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SIDE6 昔話

「カンカンカンカンカンカンカン」


 入口の近くにあるやぐらからけたたましい鐘の音が鳴り響く中でエドはその手に黒刀を握りしめて堂々とその中に入って行く。


 エドはいつもと雰囲気が違っていてその目は血走っていて殺気を隠す事は全くしていない。


「おいっ止まれ」


 駆けつけた男が唾を吐きながら怒鳴って来るがその首は答えを聞く前に身体から離れていった。


 首が飛んで行った先には子供がいてその顔に血しぶきが掛かったので泣き叫んだがエドは目線を向けることなく真っすぐに進んで行く。


 直ぐに武器を手にした人相の悪い盗賊達が顔から湯気が出る程の怒りをあらわにしてエドの前に立ちはだかった。


「馬鹿な真似をしやがって、ゆっくりと殺してやるからな」


 エドは浅く息を吐くと盗賊達にはエドの姿が見えなくなり、そこからは圧倒的な惨殺が始まっていく。


 盗賊達は完全にエドの姿を見失い、ようやく姿が見えたと思ったら次の瞬間には命は消えていた。


「ひいぃぃぃぃぃ」


「何が起こっているんだ」


「早くお頭を呼べ~」


 盗賊達の戦意は簡単に消え失せてエドに背中を見せて逃げ出すが、その背中にも容赦なくエドの黒刀が突き刺さった。


 村の中央まで進んで行くと一つだけ石造りの家の中から一人の仮面を被った隻腕の男が出て来た。


「てめぇ~どこの…………」

『おいっお前もこの世界に来たのかよ』


 エドに声を掛けて来たその隻腕の男は持っていた斧を落とし仮面を取ると日本語で話しかけてくる。


 エドは仮面の下にあるその顔を見た途端に感情が入り乱れて混乱してしまった。


『所長、所長じゃないですか、どうして……その手とその目はどうしたんですか』


 構えていた黒刀を下に向け、先程まで身に纏っていた殺気が霧散してしまう。


『ふぅ~、あのな、まぁ何だ、ちょっと落ち着て話そうじゃねぇか、部下のお前と命のやり取りなんてしたくねぇからよ、それでいいならその刀をしまえよ』


『ここでは仕舞えません』


『そうか、まぁいいや。ちょっと二人だけで話すぞ、良いよな』



 ◇◇◇



 この村の中にある広場の中央に簡易なテーブルを部下に用意させた後でエドと向かい合って座ってエドと所長は椅子に座った。


 日本語での会話が聞こえないように離れさせ、そこから盗賊の男達だけでなく此処に暮らしている女や子供までもがエドを睨みつけるようにしながら見ている。


『気になるかも知れんが我慢してくれや、あいつらは俺の事が心配なんだ』


『どうでもいいですよ、奴らには俺は殺せませんから』


『がっはっはっすげぇなお前は、昔はそんな奴じゃ無かっただろ』


『所長だってそうじゃないですか、見た目も話方もかなり変わりましたよ』


 元の世界の所長は少しだけ過去にやんちゃをしていたような風貌ではあったが、部下に対しても丁寧に接してくれる人だった。


『お前もだろうが色々とあったからな』


『何があったのか知りませんが、どうして盗賊何てしているんですか』


『それは……』



 ◇◇◇



 目を覚ますと森の中にいてな、直ぐに抜け出したかったが身体は何処も痛くねぇのにどうも体を動かす事が出来なかったんだ。


 このままでは死んでしまうと思ってな、這いつくばりながら何かないかと探したが見つかったのは腐った水溜まりしか無かったんだ。


 飲みたくは無かったし飲むと吐きたくなる位に不味かったが、そんな事は言ってられる状況じゃねぇからな無理やり飲み込んださ。


 何日かするとようやく立ち上がる事が出来てよ、森の中を彷徨っていると洞窟の前に人を見つけたんで助けを求める事にしたんだ。


 だがなそいつらは言葉は通じねぇし、コスプレの様な姿をしているから俺の頭がおかしくなったのかと思ったぜ。


 いきなりジャケットを剥ぎ取られそうになったんだがよ、抵抗したらポケットからスマホが落ちてな、その時に画面が開いたんだがあいつらはそれだけで動きが固まったな、まぁこの世界じゃ仕方ねぇことだよな。


 てっきり過去の戻ったのかと思ったからよ、ライターを取り出して火をつければ驚くと思ったんだが、それはいまいちだったな、今となっちゃちょっと変わった魔道具ぐらいにしか思わなかったんだろうな。


 まぁ何とか敵じゃない事を理解してもらってな、ひと先ず一緒に居させてもらったんだ。そんな連中と一緒に何ていたくなかったが一人で森を抜ける気がしなかったからな。


 ただしそれが正解だったと気が付くのは早かったな、魔獣やゴブリンを見ちまったからよ。


 只事じゃねぇと思ったんでな、言葉を覚えながらもっと仲良く出来るように色々とやったんだぜ。


 森に中では一緒に果物を取ったりしてたんだが半年も過ぎた頃だな、そいつらと一緒に森を抜けたんでてっきりもっと人がいるところに行くと思ったが……まぁそいつらが盗賊だったって事だな。


 道があるのに隠れていたんでおかしいとは思ったんだが、目の前を通過する商人の連中を襲った時には驚いたぜ、俺はなぁ馬車から子供が出てきたんで思わず手を取って逃げ出そうとしたんだがその時に腕を斬られちまったな。


 無理やり連れ戻されてよ、その日からは奴らの気分のままに殴られたり蹴られたりしたな。まぁ不思議な事にいつの間にか痛みを感じなくなってな、俺が殴られても平気な顔をしているからその時の頭が俺の目をえぐりやがったんだ。


 まぁ痛みは無かったけど、気分のいいもんじゃねぇよな。


 それからも同じような仕打ちが続いたんだが、段々と殴っている奴が痛そうな顔をしているのが分かったんだ。そりゃそうさ、俺の身体は痛みを感じないだけでなくて硬質化する事が出来るようになったんだ。


 それが分かったらもうこっちのもんだぜ、何やられてもどうでも良くなってな、ただひたすら自分の身体の秘密を探る事だけに没頭したさ。随分と煙たがれていたが俺には何やっても無駄だと思ったのか手を出さなくなったからな。


 だがよ今度は言葉で文句を言ってくるのがムカついてな、完全に自分の力を理解し終わってからまだ文句を言う連中を全て殺してやったんだ。


 まぁそんな事をしたらそこにはいられぇからな、森を抜けて道を歩いていたらようやくちんけな村に辿り着いたんだが、あんまり馴染めなくて直ぐに別の街に移って冒険者になってよ、それなりに稼げるようになったんだが、何かつまらなくてな。


 そんでそれで酒場で暴れていたんだがこいつらになつかれちまってな、結構好きにやっていたら街に居られなくなってな、そしたらまぁいつの間にかこうなっちまったって訳さ。


 今はよぉこの奥で麻薬を育ててよ、結構いい稼ぎになるんだぜ、だから盗賊何てちんけな真似はもうやっていねぇんだ。お前も良かったら仲間にならねぇか、多少は気まずいかも知れんが俺が命令すれば大丈夫だからよ。


(何を言っているんだ、この人は)


 


 


 


 



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