SIDE5 エドは止まらない
ひと仕事を終え、いつもの定食屋で食べているとそこにジンガが息を切らせて走って来た。
「アニキ、良い情報が入りました。憲兵が盗賊を捕まえてそいつらのアジトを吐いたようです」
「…………で、それが」
「それがじゃないですよ、討伐隊を直ぐに結成するのかそれとも兵士が戻って来てから結成するのか話合っているそうです。もし直ぐに結成されたら参加しますよね」
「しない」
かなり言葉は聞きとれるようにはなったのでジンガも普通に話してくるが言葉にするにはどうしても単語になってしまう。
ダンジョンから街に戻ると上級冒険者は強制的にいなくなってしまった憲兵の補佐をする事になってしまったので今はその役目を全うする事に充実感をエドは覚えていた。
所詮は門番や街の治安維持の為のパトロールだけでしか無いが、何となくそれも楽しかったし、もう目的の盗賊以外はどうでも良くなってきた。
「どうしてですか、そこの頭は隻腕何ですよ」
「何だと、その盗賊は何処」
「何処って、詰所の牢屋に……アニキ、アニキ、あ~行っちゃったよ、ここの支払いはおいらだよね」
エドはいきなり走り出しで詰所に駆け込むと憲兵隊長に捲し立てたが、残念ながら興奮していたせいで意味が通じていなかった。
「落ち着けって、何がだよ、おいっ誰か落ち着かせてくれ」
「エドさん、一度落ち着きましょう。ほらっ水を飲んで下さい」
「奴、どこ。ん~&%#”%」
「だから、奴って誰の事を言っているんだよ」
憲兵たちが困っているとそこにようやくジンガがまたしても息を切らせながら入って来たので憲兵たちはようやく胸をなでおろした。
「おいっいったいエドは何が言いたいんだ? 興奮してるから分からねぇよ」
「はぁはぁ、すみません。アニキがご迷惑をおかけしてます」
「ジンガ、ジンガ」
「分かってますから静かにしててください」
ジンガはエドを座らせてから衛兵隊長に此処に来た理由を話し始めた。
「何だよあの事か、ただなやはり今はそっちに人員を割けなくてな、まぁやつもまさかアジトがバレているとは思わないから焦らなくてもいいだろ」
「場所、場所」
ジンガがエドの代わりにその場所を聞きだすと、地図に衛兵隊長が指を指した途端に飛び出して行った。
「おいちょっと待て……まさか行くつもりじゃないだろうな、おいおいアジトにどれぐらいいるのか正確には分かっていないんだぞ、ジンガ、奴を止めるんだ、殺されちまうぞ」
「分かりました。いくらアニキでもそんな無茶な真似はしないとは思いますが……失礼します」
エドの後を追いかけていくジンガの背中を見ながら衛兵隊長はつい教えてしまった事を後悔している。
そこらにいる冒険者であったのならどうでもいい事だが、いつも討伐に行く前には丁寧に挨拶をしてきて大物を仕留めた時には詰所に差し入れを持ってくるエドの事は誰もが好きだったからだ。
◇◇◇
「アニキ~そろそろ帰りませんか、まさか本当に行く気じゃないでしょうね」
「本気だ。一人で問題ない」
諦めかけていた隻腕の盗賊の情報が入ったのにどうして落ち着く事なんで出来るのだろうか。俺にとってはこの世界の中で誰よりも憎んでいる。
そいつの顔は知らないが隻腕の盗賊など滅多にいないのだから絶対に奴に間違いはないはずだ。
ジンガはいくら何でも向かって行くうちに冷静になるだろうと思っていたがエドの怒りは膨らむばかりで止めようがなくなってきた。
街を出てから五日も過ぎているのにエドは殆ど休むことなく馬を走らせているので、ここに来るまでに馬を一度買い替えている。
そしてアジトがあると言われている森の中に入り、一日も過ぎない内に盗賊の集落を発見してしまった。
(こういう時に限って簡単に見つけるとは……アニキの執念は凄いけどさ)
その盗賊の集落は魔獣除けの為なのか尖った柵が周りを囲んでいて、唯一の出入り口には三人の男が立っている。
その様子を離れた木の上からエドとジンガは見ていた。
「アニキ、こりゃ何ですかね、あそこにいるのは盗賊で間違いないと思いますが、その辺の村よりしっかりしているじゃないですか」
視線の先にある盗賊のアジトはちゃんとした建物が建ててあるし、みすぼらしさがあまりない。
(良くここまで立派にしたもんだな、だがな今日で全てを壊してやるよ)
「待ってろ」
「ちょっと本気ですか……あ~あ~行っちゃったよ、おいらが行っても邪魔になるだけだしな、あ~もう」
エドは木から飛び降りると隠れることなく堂々と歩いて行く。案の定直ぐに見張りに立っていた男達がエドの目の間に立ちはだかった。
「ああん、おめぇは迷子か何かか? 馬鹿な野郎だな、此処が何処だか……」
いきなりその男の首を刎ね、動揺してしまった二人の男も一歩も動かない内にその首が胴体から離れてしまった。
(お前らに明日はねぇんだよ)




