表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

165/169

♰164 相談女の誘いより優先すべき。



 月斗に声をかけた女性は。


「よかったら、連絡先を交換してくれませんか!?」


 熱に浮かされたような顔で言い出した。

 月斗は困り顔だが、女性は「お願いします!」とごねる。


「お礼がしたいんです!」

「! あー……じゃあ、それなら」

「!?」


 冷めた目でやり取りを見ていたが、渋っていた月斗が何故が首を縦に振ろうとしたことにより、ギョッとしてしまう。


 なんで女性の誘いに乗ろうとしているんだ、月斗!

 あなたは私に執着するほどに恋しているでしょうが!!


 私の気持ちが伝わったのか、キーちゃんが月斗の頭に頭突きをかました。

 体幹のいい月斗でも少しよろめいては、視えているキーちゃんを不思議そうに見やる。キーちゃんは怒った様子で尻尾を振り回した。月斗はますます、戸惑った顔になる。


 やがて、ハッとして私を振り返った。私が冷めた目で見つめていることに気付くと、顔色を悪くする。 


「一目惚れしたんです! 私にチャンスをください!」

「あっ、俺! もう一生愛する人がいるので、無理です! ごめんなさい!!」


 がばっと頭を下げて、告白を断る月斗。


「で、でも、さっきはお礼をすると言ったら、何かを言いかけたじゃないですか」

「あー、それは……その愛する人に贈る物の相談に乗ってもらおうかと思って。でも一目惚れとかいう話なら、だめですね。ごめんなさい」


 ……私に贈る物の相談?


「い、いえ! 大丈夫です!! 相談に乗らせてください!!」


 あん!?

 下心ありありの女性は、グイグイ行く。


 相談だけでは終わらせるつもりがないくせに!! 腹立つ女だな!!


「だめだ、やめとけ、月斗。お嬢さんもワンチャン狙うのやめといてくださいな」


 まぁまぁ、と宥めに入ったのは、藤堂だった。藤堂が言うと、なんだか説得力がある。

 藤堂なら、ワンチャン狙ってグイグイ行くのだろう。

 逆に言えば、月斗とワンチャン狙っているということで、不快感が沸騰していく。


「お嬢が不機嫌になってんだから、やめとけ」


 ボソッと月斗に言っているのも、バッチリと聞こえているからな、藤堂。


 月斗も色の悪い顔で振り返って、私の顔色を伺っている。私は少し考えてから「ん」と、両腕を広げた。抱っこの要求。すぐさま私のところに戻ってきた月斗は、私の脇に手を差し込むと抱き上げた。


 ぺちっと、両手で月斗の頬を押さえ込む。むぎゅむぎゅと揉み込む。


「お、お嬢……?」

「……」


 戸惑いの声を出す月斗に何も応えず、首に腕を回してぎゅっと締め付ける。


「えっと……よしよし?」


 ポンポン、と背中を撫でる月斗。


「じゃあ、帰りましょう。お嬢さんも解散!」


 藤堂が仕切って、女性をこの場から離れさせようとする。理由は。


「いいですかい、宮藤さん。お嬢は攻撃的ですから、気を付けてください」


 とのことだ。


 今日は大人しく月斗にしがみついただけだが、普段なら攻撃していてもおかしくないと言いたいらしい。失礼な。私だってあっちから攻撃されなければ、反撃もしないわ。


 護衛が護衛対象の攻撃性を気を付けるってどういうことだ。



 何はともあれ、犯人確保をしたので、今回の仕事は終わり。


 でも、私や月斗はともかく、他は何もしていないも同然だったので、何かしようと話となった。


 射撃場で訓練しよう、ということで、宮藤さんも一緒に行くことに。徹くんは仕事の後始末だ。


 事件は解決したけれど、月斗に言い寄る女性が現れたから鬱憤が溜まっている。


 動く的を相手に、バンバンと弾を撃ち込んでいく。あまりにも、ムカついたので、的が一つ壊れるまで弾を撃ち続けた。


「お嬢、怒ってんなー……」

「月斗のせいですよ」

「俺ぇ……」

「他の子どももなかなかですが、舞蝶お嬢の銃の腕前、すごいですね」

「お嬢様は天才なので」

「なんで氷室がドヤ顔を決めるんだよ」

「何話しているの?」

「宮藤さんがお嬢様の銃の腕前を褒めていたところです」


 藤堂に優先生に月斗、そして宮藤さんが並んで話している様子だったから、銃を下ろして尋ねてみれば、私の話をしていたとのことだ。宮藤さんには、初披露か。


「殿、七助殿と手合わせしてきていいですか?」


 常盤くんが七助さんを振り返って、私に頼んできたので、別のトレーニングルームに行く許可を出しておいた。私はもう少し、鬱憤晴らしに撃ち続けておこう。バンバンと的を壊していると。


「舞蝶お嬢、自分と勝負しませんか?」


 宮藤さんが歩み寄ってきて、柔和に笑いかけた。


「……いいですよ。一対一で勝負しましょう」

「え? 一対一?」

「ペイント弾で()り合いましょう」

「……」


 まさかそんな勝負になるとは思わなかったのか、呆気に取られた表情になった宮藤さんを気にせず、藤堂と月斗に目配せをする。二人は、いそいそとペイント銃を用意してくれた。

 それを持って、トレーニングルームに移動。


「あの、舞蝶お嬢。防弾ベスト、着てくれませんか?」


 もう勝負する覚悟は決めたが、私に防弾チョッキを着てほしいと宮藤さんが言い出す。


「当たらないのに、着る必要あります?」


 私はにこりと微笑み、煽っておいた。

 宮藤さんは困り顔で頬を掻いたし、藤堂はあちゃーと額を押さえて天を仰ぐ。


 護衛対象相手に銃口を向ける羽目になって、大変だねぇ~。


「では、私が審判を務めます」


 審判を買って出てくれたのは、優先生。

 距離を開けて向き合って立つ私と宮藤さんの間に立った優先生は、右腕を上げた。銃をしっかり持った私達を確認すると、その腕を振り下ろす。


「始め!」


 宮藤さんの動きは、早かった。迷うことなく、私の銃を撃ち抜いた。――――と思う。


 サーくんの幻影を見せていたので、私に彼のペイント弾が当たることはない。

 逆に私が宮藤さんの心臓を狙って、胸を撃ち抜いた。胸元にべったりと青のペイントがつく。


「!?」


 当然、何が起きたかわかっていない宮藤さんは、目を見開く。


「私の勝ちですね」


 ペイント銃を月斗に返してもらって、私は常盤くんと七助さんの観戦をしに向かう。


 それについてくる優先生。


 残った藤堂は、宮藤さんにペコペコしていた。


「すんません! お嬢は人をからかいたがるというか!」

「幻覚の術式か……?」

「えーと、まぁそんなところですね」

「術式発動の素振りがなかったが……」

「お嬢は、術式も天才的ですからね」


 アハハ……と乾いた笑いを溢す藤堂に対して、宮藤さんは何か言いたそうにしていたように見えたが、私は常盤くんと七助さんの木刀での対決を観戦。


 それが終わったら、帰宅。宮藤さんは、家の前までついてきては帰っていった。


「お嬢……宮藤さんは幹部ですよ? もっと心開きましょうよ」

「なんでよ。宮藤さんは、ただの護衛だよ。心開く必要は今のところ感じないけれど?」


 家にも入れていない人に心を開くつもりはない。


「幹部に媚びてみっともないですね」


 冷たく言い放つのは、優先生だった。


「まだ『夜光雲組』のつもりなら、さっさと帰ったらどうですか?」

「俺はお嬢についていくって決めたんだ! お嬢!! 俺、組長のスケジュールが空き次第、組抜けてきますんで、受け入れてください!!」

「……」

「嫌そうな顔しないでくださいよ!!!」


 いきなり大声を出すから、ウザくて……。

 熱量が、ウザい……。思わず、げんなり顔になってしまう。


「わかったよわかった」と言いながら、しっしっと手を振っておく。


 藤堂を追い払って「月斗」を呼ぶ。


「月斗。なんであの人と連絡を交換しようとしたの?」

「えっと……お嬢へのプレゼントに、女性の意見を聞こうと思って……」


 それは聞いたけれど、なんだかまだモヤッとするのよね。

 私が腕を組んで見据えているせいか、月斗はガチガチに固まって座っている。


「そういうのは誤解を生むからだめだよ?」

「はい。ちゃんと断りました」

「そうだよ。月斗は、私のモノなんだからね?」

「ンンッ!! ……はい、俺はお嬢のモノです」

「勘違いだってさせちゃだめなんだからね!」

「ゴクリ!」


 月斗は頬を真っ赤にさせて、喉を鳴らした。


「それでなんで私に贈り物をしようとしたの? 私の誕生日は秋なのに」

「いやぁ……日頃の感謝を込めてプレゼントしたくなって」

「じゃあ、一緒に選ぼうよ。買い物デート、放課後に行く?」

「買い物デート……ゴクリ!」


 黄色の目をキラキラとか輝かせて、五回目のデートに大いに食いつく。


「保護者が付くの、忘れないでくださいよ。お嬢」


 リビングから聞いている藤堂が口を挟む。


「宮藤さんが護衛につけば十分でしょ」

「お嬢様。月斗がいるからと言って、部外者の護衛のみはよくありません。いつ『トカゲ』の襲撃があるかもわかりませんしね」


 同じくリビングでノートパソコンをいじっていた優先生が注意してきた。

 月斗と宮藤さんだけでは、心許ないということらしい。


「じゃあ七助さんもお買い物についてくる?」

「俺か?」


 ソファーでサーくんと寛いでいた七助さんに振る。

 吸血鬼二人の護衛がつけば、十分の戦力だろう。

 優先生は少し悩んだ素振りを見せたが、コクリと頷いて許可してくれた。



 


月斗は私だけのもの、な舞蝶ちゃん。

なかなかの独占欲。


よかったらリアクションお願いいたしますね!


2025/09/17

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

『執筆配信』するVtuber★よかったら登録ちゃんねるお願いします! 4dd343899d708783cb0612ee69cc788c.jpg
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ