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♰153 保護者付き、四回目のデート。


舞蝶ちゃん視点に戻ります。




 二泊三日のお泊り会をして、燃太くんと聖也さん達は帰っていった。


 翌日、月斗と四回目のデートへ。

 とはいえ、付き添ってくる過保護な優先生と護衛の任を盾にする藤堂とお弁当を持参してきた橘付き。


 デート、とは??? と疑問に思うも、過保護でしょうがないので、諦めておいた。月斗も納得しているしね。


 場所は、小さな遊園地。小さい方が春休みでも、人が多すぎないため、護衛もしやすいとか。あと、絶叫マシーンも、私の身長でもギリギリ乗れるとか。要らん気遣いをするから、藤堂の脛を蹴り上げておいた。

 春用コートを着て、遊園地の乗り物を、月斗と回る。優先生達の監視の元、乗り物に乗って楽しむ。

 まぁ、キーちゃんとサーくんもいるけれどね。キーちゃんもサーくんも、大喜び。


 桜の花びらが舞う原っぱで、橘の弁当を食べて、和気あいあい。


「なんか、デートとは言い難いっすね」

「……本当に、余計な口ですよね? それ。縫い付けます?」


 極寒の眼差しを注ぐ優先生だが、藤堂の言う通り、二人きりじゃない。『式神』はともかく、優先生達もいるしね。


「いえ? 別にお嬢が楽しいならいいですけど」


 ケロッと言い退ける月斗。


「へぇー? それがいつまでも続くといいんだがなぁ? お年頃だから、思考がそっちにいき」


 スパコンッ!

 藤堂の頭に、優先生の平手打ちが炸裂。


「だから余計なんですって」と、青筋立てている優先生だった。

 相変わらずの災いの口、藤堂。


「歳と言えばさ。私、月斗の誕生日、知らなかった」


 優先生の誕生日は、12月だった。橘が2月。祝い済み。ちなみに、災いの口の藤堂は、8月生まれ。

 月斗は、ポロッと口に入れそこなった伊達卵焼きを箸から落とした。


「……お、俺の……誕生日……?」と焦った様子の月斗が、オロオロとし始める。


「俺の……誕生日は…………え、えっと……」


 眉間にグッと眉を寄せて、深刻そうに考え込んだ。


「……月斗……」

「……まさか……」


 その動揺の意味がわかり、私も優先生も、半分呆れた眼差しを向ける。


「……そういえば、お前。去年、“今年が20歳”としか、言わなかったよな? 誕生日は、何日か覚えてないのか?」と、藤堂は直球。

「吸血鬼の無頓着さを自分の誕生日に発揮するなよ」と呆れ果てた。


「待ってください! 頑張れば思い出せますから!! 春! 春かな!? いや、夏? ううーん!」


 吸血鬼。自分の誕生日を忘れる。今まで、年数で歳を数えていたらしい。

 そもそも、過酷な人生で、誕生日を祝う余裕なんて、なかったのだろう。うんうんと唸る月斗が思い出すまで、放っておいて、食事を続けた。


「夏……じゃないな……? え? 秋? 秋だっけ? 舞蝶お嬢と同じ月だったりして」

「月斗。自分の誕生日を思い出そうね?」


 何へにゃっとしているんだ。思い出しておきなさいって。


「お前。自分の誕生日を思い出さないと、お嬢に祝ってもらえないぞ?」

「あ。9月です」

「あっさりと思い出すじゃねーか!!」


 執着心パワーか。藤堂がからかうと、ポンッと出たらしい。秋生まれ。


「9月か。それまでに誕生日プレゼントを用意しないとね」

「……ゴクン」


 真っ赤になって喉を鳴らす月斗に「いや、まだ半年近くあるのに、楽しみに喉鳴らすな」と藤堂はツッコミを入れた。

 保護者付きのデートは、そうやって楽しんだ。




 春の新学期。

 春休みは終わり、新学期。燃太くんは卒業して、中学の特別クラスへ。

 この小学校の特別クラスは三学年分あり、私は二学年目へ。三学年目を終えたあと、小学四年生の年齢の私が中学に上がれるかどうかは、試験次第らしい。そういうことで、小学二年生の私は、『特別クラス二年目生』である。


 燃太くんがいないのは寂しいが、燃太くんは隣の学校だ。

 朝は挨拶するし、放課後は迎えの車に乗って家に入り浸るので、彼のいない教室もすぐ慣れるだろう。


 そう思ったのは、燃太くんもだった。

「舞蝶がいない教室……寂しすぎる」と零しては「舞蝶、今からでも中学に来ない?」と言う始末。


 無理だからね。システム的にも、今更である。



 灰原七助と名付けた吸血鬼もどき。

 面会二回目でも、特に非道な検査や実験はされていないとのこと。それで、わかったのは、血を全く受け付けない身体だということ。否、口が。無理に飲むなら、なんとかエネルギー摂取が可能らしい。


 そんな無理をすることないと、一回目の面会のあとから、私の薬を提供した。


 食事は要らないそうだけれど、じゃあ何してるの、と言えば、検証実験に付き合っているとのこと。最大の怪力は、吸血鬼の平均を軽く超えているし、エネルギー消費量を計っているとか。承諾をして、腕を切りつけて治癒力も観察させたり、聴力や嗅覚がどこまで高められるかの実証実験も。

 未だに、外見や血液や指紋では、彼の素性はわからないらしい。


 そんな話をしながら、公安本部の建物を順番に回って、隠された領域結界の出入り口がないか、探った。私も違和感がないかと見回したけれど、なし。


 七助さんは、私の話も聞きたがり、記憶喪失の話や新しい学期が始まったことを話した。


「舞蝶嬢は、学校を卒業したあとは、どうするつもりなんだ?」

「それが決めてないんだ。だから、今年は見付けることを抱負にしてるんだよ」

「そうか……。夢とか、決まるといいな」

「七助さんも、監禁生活が終わって『トカゲ』退治が済んだあと、どうするか。まぁ、素性次第かもしれないけれど」

「……」


 そんな会話をしていたら、意味深に徹くん達に目を向けたから、私も追いかけて振り返ると、すいーと目を背ける一同。燃太くんだけは、キョトリ。


「その『トカゲ』退治は、戦闘もするだろうから、その、次は戦闘訓練でもしないか?」と、七助さんが提案。


「いいね! 月斗と組んでほしいな。つよーい吸血鬼二人相手に、蹂躙、ゴホンッ。間違えた。強敵相手に全力で対処する方法を模索してみたいから! 改造人間相手を複数相手にするの、想定しての戦いとかね!」


 見事に釣られる私。


「今、蹂躙っつったぞ。吸血鬼二人相手に蹂躙する気満々だぞ」とツッコミを言う藤堂は、華麗にスルーである。


「徹くん。特訓出来るところある?」

「あるよー。来週、手配しておくね」

「ありがとー。徹くんもやろう? あのね、徹くんに使ってもらいたい術式があるの」

「待って? サラリと、すごいこと言うね? 舞蝶ちゃん大好き! 今やろう!? 今すぐやろう!!」


 徹くんが乗り気になったので、そのまま戦闘訓練所へ案内された。


 吸血鬼同士の組み手を眺めながら、徹くんに術式を教えた。

 徹くんの術式の戦いとしては、腕を振ってのその位置に術式を設定をするというやり方。感覚的な天才型の徹くんには、顔の位置の左右から放てる狙撃タイプの攻撃術式を使ってもらえばいい。

 動きも時間ロスも、減る。


「俺……舞蝶ちゃんに、どんな見返りを返せばいいんだろうか」

「舞蝶お嬢様のどんな要求でも、応えればいいんですよ?」

「それは無茶すぎでしょ……」


 とんでもない横暴だね、優先生。

 徹くんの指導の元、吸血鬼の狙撃のコツを、ペイント弾で試させてもらった。


 しかし、的役を務めてくれた月斗と七助さんが、並みの吸血鬼ではないせいで、私と燃太くんだけではなく、藤堂も苦戦。


「二人とも止まれ!」

「「!!」」


 なんて、私が命令しなければ、上手く当てられない。素早すぎる。


「いや、ズルいでしょ」とツッコミを入れる藤堂を、またもや華麗にスルーしておいた。



 

 

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