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♰165 五回目のデートと『黒蝶』の仕事。



 そういうことで、翌日の放課後。

 私と月斗、そして七助さんに護衛とついてくる宮藤さんのメンバーで、運転手の運転でショッピングモールに向かった。

 月斗と手を繋いで、私への贈り物を選ぶ。


「このアクセサリーも似合いますね」

「そうかな?」

「全部買っちゃいますか」


 指輪はすぐ成長して合わなくなるだろうから、ピアスやネックレスを見る。

 あれが似合う、これも似合うと勧めてくる月斗。


 私は、それは好き、それはイマイチと答えるけれど、結局買わない。うーん。


 今日は月斗が私への贈り物を選ぶために買い物デートに出てきたけれど、これだという物が見つからない。


 まだ小学生だし、アクセサリーが欲しいとは思わないんだものね。

 幼すぎるのは、不便だ。


 前世なら、ブランドのアクセサリーを買っては身に着けていただろうけれど、今はまだ7歳。ブランド品なんて、もったいないと感じてしまう。だから、これを買ってと言わない。


「じゃあ、服を見て回りましょうか」


 月斗は、次を提案した。

 そうしようと、手を繋いで私が気に入りそうな服店に移動した。


「服もいっぱいあるけれどね」

「いっぱいあってもいいじゃないですか。これから夏も来ますし」

「ああ、夏服まだだったね」

「あまり多く買うと風間さんが悔しがっちゃうでしょうし、数着だけ買っておきます? これなんて似合いそうですよ! 試着してください、お嬢」


 これからの季節の服がないと気付く。

 徹くんも私の服を買うの好きだし、確かに買いすぎたらうるさそうだ。それを言うなら、優先生もだな。


 月斗と、七助さんと宮藤さんがついてくるので、店員さんが緊張した様子だった。


 三人とも長身の美形である。そんな大人を三人連れた私も、美少女。ただならぬと感じ取っていた。

 半袖のワンピース。レースをあしらっているフリルスカートが可愛い。


「可愛らしいですね、お似合いですよ。舞蝶お嬢」

「ああ、似合っている。買うのか?」


 宮藤さんも七助さんも、試着した私を見ては褒めてくる。


「んー、どっちがいい?」


 私は着てみた白の服と、もう一つの青の服も気になるので指差す。それをすぐに店員さんが持ってきてくれたので、それも「試着してみてください」と促されたので着替えた。


 見せた結果「どっちも似合う」と満場一致だったので、今日の贈り物はこの二着に決定。


 そのあとも、可愛い服を勧められるがままに試着。


「買った方がいいんじゃないですか?」


 と、月斗だけじゃなくて、宮藤さんも七助さんも買うように促してくる。


 確かに欲しい……と思ったので、二着だけには留まらなかった。


 結局、夏服を数着購入してもらったのだった。


 そんな五回目のデートを終えた。



 数日後。裏社会は騒然としていた。


 裏の者にしか覗けないネットワークの掲示板に、各地で出没した改造人間の情報が書き込まれては、その話題で盛り上がっていたのだ。


 あるところでは、術式使いの集いへの襲撃。あるところでは、組への襲撃。あるところでは、公安の刑事が襲撃を受けた。


 『トカゲ』が生み出したという、改造人間。どこも死傷者を出しつつも、撃退したという。

 公安は何をやっているのか、という不満の書き込みも見かけてしまい。


「公安だって調べてますよーだ」


 と、独り言ちる。


 また活発に動き出した『トカゲ』の追跡をしようと、公安も大忙しだろう。


 改造人間という新たな戦力に対抗するために、部隊も編成して痕跡を辿っているとのこと。


「徹くん狙いの襲撃は、今のところないみたいだけれど……」


 去年から続いていたであろう徹くんの暗殺も、今のところは止んでいる。

 しばらく徹くんも警戒していたけれども……。


「相手も迎え撃つ準備が整っている標的ばかりに戦力を割けないのでしょう。風間警部以外にも狙いはいるようですしね」


 優先生は私の前からノートパソコンを取り上げると、眼鏡をクイッと上げて書き込みに目を通した。


 罠を何度も仕掛けているが、結果的に徹くんの暗殺は失敗している。どうして『トカゲ』が徹くんを集中して狙っているかもハッキリした理由はわかっていない。徹くんも『トカゲ』を追う公安の一人ではあるけれど、それなら狙いを定めて追いかけていた燃太くんの兄、聖也さんの方が執拗だったはず。なのに、標的は徹くんだった。


 公安きっての天才術式使いでもある徹くんを狙う理由はなんだろう。気になる。


 二十年前も、天才の術式使いを惨殺した前科があるから、天才術式使いを狙う何かが『トカゲ』にはあるのだろうか。

 今後も徹くんを狙うようなら、早めに対決して息の根を止めたいところだ。


 徹くんだけじゃなく、こちらで保護した七助さんのことも知れば狙いかねない。


 『トカゲ』は、敵だ。


 しかし、痕跡を見つけられずにいる。


 この前、春休みで見つけた『トカゲ』の異空間に隠れ家のような場所を、見つけられればいいのだが……。


 そこで徹くんからの電話がかかってきた。


〔『黒蝶』へのお仕事です〕

「今回は、なんでしょう?」

〔グールの目撃情報が入ったから、それの討伐だよ〕

「わかりました、風間警部」


 私達『黒蝶』への仕事の依頼を、二つ返事で引き受ける。


 大きな工場の現場に到着するなり、付き添いの公安が結界を張った。特別ルールを設定した結界の術式。グールを認識している者は弾き、そして中にいる者はグールも含めて出られない結界だ。


 今日は、グールを速やかに討伐するために、四方に別れて捜索して追い詰めることにした。


 この前の強盗事件のように、私と月斗と宮藤さん、燃太くんと常盤くんと藤堂、優先生と七助さんで分けて突入。徹くんは不在だ。


 グールがどれほどいるかわからないけれど、きっと過多な戦力だろうと思っていた。


〔こっち、グール二体、始末した〕


 燃太くんの連絡が届く。


〔こちらはグールは見当たりません〕


 優先生の方には、いないようだ。

 私の方にもいないと答えようとしたその時だった。


 ズドン!


 改造された肉体を剥き出しにした緑色の肌の巨漢が降って現れた。『トカゲ』の改造人間だ。


 徹くんがいないのに、こちらに襲撃をしたのか?


 私の部隊『黒蝶』は、徹くんの指揮下にある部隊だと知っての襲撃だろうか? それとも七助さんの奪還か?


 相変わらず、術式は視えない。そんな改造人間は、モリモリの筋肉の太い腕を振り回して、そこにいた私達に攻撃を始めた。


 私を月斗が抱えて、その場を蹴って避ける。


 宮藤さんも転がって避けたあと、銃を連発した。ヘッドショットだったが、その弾丸は肌すら傷付けず、コロンコロンと地面に落ちていく。ダメージは与えられていない。


「通常の弾丸では無理ですよ!」


 通常の弾丸を込めた弾倉から、私お手製の弾丸を込めた弾倉に切り替える。


 パンと撃てば、雷が貫く。雷弾。

 パンパンと、撃ち続ける。その度、閃光が緑色の肉体を貫く。


「『トカゲ』の改造人間の襲撃が一体。そっちも警戒をして」

〔こっちはいない。そっちに合流する〕

〔こちらも現れていませんが、七助さんがいる以上警戒は怠りません。すぐさまそちらに向かいます〕


 燃太くんと優先生の返答を無線で聞いてから、同じく雷弾を撃ち込む月斗に声をかける。


「月斗」

「はい?」

「宮藤さんにも雷弾の弾倉を渡してきて」

「えっ」


 宮藤さんとは、真逆に離れてしまっていた。月斗は私から離れて、宮藤さんの元へと行くことに躊躇したようだ。いいから、とクイッと顎で指示。

 仕方なさそうに月斗は自分の影にしまい込んでいる弾倉を取り出して、宮藤さんの元に駆け込んだ。


「バカ! お嬢から離れるな!!」


 顔色を変えた宮藤さんが、月斗に銃口を向けたように見えた。


 が、違う。発砲しても、月斗に弾丸は届かない。通り過ぎて、私の背後まで飛んだ。


 後ろには、『トカゲ』の式神がいた。トカゲ人間のような姿の白い式神が、右肩を撃たれている。


 私は頭を雷弾で貫いて、式神を粉砕した。


 改造人間だけではなく、『トカゲ』の式神も襲撃に投入されたようだ。


「宮藤さん! これ使ってください! 雷属性の弾丸です!」


 月斗は宮藤さんに弾倉を投げ渡して、私の方へと引き返してきた。しかし、その前に改造人間が間に割って入って、拳を叩きつけてきたのだ。私も月斗も、距離を取るざるをえない。


 雷弾を撃ち込んでも、多少は痺れが残っているも、動きを止め切れなかった。

 お手製の術式の弾丸だけでは、改造人間は仕留められないだろう。


 私が避けた先に、またトカゲ人間の式神が出てきて、鋭利な爪を振り上げられた。

 右腕に掠ってしまい、血が噴き出る。


「お嬢!! ふざけんなてめぇら!!」


 月斗がキレて、足元の影を一直線に伸ばして、目の前の改造人間の胸をズドンと貫いた。


 心臓を貫ければ、心臓で動く改造人間も活動停止する。膝から崩れて、倒れた。


 そして宮藤さんと月斗は、沸いてきた『トカゲ』の式神を次々と撃ち抜く。雷弾だから、焦げて粉砕した。


「お嬢!! 大丈夫ですか!? ああ、血が!!」


 真っ青になった顔をする月斗は、この世の終わりのような表情だ。


「これくらい、治癒の術式で治せるよ、ほら」


 『治癒の術式・軽』を発動するだけで、傷口は塞がる。ちょっとくすぐったかった。

 ホッとした顔で胸を撫で下ろす月斗は、涙目で私の腕を撫でる。


「もう! お嬢! これからは離れろという命令は禁止です!」


 プンスカと怒る月斗。

 前も月斗が離れた時に大怪我をしたから、一周回って怒りだしてしまったようだ。


 私を抱え上げたまま、月斗はギュッとしていた。


「これが『トカゲ』の新武器か……。舞蝶お嬢。自分がついていながら怪我をさせてしまい、申し訳ございません」


 倒れた改造人間を一瞥して、宮藤さんは私の足元で膝をついて頭を下がる。


「こちらも改造人間が出てくるとは思わず、こちらの術式の弾丸を分けていなかったのは失態ですよ」

「同じ過ちを犯さないように、その術式の弾丸を買い取らせていただけませんか?」

「わかりました」


 そんなやり取りをしている間に、燃太くん達も合流した。


 七助さんの前にも一体、式神が出てきたそうだけれど、難なく対処したそうだ。


 他はいない。徹くんに至急連絡を入れると、痕跡を辿れないかと公安が調べることになったが、他の襲撃事件でもそうだったように、見つけられる可能性は低いだろうとのこと。


 今回の襲撃の目的は、なんだったのだろうか。


 七助さんを奪還しに来たような動きではなかったので、やはり徹くんの部隊だからちょっかいをかけられたのだろうと推測したのだった。


 『トカゲ』の視線に気付くことはなかった――――。



 


不穏。


リアクション、ポイント、ブクマを、

励みにくださいませ!


2025/09/18

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