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【五章完結】気付いたら組長の娘に異世界転生していた冷遇お嬢。  作者: 三月べに@『執筆配信』Vtuberべに猫
【第弐章・『生きた式神』と”無敵”の才能と作戦A】

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♰51 氷を使う氷平さんと呼ぼう。



 キーちゃん。疲れちゃったの? 身体、怠い?


 気力切れが近いのかと尋ねてみれば、キョトンとした顔で首を傾げては、ブンブンと尻尾の先を振り回してご機嫌さを示す。


【キーちゃん。元気です】と、一応言葉にして伝えておく。


「気力切れではなかった……?」

【単なるお昼寝かと】

「お、お昼寝……流石は『生きた式神』だ……」


 口元が引きつる氷室先生。


【比べてはいけないかもしれませんが、氷室家の『最強の式神』と精神年齢が違いますね。この子は子どもというより赤子に近いです。生まれたてだからでしょうかね】

「いや、お嬢が精神年齢のこと言えた立場じゃぐふっ」


 藤堂の悪癖を、氷室先生の肘鉄が食い止めた。

 うん。私の精神年齢は、放っておこうか。


「『最強の式神』の精神年齢は、例えるならどれくらいの年齢ですか? もう大昔から存在はしますが……」

【どれくらいと言われると困るけれど……陽気なおじいちゃんのような、お兄さんのような気がする】

「「陽気なお兄さん」」


 古の『最強の式神』に対して、そういう印象を抱いたのは、意外すぎたのか、ポカンとオウム返しする二人。


「え? 陽気なの? なんかカタカタ大笑いしてめった刺しにする姿からして……性格悪そうなバーサーカーとかじゃないの!? ぐふっ!」

「失礼ですね。偉大な『最強の式神』に対して無礼です。性格が悪いなんて言われたくないですよ、特にあなたには」


 厳しい眼差しの氷室先生は、冷ややかに眼鏡をくいっと上げる。


「な、んだと……いってぇよおい」


 肘鉄を再び受けた藤堂は大ダメージらしく、脇腹を押さえて、今にも崩れ落ちそうだ。


【キーちゃんにも驚かせて悪かったって明るく声をかけてたよ。詳しくはわからないけど、私がどうののっていう仲間だってことでよろしくって話してた】

「お嬢様。それ、スクショして、私に送ってくださいね? あの交流で……そんな会話を……!」


 はいはい。『式神』の会話の証言メモも研究資料入りですね。わかりました。


【それで、『最強の式神』はキーちゃんを『普通の式神』じゃないって言ってたし『生きた式神』はピッタリだって言っていた】

「『最強の式神』がアドバイザーを……! そうさせるお嬢様、すごいっ!」


 いちいち感動していたら、身が持たないのでは? 氷室先生。


【キーちゃんが何出来るかわかるかって聞いたら、試してやるって言い出してカマだして、キーちゃんが怯えているからやめてあげてって言ったのに、意地悪しちゃって。おちゃめな大先輩だよね】


「おちゃめで済むのか? あのカマ振り下ろしたら、お嬢もグサリだったのに」と、青ざめる藤堂。


「わかりました、お嬢様。許可を下されば、別のタブレットをそのタブレットと同期しますよ、そうすればスクショ保存する手間が省けます」

「そんなこと考えている場合じゃないだろ研究オタク!!」


 全然別のことに気を取られていた氷室先生に、全力ツッコミの藤堂だった。


【ところで、氷室先生。『最強の式神』に呼び名をつけてもいい? キーちゃんみたいに】


 メモと言えば、いちいち『最強の式神』と打つの、大変なので、短い呼び名を求める。氷室家ですら『氷室家の式神』とか呼ばれていて、発音できる正式な名前はないのよね。

 いいかな? と一応本人に問えば予想通りで、陽気な感じに”いいぞ!”という返答がくる。

 私が決めていいかと問えば「いいですよ。私の許可なんてとらなくても」と快く笑った氷室先生。


【私、先生のことも名前で呼びたいな。優先生って呼んでいい?】


 呼び損ねていた名前。こてん、と首を傾げれば、目を見開いた先生はフワッと微笑んで頷いてくれた。

「もちろんです。舞蝶お嬢様が望むなら」と承諾。


【よかった。優先生ってモテすぎて女の人苦手そうで、あんまり親しく呼ばれるの嫌なイメージだった】


 冗談の笑顔でその文を見せたが、図星だったようで、肩を強張らせた優先生。


【でも私は子どもだから、そうだとしても平気だもんね】

「もちろんです、お嬢様。それに私は確かに下心を持ってすり寄る女性が苦手ですが、お嬢様なら()()()()()()()()()()()()()()から、問題ないですよ」


 ははっと、微苦笑で笑う優先生。

 言ったな? ()()取りましたよ?

 と大いなる下心を持っている私は、いい笑顔。

 月斗は、困り顔で笑わないの。


「女嫌いとは贅沢な奴。あー嫌だ嫌だ、女受けしやすいイケメンはこれだから」


 ひがむ藤堂は、ケッと吐いてそっぽを向く。


【どうしてひがむの? 藤堂だって見境なしで使用人の二人と関係を持ってるくせに】

「「「!!」」」


 ギョッとする三人。

 バッと、藤堂は優先生が言ったのかと真っ先に疑ったが、ブンブンと焦った顔を横に振る優先生。


 いたいけな女の子に、護衛が身近で女漁りしてます、と言うわけがなかろうに。

 まともな大人だぞ、優先生は。


【一応、モテるわけだから、そうやって優先生をひがむのは変だよね? てか、もっといるんじゃないの?】


 ぐいぐいとわざと引いては押して、タブレットの画面を強調。だらだらと汗を垂らす藤堂はぎこちない動きで、明後日の方向を向いて逃げた。

 いるんかい、まだ。呆れた奴だな。


 すると、ロケット発射の如く、キーちゃんが藤堂に頭突きを食らわせる。


「いてぇ!? お嬢!? ここまでします!?」


 ひっくり返った藤堂は、なんとかキーちゃんの頭を両手で取り押さえた。


【私、やれって言ってないよ】と、一応弁解する。


 キーちゃんは、プンスカと尻尾をブンブンと振り回していた。

 怒っているなぁ。赤ちゃんだよね? 性別が女で、怒ったのかな? んんん?


「これはこれで困りましたね。希龍はお嬢様の感情を通して、怒って攻撃していい相手だと判断してしまったようですね。ぷっ、これは、大変、ですね……くくっ。組長が特に、ぷっ」

「笑い事じゃねぇええっ!!」


 そっとキーちゃんを回収した優先生は、笑いを堪えそびれながら、私の隣に腰を下ろした。

 真っ青な顔になる藤堂は、愕然としてしまう。


 私に、親どころか家に”出来損ない呼ばわり”された愛情をまともに受けていない子ども時代を送った優先生がついている。父を見限れば連れ去ること間違いなしの男が、忠誠を誓った。その事実に震えている。

 この『生きた式神』が、私がイラッとした瞬間に父に噛み付かれようとも知らんぷり、むしろいい笑顔で笑いそうな優先生を、脅威とみなした藤堂だが。


「ちゃんと希龍に、躾が必要ですねぇ? まぁ、子どもが大好きな『最強の式神』もついてますしね。お嬢様、微力ながらお手伝いしますよ」


 優先生の膝の上から、私の膝の上に顎を乗せるキーちゃんを撫でながら、優先生は仄めかす。


 脅威なのは、優先生ではない。他でもない、私なのだ。


『最強の式神』と『生きた式神』を従えたこの私。

 VS藤堂のボスである父。


 対立図に気が遠くなりそうな藤堂は、なんとしても『式神』を積極的に父へ使わないように教える優先生に、下手に出なくてはいけない。優先生にも、逆らってはいけない。


「絶対性格悪いって!」


 がしかし、そこは藤堂。悪態をつかずにはいられない口の持ち主。

 涙を呑んだが、口は閉じない藤堂を無視して。


「名前は決まりました? 氷室家の『最強の式神』。彼の方はいいと仰ってますか? まぁ、彼も恩がありますし、許可するでしょうけど」


 優先生は頭を撫でながら、話を戻した。


「恩? 『最強の式神』が?」


 首を捻る藤堂に。


【死神のシーさんでどうかな!?】

「怖いぞそれ!!」

【死ーさん!】

「漢字変換でなお怖い!!」


 とツッコませた。


 まぁ、おふさげはここまで。

 でもシーさんでもいいと思うんだ。死神っぽいんだし。


【ヒョウさん。氷のヒョウさんがいいな。また氷室家を連想しても、あの『式神』、氷の技も出すし】

「「えっ」」


 ……え?

 驚いた反応をする優先生と藤堂を見て、目をパチクリさせる。

 何? と首を傾げる。


「氷の技って……本当ですか?」


 え? 知らないの? 優先生。


「気付きませんでした? 昨日の戦いの時、俺達を冷気のベールで包んで守りながら戦ってたんですよ、あの『式神』は。多分、触れたらあっという間に凍傷する氷の技だったと思います」

「「!!」」


 一緒に間近で見た月斗が教えれば、驚愕で震えた二人。

 離れていたし、『最強の式神』の暴れっぷりに目が離せなくて、よく見えなかったのだろう。


 ヒョウさん、守りも怠らずに戦ってくれたのである。蹂躙と言える圧勝だったけども。


【優先生は知らなかったんだ?】


 意外。調べ尽くしただろうに。


「はい……過去の記録には一切……武器のカマぐらいで。氷室家の象徴なんて、顔の氷だけだとばかり。まぁ、当然ですよね。解放されたがっていたのですから、能力も出し惜しみしたでしょう。でも少し考えれば、わかったことでした。氷室家が生み出したなら、氷属性の技を一つぐらい使えますよね」


 額を押さえる優先生は、自分に呆れているご様子。


【まぁ、ヒョウさんはわざとだからね。しょうがない。カマだけでも強いし! それだけで『最強』だから、ヒョウさんすごい!】

「いや、カマで戦うだけでも強い『最強の式神』を『召喚』出来たお嬢様は、氷の技も使えるように気力を与えたのですよ? すごいですからね? 敬服いたします」


 そうなの? そうか。うん、私すごい! と鼻を高くしておく。


【ヒョウさん、氷平さんって名前がぴったりだと思う。陽気なお兄さんっぽい】

「めちゃくちゃ普通の人の名前っぽい!!」


 藤堂のツッコミ。ヒョウヘイさん、だめなの?


「平凡すぎやしませんか? 『最強の式神』ですぜ? 古の『式神』ですよ。もっとこう……ごつい感とか、最恐感を出しません!?」

【本人は気に入ったよ?】

「公認された!? もう!?」


 氷平ことヒョウさん、決定です。本人が気に入りましたんで。


【ちなみに、キーちゃんは、希望の龍で希龍って名前】

「希望? ……龍、なんすね」


 残念なものを見る目を向けないでいただこうか。

 キーちゃんは宙を泳ぐんだぞ。立派な龍だぞ。蛇からの龍の式神転生で進化なんだ。


「大昔に雲雀家は、金色の龍の姿の『式神』を使う術式使いの女性が嫁いだそうで、その『式神』は幸運を呼び寄せるとか逸話が遺されています。それもあって、蝶か龍か、どちらかの『式神』を、簡易的な依代を用意して、お嬢様の術式使いとしての特性を知るために、作成して『召喚』したら……まぁ、奇跡を起こしたわけです」

「超ミラクル製造ガール。ちょっと宝くじ買いません? お嬢」


 スパン、と軽く頭をひっぱたかれる藤堂だった。



 


陽気なお兄さん系『最強の式神』・ヒョウ・ヘイ・さん!


2023/10/19

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