第八十一話 合流
階段から見える43層を見ているといきなり肩を叩かれた。
「……んた……の」
「んっ?悪い、耳栓をしていてよく聞こえなかったよ」
俺が余りにも戻って来るのが遅いから心配したらしく全員で探し来てくれたそうだ。以外にも思っていたもっと時間が過ぎているのかと思ったがそうでは無い事が分かった。
「降りて来る時にもの凄く階段が揺れたんだけど大丈夫だった?」
「揺れていたのか、だからね」
【雷瞬】で入っている時にどうも走りにくいと思ったのだが道が悪いせいではなくてダンジョンが揺れていたせいだろう。
「もしかしてだけどよ、まさかお前が原因なのか」
「どうだろうな、全てでは無いと思うけ良く分からないな、それにまだ魔法の影響が治まっていないから確かめに行けないからね」
「それじゃ今見えている光は魔法の影響なの」
「俺の想定を超えてしまってるけど」
魔力がほとんど残っていないので休むことに集中したかったが、俺が43層で何をしたのか言わないと休ませて貰えない雰囲気だったので最初から話すしか無かった。
「確かにトレントは火属性に弱いからな、だからと言ってそんな事になるのか」
「そうとしか言えないな、地上にいるトレントと少し違うのかも知れないけど」
「それで暴走した魔法の結果は何なの?」
「どうだろうね、今はまだ中に入らない方がいいと思うからせめてあの光が治まる迄は入らない方がいいんじゃない」
大規模な森林火災になってくれていたらいいのだが、もしかしたら爆風で火を鎮火してしまった可能性も考えられる。
かなり疲れてはいるがヘンリク達と今後の事を話し合っているのに対しゲルトはこの会話には一切入って来ない。
「おっさんよ、何が不満なんだ。ずいぶんと機嫌が悪いじゃねぇか」
「そりゃそうさ、何を浮かれているのか知らないけどよ、旦那は殆どの魔力を注ぎ込んだって言ったじゃないか、いいかいこの中では魔力の回復は遅いんですぜ、それなのに残りが僅かなのにどうするんですか、もう戻るしかねぇじゃねぇですかい。まさかその状態で下に行くつもりじゃないでしょうね、まだ半分以上もあるし上級種もいるのにやってらんないね、それによ素腰は回復しねぇと戻る事も出来ねぇんじゃないのかい……ふぅ、結論が出たら声を掛けてくれや、あっしは未練がましくこんな場所にいたくねぇからさっきの場所にいるからよ」
ゲルトは一気に捲くし立てるように話すとそのまま上に行ってしまった。ついさっきまでこれからの事を話し合っていた俺達の間に重い空気が流れ始める。
「確かにおっさんの言う通りだな、お前はすげぇ魔法を見せるからつい忘れてしまったけどよ、本当だったら魔法使いは温存させなきゃいけねぇんだよな」
「そうね、私達が頼り過ぎていたのかもね」
全ては俺の思い付きでこんな事になってしまった。勝手な実験で俺の魔力は殆ど使い果たしてしまった。もし魔力を完全に回復させるために地上に戻ってしまったらいくら43層が焼け野原になったとしても戻ってくる頃には元の姿に戻っているのかも知れない。
(調子に乗り過ぎて馬鹿な事をしてしまったな、ここは直ぐに行き来出来ない階層なのに……)
「今回は俺が全て悪いんだよ……んっえっどうしてだ」
「何よ、魔力切れが起こりそうなの?」
「違うんだよ、ちょっと静かにしていてくれるか」
身体の中に力が湧いてくるような感覚がしたので身体の中にある魔力を探ってみると急激に魔力が増えているのか感じられる。
(そういえばここに入ってから魔力の量を気にした事も無かったな)
元から魔力は多いしそれ程使用した訳では無いので魔力の残量など気にしなかったが、あそこまで減ってしまった今ならこの異常な回復を感じる事が出来る。
「あのさ、普段以上に魔力の回復が早いと言うか、早すぎると言うか……何だろ」
「そんな訳ねぇだろ、魔力は身も心も休まる場所じゃねぇと回復が遅くなるんだよ、こんな場所だと遅くなるのは常識じゃねぇか」
「俺もそうだと思ったんだけどさ……ちょっと待って」
魔力を両目に集め周囲に目を向けると、ダンジョンの至る所から花粉の様な魔素が俺の身体の中にどんどん入って行くのが見えている。
(そういや魔素を急激に吸収した事があったよな、気にしてはいなかったけど俺が魔力を回復するには休息が原因じゃなくて魔素の吸収なのか……だとすると俺はダンジョンではかなり有利なんじゃ……俺の魔法じゃ……ソロでなら……んっ)
深く一人の世界に入っているとジールが肩を揺らして顔を覗き込んでいる、
「ちょっとどうしたのよ、焦点が合ってないわよ」
「あぁゴメンゴメン、それより引き返す必要はないみたいだぞ」
「どうしてよ」
「どうやら俺は体質が違うらしいんだよ」
「あっもしかして……」
ジールは何となく察してくれたようだがそれ以上は言わないでくれ只の特異体質と言う事でこの場をまとめてくれ、そのままゲルトを迎えに行ってくれた。
「お嬢ちゃんから聞きましたけど特異体質って本当なんですかい」
「あぁそのようだね、もう少しで完全に元通りじゃないかな」
「嘘じゃないでしょうね」
「こんな事で嘘をついたら俺だって死ぬんだぜ、そこまで命を懸ける嘘はつかないさ」
誰もが半信半疑だとは思うが俺の中にある魔力の量を見せる方法などある訳ではないので信じてもらうしかない。
「信じるしか無いんでしょうね」




