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♰69 一網打尽の作戦A。(+敵組織side)



舞蝶視点+三人称の敵side。




 戦況は、予想通りに動いてくれた。

 大立ち回り役の優先生は、()()()()使()()というだけでも、かなりの挑発材料となるし、優先生もまた煽るのが上手い。

 そして『最強の式神』の『完全召喚』で衝撃を与えて、優先生はあまりにも強敵だと知らしめて、優先生に大注目させた。


 乗り込みやすい裏から、リーダーも来てくれて僥倖だ。

 おかげで、優先生が『完全召喚』したように見せた私の『最強の式神』氷平さんに焦って、警戒していた『負の領域結界』を、建物を取り囲む四つの襲撃ポイントで、発動。複数の紫色のドームに囲まれた。


 想定済みの展開だ。敵が備えていたことなど。

 そして、その時のための合図と対処、こちらも備えた。


 私が目にしているだけでも、三つ見えるドーム。風間警部の報告でも、もう一つあるとも言うから、私は合図をしてくれと頷きで示す。

 風間警部が連絡で『花火』と告げると、ドドーンッと響き渡った。


 本当に花火を打ち上げたようで、真昼間から真上で光っている。

 響き渡った花火の爆音は、領域結界内にも届くもの。彼らにも、領域結界が打ち破られることを知らせたし、その外にいる術式使いにも『キー』という呼び名の術式無効化が使われるから、術式を解いとけと言う知らせもしたというわけだ。


 キーちゃん。お願い。



 ぴえぇええんっ。



 しっかり応えてくれたキーちゃんも、初陣に力んだようで、複数人の気力が込められた『負の領域結界』を瞬殺。

 パッと消えた紫色のドーム。


「すっげぇ。みんな解放された!」と、心底驚きつつも、風間警部は報告してくれた。


 キーちゃん、すごい。お手柄だ。


 嬉々とした風間警部に、鼻を高くするキーちゃんの頭をなでなでして褒め称えた。月斗も、撫でて褒める。

 スナイパーライフルを構えていて手が離せない藤堂も「ご苦労様」と一声かける。

 キーちゃんは、大喜びで尻尾を振り回した。


「一応」と、ソファーの隣のサイドテーブル上の花瓶から一輪の花を取り出して、月斗は食べさせた。

 むしゃむしゃのキーちゃん。


 そうこうしている間に〔フッ。好都合に動いてくれましたね〕と、月斗の影の特殊能力で繋がっている優先生が、教えてくれる。

 愚かな野心家の敵リーダーは、こちらの思惑通りにまたもや動いた。


「風間警部。敵さんが理想通りに動くみたいだぞ?」


 望遠鏡で警戒を怠らない私の顔を横目で見て、藤堂が言う。


「ああ。『希望ポイント1』に向かい始めたと、連絡が来た。上手くいきすぎて怖いくらいだな」


 ククッと、喉の奥で鳴らす風間警部。

 そう。上手くいきすぎて怖いくらいだ。

 でも、それも優先生が上手すぎるほどに大立ち回りをしてくれるおかげだろう。気は抜かないようにしようか。

 こうして監視するように高みの見物をしているが、敵を戦闘不能状態にするための『キー』の合図は、戦場にいる優先生が出す。

 彼のタイミング待ち。彼の判断にかかっている。


 そこは信用するが、他に邪魔になるような不安要素はないだろうか? あるとして対処は可能か?

 そう考えている辺り、余裕がありすぎるのだろうか。


 ピッと、優先生の後ろから飛びかかる大鷲型の『式神』に、ポインターライトを当てて、藤堂に撃たせた。

 藤堂も、銃の腕前がすごい。

 あの鷲の頭を、この距離で撃ち抜いた。基本的に銃で戦う藤堂だが、いつも懐に備えている短刀で近接も行けるクチだとか。もちろん、体術も。なかなか強い護衛がついたものだよね。


 ……ちなみに、私、目の前の戦いの最中に『式神』が壊されたり、術式が発動される度に、文字が見えてしまい、ついつい覚えてしまうのだが。

 戦いを傍観しながら、得るものが多すぎる件。


――そんなことないさ!


 なんて。私は気力だけは渡して、あとはお任せで戦ってもらっている『完全召喚』中のヒョウさんが、明るく言ってくれるのだけども。


 元々の作戦通りなのに、なんか次から次へと、他の誰かが倒して落とさせたアイテムを、こそこそ横取り回収しちゃってごめんね★状態です。

 もう自分は戦っていないのに、経験値だけもらっちゃって申し訳ないわぁ~。


 敵はみんな術式使いだから、戦いを見ているだけで、学んでしまう。対抗として、味方にも術式使いはいるわけで、ちょこちょこと目に入っては、完コピ完了状態に。

 味方として作戦に従ってくれているのに、勝手にごめんご★


 あっちもこっちも、援護がいるなぁ、ってことで、藤堂を遠慮なく使って、狙撃をさせた。


「増えてきましたね」と、月斗はキーちゃんの顎をこしょこしょしながら、見晴らしのいい広場に、敵も味方も左右から続々と合流を始める。好都合。


 敵の狙いは、『最強の式神』の破壊。

 あわよくば、隙をついて、優先生を打ち破りたいだろう。

 そんなことをさせないためにも、私は戦況を見つめる。

 入り乱れてきたから、迂闊に狙撃指示も出来なくなった。


「最初の負の領域結界が張られたポイント5の敵は、無事鎮圧。ポイント2と3はほぼ合流、ポイント4も徐々に移動している形です。もう機は熟したかと」


 他の情勢を教えてくれる風間警部。


「最初のは終わったが、ポイント2と3は合流した状況。んでもって、ポイント4は組長達が怖くて、動くに動けないんだろうなぁ。そろそろじゃねーの? 氷室先生の合図」


 風間警部の報告をわざと繰り返して、声に出す藤堂は、影で繋がっている優先生に伝えて促す。

 そう、ポイント4は、組長達が出向いている場だ。

 ここにいなければ、真逆の方にリーダーがいて、そっちが主戦力で攻めると考えられた。

 あまり建物自体から離れなければ、向こう側でも、キーちゃんの声は届く範囲。作戦Aが失敗しても叩き潰せるように、そこに出向ていてもらった。

 執拗に引き留めなくとも、あの禍々しい妖刀を構える美の暴力のような美貌の男から背を向けるのは難しいのだろうなぁ。


 こっちに来なくても、キーちゃんの声は届く。でも、ここまで多いとなると、離れている方は効力が薄れかねない。

 まぁ、戦力が不足しているなんて連絡は来ていないから大丈夫だろう。

 次は、優先生の合図だ。彼がここだと思うタイミング。



   ピキンッ!



 きた!

 優先生が、天にも昇るような氷の細い柱を術式で作り上げた。

 途端に双方から響き渡る笛の音が、ピーッと鳴り響く。

 それに合わせて術式を引っ込めて解く味方は下がって、他の仲間の後ろに移動して守られる。十分に長く吹かれた笛の音とともに、私は氷平さんを戻す。

 顔を一撫でしてやれば、キーちゃんは盛大に鳴く。




   ぴえぇええんっ!




 敵達は震えると、術式を消されたことに戸惑い、そして再び出せないことに混乱した。


 よし。作戦A成功。

 敵の術式使いの術式を無効化した。最早、()()()()()()だ。


 くるっと人差し指を回すようにして、やるように指示を風間警部に向ける。



「総員――――畳みかけろ!」



 至極楽しげな笑みをつり上げていた風間警部は、ゴーサインをした。


 こちらはもう、無力同然の術式使いの捕縛だけだ。中には、仕掛けとして保持した術式道具を使う者もいたけれど、それも数は多くない。難なく対処していき、次々と捕縛していた。


 リーダーの三ノ輪って男は粘るが、優先生の敵じゃないな。爆撃しても、優先生は難なく氷をぶつけて相殺。

 絶妙な力加減だから、ローカロリーだな、と優先生の戦闘をしみじみ観戦してしまった。


「お嬢。俺、適度に狙撃してていいですかい? ん?」


 暇だから撃たせてくれとか言い出す藤堂に、黙ってほしいと掌を突き付けて黙らせる。


 望遠鏡を覗き込むと三ノ輪は、また紫の歪な水晶を取り出していた。

 なんだ? この悪い予感。


「まだ『負の領域結界』が?」と、望遠鏡なしでも見えている月斗は、まだ持っていたのか、と呆れた。


 違う。と月斗の袖を掴んだ。

 何か違う予感がする!


 他の物と同じく、封じられている状態でも、使えるタイプの術式道具だ。

 複数人の力が込められた『負の領域結界』の核。


 それに新たに、別の術式道具を加えた瞬間、ズドンッ!

 と、優先生の後ろに、以前『負の領域結界』で見た不気味な顔の巨大な怪物で出てきたヤツが現れた。


 その巨体のせいで、優先生が見えなくなってしまったと同時に、私がお守りとして渡した防御の結界が発動した感覚を味わう。


 優先生が攻撃を受けたが、こちらは敵の巨体のせいでろくに確認も出来ないし、次の防御のためには『完全召喚』も間に合わない。



「 つきと 」



 今日やっと出し始めた声で、小さく月斗を呼ぶ。


「――はいっ!」


 手を離して、隣を見れば、返事をしたはずの月斗の姿はない。影だけが、床の上にあった。




 ●●●敵組織side●●●




 ぴえぇええんっ!


 『最強の式神』が消えた途端、響き渡った謎の音。

 ふざけた音だったのに、強烈に耳から直接頭に響き、術式は解かれた。それだけではなく、仲間は皆が術式を発動できない状態となった。

 三ノ輪もまた、同じだ。


「何しやがったぁああっ! 氷室ッ!!」


 絶叫をしたところで、氷室は満足げな不敵な笑みを浮かべているだけで答えない。

 戦闘が出来ない仲間達は、次々と倒されては捕縛される。


 非常事態に備えていた爆撃の術式道具は使えたため、放ったが、虫を払うように涼しい顔で氷室は氷の術式をぶつけて相殺した。


 氷室に傷一つつけられず、大本命の『夜光雲組』の組長には、お目にかかれていないというのに。

 ()()

 負けが迫る。


 次々と仲間が取り押さえられる声に駆り立てられるように、三ノ輪は、最後の『負の領域結界』の術式道具を出した。


 紫色に濁った歪な水晶と、『式神召喚』の玉をぶつける。

 多少無茶で、反動を感じたが、術式道具の発動は成功。


 氷室の真後ろに、『負の領域結界』内の不死の怪物を『召喚』。

 そのスピードに反応しきれなかった氷室に、怪物の刃の手が直撃――――したように見えた、が。


 術式が発動して、氷室は衝撃で倒れただけだった。


「防御!? 仕込んでいやがって、ますます気に入らねぇ野郎だ!! だが、もうねぇよな!? 次でしまいだ!! 死ねぇえ! 氷室!!」


 次こそはと、刃の手を倒れた氷室に振り下ろさせる。


 ガチャンッ!!


 しかし、石畳に食い込むだけで、氷室には掠りもしなかった。



 



初呼び!

次回、初めてつけてもらった名前で呼ばれた月斗sideの三人称!


いいね、もブクマも、ありがとうございます!

そして毎度誤字報告をありがとうございます! 助かります!


2023/11/05

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