親も気合い入れて育てるけど二番目以降はちょっとずつ子育てに慣れて雑になっていくもんだってじいちゃんも言ってた!うちだって自警団で活躍する両親自慢のイチ兄さんと、ワガママばかりで迷惑かけまくるチィ兄さんと、我が家初の女の子な妹が居るから、影の薄い三男の俺なんか放置だったし!」
俺の言葉を聞いた殿下はキョトンとしていた。
「教育係は兄上が俺と同じ歳の時はもっと出来たって言って怒るぞ?」
違うのか?とでも言いたそうに殿下は言った。
「その教育係は個人差というものを知らないのかもしれないです」
「そうですなぁ、殿下。その教育係は無知のようなので別の者に変えるよう進言しておきます」
宰相さんはなんとなく殿下がワガママで問題児だった理由がわかったようで、ちょっと言い方が優しくなっていた。
「親にご飯食べさせてもらってるうちは親の言うこと聞いた方が良いと思いますけど、兄ちゃんと殿下は別の人なので、兄ちゃんと同じになれって言われても無理って言って良いんですよ!」
「………そうなの?」
「そうです!それに俺の兄ちゃん達は石斬れないけど俺は斬れるし、殿下だって兄ちゃんより出来ることあると思う!無いなら俺が石斬れるようになるまで教えてあげようか?」
「石は斬れないと思うから遠慮する」
殿下の返事はとても早かった。なんかおかしなこと言い出したぞコイツって顔してた。宰相さんや、他の人達も変な顔してたと思う。