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♰46 『生きた式神』と『最強の式神』の同時『召喚』。



 意図せず、生み出した自立型の『生きた式神』の大蛇。

 ……いや、龍だと言い張っていい? しかし、元々が、蛇だしなぁ。こっちは悩んでいるのに、大蛇の『式神』の方は”どっちでもいいよー”な気持ちで、すりすりすることに夢中。

 どんだけ甘えん坊なの。

 蛇って、そんな甘えん坊な生き物だった?


「え? 何? どうすればいいの? お嬢に問題がなければいいけど……いやよくねぇな? ずっと出しっぱで、大蛇を連れ回すわけにはいかんだろ。飼うの? 飼いたいって話は、ちょっと組長にして。ちなみに、俺は反対です」


 藤堂の意見は聞いてないんだよね……。


「ずっと出しっぱなしにするなら、お嬢様を守る能力があるか否かを解明しなければいけません。普通に異空間から出てきましたので、戻すことは可能かと。ただ、やはり解明しないと。異空間では気力の消費はないですが、この『生きた式神』の場合、生みの親であるお嬢様から、足りない分を吸い続けてしまう可能性もありますから。自力で回復する食事や量を解明しないと」


 しれっとした顔でも興奮状態なのが、バレバレな氷室先生に「解明したいのはわかったから、はよやれや」と藤堂は急かした。


「あなたがいる必要はないのですが?」

「俺が出ていくの待ってたの!? 嫌だよ! 見張る!!」


 冷たい氷室先生のやんわりお帰り願う言葉を一蹴して、襖をスパッと閉めた藤堂。

 見張るというか、どっちかと言えば、気持ちは解明内容が知りたいって方が強いんだろうね。

 藤堂は、うずうずと『生きた式神』を見ている。


「では、お嬢様。意思の疎通は可能ですか?」


 氷室先生が取り調べるので、右手を上げれば、そっちの方に尻尾の先を傾ける『生きた式神』。左手を上げれば、そっちに尻尾の先が傾く。


「っ。それは……お嬢様の指示ではなく?」


 念のために確認するから、この子の意思と、指を差して頷く。


「自分の意思で曲芸する『生きた式神』……??? 動画でアップしたらバズらね? あ、『式神』は映らなかったな……」


 邪なこと考えている藤堂。

 バズらせんな。裏側の秘密でしょうが。

 電子機器には映らないのね。『式神』の類いは。


「一体何が出来るか、聞き出せますか?」

「……」


 困ってしまう。

 例え、聞いたところで、伝わるかな。こういう気持ちが伝わる~、程度の以心伝心だもの。

 まぁ、試してみよう。

 君、何が出来るの? ……ふむふむ。


【この子! 子どもの蛇だったから、生まれたてのせいか、わからないって!】


 そんな気はしてた!


「めちゃくちゃ『式神』と意思の疎通してる!」

「う、生まれたての『生きた式神』か……今後成長する、のか?」

「いやいや待て待て! そんな子どもをお嬢のそばに置いていいのか?」

「いえ、『式神』は暴走状態でもないと術者本人を傷付けることは」

「通常の『式神』と当てはまるとは限らねーだろ!?」


 生まれたててで子ども状態な『生きた式神』は、今後成長するのか。

 自我もそうだし、身体もどうだろう。

 私も気になるけれど、藤堂は安全第一なわけで、考え込む氷室先生の肩を掴んで、揺さぶった。


「その点は大丈夫だと思いますよ? お嬢に懐いてますし。お嬢が生みの親だからか、『召喚』されてから、べったりですもん。俺は悪意がないからか、触らせてもくれますしね。牙持ってますね、吸血鬼の俺と一緒だ。てかお嬢に懐いているのも俺とおそろおそろ。そうだ、お嬢、名前つけてあげないんすか? 術式の『式神』としての名前じゃなくて、発音できる名前の方」


 月斗だけが陽気に笑って、『生きた式神』の口を開いて覗き込んでケラケラしては、名前を決めようと言い出す。

 確かに『式神』の名前って、暗号だもんね。発音するためのものじゃないから、呼び名ぐらいつけないと。


「待て! いや待ってくださいお嬢! めちゃくちゃ飼う流れになるんで、それは保留で! 優先順位!」


 藤堂にストップをかけられた。


 ……もう決めたんですけどね。

 希望の龍で、希龍(きりゅう)

 性別はわからないけれど、どっちにしたって、愛称はキーちゃんで決定だ。

 いい? キーちゃん。


 微笑むと、キュルルンと目を潤ませて、尻尾の先をブンブンと振った『生きた式神』キーちゃん。


「待って? 今めちゃくちゃ嫌な予感が……お嬢、まさか……」


 藤堂が青ざめるが、スルーである。


「氷室先生。自立型って言ったじゃないですか。『最強の式神』は一体だけでもすんごい集中するって言うなら、通常なら今この『生きた式神』を出している状態であるお嬢は、『最強の式神』は出せませんよね? 普通は」

「! そう、だな……。だが、完全に気力を自己で補っていて自立しているなら、お嬢様は『最強の式神』も出せて同時に『式神』を二体出せる状態に……」


 月斗の疑問に、氷室先生は顎に手を添えて頷く。


「…………だめだからな!?」


 まだ決定的なことを言ってないのに、藤堂はクワッと力んだ顔で止めた。


「ちょっとだけです!」と負けじとな氷室先生。


「『生きた式神』と『最強の式神』!? ただでさえ前代未聞なのに、許せるかよ! 刃先でもだめだっつーの!」

「ちょっとだけなんです!」

「男の”ちょっとだけ”は信用ゼロなんだよ!!」

「一緒にするなよ下種(ゲス)が!」

「いきなりマジギレすんな!? 落ち着け!? お嬢の前だから!!」


 いつもキレている側なので、氷室先生のマジギレに、慌てて宥める藤堂。

 しょうがない。藤堂今、ちょっと下ネタ持ち出したでしょ。そりゃ下種だって、罵倒もするよ?


 このコンビは放っておいて、出来るかどうか、私は確認してみた。


 『最強の式神』の名前を、思い浮かべる。

 これだけでも可能な気がするけれど、まぁ、その名前に尋ねてみようか。今の状況で、私はあなたを『召喚』出来ると思う? 可能なら、ちょっとだけ出てきてもらっていい?

 答えは、”全然平気っしょー”な楽観的なもの。

 まぁ、古の『式神』だから、信用していいだろうってことで、出てきてもらった。


 私の頭上に、闇を生み出して、のっそりと真っ白な頭蓋骨の巨大な顔を出てもらう。


「げっ! 本当に出せ……!?」

「!?」

「!!」

「!?」


 『最強の式神』が顔を出したことに、一同は騒然としたわけではない。

 『生きた式神』が、私のスカートの中に顔を突っ込んだからだ。

 勢いよく潜り込んだ大蛇に、スカートを押さえた私は、流石に真っ赤になって動転した。


 いち早く動いたのは藤堂で「こんのエロ蛇が!! なにしとくれんじゃ! 落とすぞ頭!!」と、尻尾を掴むと、容赦なく引っ張り出した。


「お、お嬢、大丈夫?」


 隣に座っていて出遅れた月斗が背中を擦ってくれたが。

 う、うん、大丈夫。びっくりしただけ。

 なんなら、キーちゃんもびっくりしている。

 頷いて見せて、キーちゃんを指差すと。


「あ、コラ! てめ! 巻き付くな! 締め付けんな!? いてて!!」


 一人慌てる藤堂は、絶賛パニックを起こしているキーちゃんに右腕を巻き付けられては、ぎゅうぎゅうに締め付けられている。あの太さの身体に巻き付けられては、もう右腕は身動き取れず、左手で引き剥がそうにも、力は足りず、なすすべなし。

 見かねた氷室先生が頭を掴むも、それさえも抵抗して藤堂にしがみつくキーちゃん。


「恐らく、『最強の式神』に驚いているのでしょうね。生きているが故に、強さをヒシヒシ感じるのでないでしょうか」

「死神の顔しているせいじゃいてててっ!! 助けてくださいっ!! お嬢!」


 締め付けられては、べしべしと尻尾の先でひっぱたかれる藤堂、踏んだり蹴ったり。

 さっきから呼びかけても、怯えて泣いてるだけだもん……。

 私も引き剥がすの、手伝えばいいかな。



 


希龍のキーちゃん。

性別はありません。


2023/10/14

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