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♰64 当日は甘んじてツインテール。


10/31 63話、64話、二話更新!


作戦日回

舞蝶ちゃん視点。





 私は今、月斗にツインテールにされている。ツインテールである。

 前世、三十路女にはかなりキツイ髪型であるが、今現在の私は6歳の美少女なのである。

 そう美少女なのである。大丈夫。大丈夫だ。と言い聞かせた。


「気に入らないですか?」


 不安げに眉を下げる月斗の顔が、目の前の大きな置き鏡に映る。

 超がつくほどの美少女は、大きな青灰色の瞳を広げて、艶やかな黒髪を側頭部の左右から青いリボンで結ばれてツインテール。

 ……うん、美! 美少女可愛い! 私可愛い!

 グッと親指を立てて見せる。

 髪型を決めてくれた月斗は、ホッとして明るく笑った。


「はい、舞蝶お嬢様。喉のチェックをしましょう」


 青灰色のスーツと白い白衣を着た優先生は、先程薬を飲んだ私の喉のチェックをすると、細いライトを片手に目の前にきた。パカッと口を開いて、喉を見せる。


「よくはなっていますね。では、慎重に声を、あー、と出してみてください。ゆっくりですよ? 痛みやかゆみが出ない程度に、小さくて構いません」

「……あー」

「まだ出せますか?」

「あ~」

「はい、もういいですよ」


 ほんの小さな声量だが、こうして出しても、咳き込んだりしない。

 そろそろ単語を発してもいいと言われていたけれど。


「念のため、今日も様子見としましょう。単語を発するのは、明日からゆっくりいきましょうね。そもそも、今日はお嬢様が声を出さずとも済むよう、用意は済ませておりますしね」


 優先生はそう優しく笑うと、私の頭を撫でた。

 確かに今の声の出し方だと、単語二つ目で噎せそうだ。


「お嬢がこんなに声出すの初めて聞いた~。って喜ぶことじゃないですね。楽しみです、明日。どんどんお嬢が喋れるようになるんですねぇ」


 へにゃりと緩んだ顔で笑いかける月斗も、青灰色のスーツだ。


 本日は、二日の準備期間を得て、迎え撃つために緊急招集の会合を開く当日。


 同じく青灰色のワンピースドレスと白いフリルで着飾った私も、気合い十分である。可愛さなんて十二分だ。

 ちなみに、三人で青灰色の服にしたのは、もちろん、私の色に合わせてなんだけど、まぁ見ようによっては、父も青灰色の瞳なので『夜光雲組』カラーと言われてもしょうがない。

 いいのである。私達三人組で合わせただけだ。


「お! お嬢が、どこぞのご令嬢みたいに着飾ってるじゃん。はは、かわいー、ツインテールなんて子どもらしい。緊張してます?」


 そこでお決まりのようにノックなしに部屋の襖を開けてくる藤堂が登場。

 いつもよりも黒いスーツに、深紅のネクタイをつけた顎髭美丈夫。

 小バカにした感の挨拶である。今日も今日とて藤堂は藤堂だった。


「……って、待って? もしかして三人で服の色揃えてます!? ずるいぞ! なんでそう仲間外れ!? 狙っている!? 狙ってやった!?」

「いや、俺達の方が三人でいた時間が多いんで自然と決まったというか……」


 とっ捕まる月斗は、斜め上に目を泳がして言い訳。

 別に藤堂を悔しがらせるためではない。自然と決まったのだ。


「藤堂……別にあなたのこと一切考えずに自然と決まったことですよ。あなたとは一切関係なく」

「二回言うな!」


 藤堂を追い詰めるスタンスな優先生が、代わりに言ってくれた。

 まぁ、こういうとは予想出来たので、ちょいちょいと手招き。

 作っておいた青灰色のリボンをしゃがんだ藤堂の右手首に巻いてリボン結びしておいた。


「ん? なんすか? これ。あれ、月斗もドクターもつけてるな?」

「お守りですよ。お嬢様お手製ですので大事にして、ちゃんと返却してください」

「くれないの? 貸す用なの? 術式の仕掛けの入ったお守りって言うなら絶対返しませんが?」

「厚かましいな」


 藤堂の言う通り、返さないと言わんばかりに隠された右手首に巻き付けたリボンには、防御系の結界を張る術式を仕込んである。

 術式道具。一回限りだけど。

 そういうの欲しいよね、と思ったら、氷平さんが教えてくれた術式なり。書いて見せたら、身につけるのが効果的、と優先生が作り方を教えてくれたのだ。

 『最強の式神』と天才術式使いを先生にした私って、無敵すぎない?

 あ、元々、特性が”無敵”って言われてたわ、てへっ!


「えっと……ちょっと待ってください? お嬢……俺と、氷室先生と、月斗の分しかないんですか?」


 優先生が説明終えると、口元をぴくぴくと引きつらせた藤堂が確認してくる。

 不思議になって首を傾げたけれど、ないものはないので、コクリと頷いておく。


「ど、どうして……?」となんとも言えない複雑な表情をする藤堂は、右手を上げたまま、憐みの目を向ける。


「どうして、とは? お嬢様にこれ以上気力を込めるお守りを作らせる必要はありません。お嬢様のおそばにいる我々に与えるのがやっとでしょう」


 しれっと冷たく言い放つ優先生。


「うっ……ううっ……!」と泣きべそかく藤堂だったが、袖を引っ張ってなるべく隠した。


「ぜってぇー、組長にはバレるなよ……!」


 今から決死の勝負に挑むかのような顔つきになる藤堂に呆れた眼差しを注ぐ。


 なんだ。父の分がないことを言っていたのか。作るかよ。父の守りだって固いんだから。強いんでしょ、必要ないない。

 たかがお守り一つをあげたところで、私は仲良しこよしする気ないし、無駄。



 決戦の会合の日。


 父とは別々のリムジンかどうか、迷った。

 一緒なんて、格好の襲撃チャンスと思われかねないからだ。かと言って別行動では、娘を狙ってくれと言っているようなものではないか。議論の末、もう厳重態勢で行こうということで、私と父は同じリムジンに乗り、前後もリムジンという異様にゴージャスな一行で護送となった。

 そんなゴージャスなリムジンの中で肩を並べた状態の父と娘は、重い沈黙。

 これから決戦に行くのだからピリピリしてもしょうがない。

 がしかし。そういうピリピリとは違うとわかるから、同乗者達は気まずそう。


 私側の左の長座席には、私に巻き付いているキーちゃんに一輪の花を差し出してやる月斗。

 その隣には、白衣のまま腕を組んで瞑想している優先生。顔色悪くこちらを窺う藤堂。

 父側の右の長座席には、幹部の加胡さんと、肩幅広すぎな大柄の男性である幹部の塩田さん。幹部二人も気まずいと顔にデカデカと書いてあった。


「組長。もうすぐです」と、しびれを切らした加胡さんが、目で何かを訴えつつ、知らせる。


「……そうか。舞蝶。大丈夫か? 緊張しているだろ?」

「……」


 どっちだ。

 どっちを答えればいい?

 めちゃくちゃ答えづらい質問を並べるでない。こちとら話せないんだぞ。


「組長、それじゃあ、お嬢が答えづらいですぜ? 一個ずつじゃないと」


 慌てて藤堂が助け船を出す。

 もちろん相手は、組長だ。

 何故なら、私がキレたらヘッドショットを撃ち込むと思っているから。

 そりゃあ、月斗の銃と藤堂のリボルバーと同じ物を作り出せるけれど、人の頭を撃ったりはしない。…………多分。


「なら、スマホで答えればいいじゃないか」と組長が言うが、かなり言いづらそうに「い、いえ、組長。お嬢は、車酔いするから、走行中は画面すら見たがらないんですよ」と藤堂は教えた。


 しん、と静まり返る車内。


「……そ、そうか……」と、かろうじて組長が言ったきり。


 気まずすぎる沈黙が降る。


 父と娘があまりにも接していない事実を痛感する、痛い沈黙ですなぁ。


 ”頼むから早く着いてくれ!!”

 と、念じていることが、丸わかりのげんなり顔の藤堂の願いは聞き入れられて、本当にリムジンが停まった。


 月斗の手を借りて降りたあと、把握していた建物を、ポカーンと見上げる。


 なんちゃって日本の東京には、五重塔みたいな塔があるんだぜ……? すごくない?

 どこの時代劇の撮影現場? とか思うけど、『夜光雲組』が所有する場所らしく、花見はこちらが使わない場合のみ解放して、料金取って楽しませてやるんだとか。時期ではないので、ガランとした空気を感じた。


 石畳の道を、月斗と優先生と手を繋いで進む。

 興味津々で煉瓦の屋根のある長い壁を見て、石畳の道を見て、五重塔のような屋敷を見上げる。それは希龍のキーちゃんも同じだ。興味津々で、尻尾を振ってキョロキョロ。


 屋敷が大きければ、玄関まで広い。

 そこに風間警部が待ち構えていたので、にっこりと笑顔を向ける。手が塞がっているので。


「舞蝶お嬢様っ」


 声を弾ませて笑顔で近付く風間警部。

 作戦Aのプレゼンの夜から打ち合わせで、また一回部下達を引き連れた風間警部と会っているけれど、妙に好感度が上がった気がする。

 才能披露が、そんなに効果てきめんだったのか。

 それに父への態度が妙に固いというか、上っ面過ぎる時も垣間見る。

 ……薄々勘付いたってことかな。


「こちら、準備は滞りないです」


 笑顔のまま報告。

 私じゃなくて、父にすべきだよね? まぁ、作戦の発案者だけども。

 天下の組長も物言いたげですよ、風間警部!



 



2章終盤! ついに作戦の時!

新たなキャラも出ますよ!


ハッピーハロウィン!

2023/10/31◎

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