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第七十五話 実験開始

 ジールには先にギルド長の元に行ってもらい、俺はヘンリクが泊っている宿に迎えに行くとその途中で運良く会う事が出来た。


「よぉそんなに慌ててどうしたんだ……もしかして奴が来たのか」


「そうなんだよ、だから一緒に会いに行こうと思ってさ」


「そうか、いよいよまともに動き出せるな」


 高揚しながら走りそのままの勢いでギルド長の個室の扉を開けるとその中にいたのはジールとギルド長。そして初めてギルドの来た時に情報をくれたゲルトと言う男だけだった。


「どういうこった? アイナは何処にいるんだ?」


「それがよアイナとかいう冒険者は嫌だってよ、ミノタウロスがどれぐらいいるかも知れないダンジョンには行きたくないってさ、お前なぁそんな奴を紹介するなよな」


 ヘンリクはその言葉を聞いて苦々し顔をしながら額に手を当てている。


「あのよぉ何でそんな事を正直に言っちまうかな、俺はちゃんと言ったはずだぜ、ただダンジョンに潜るだけだと言えとな」


「そんないい加減な指名依頼を出せる訳ねぇじゃねぇか、俺にも立場ってもんがあるんだぞ」


「そうだけどよ……だからビビッて来ねぇんだよ」


 ヘンリクは小声で文句を言っているが、それよりもこの場にゲルトがいる事が不思議でならない。


(まさか代わりじゃないよな)


「あのね、この情報屋がその子の代わりをするんだってさ」


「「ええ~マジかよ」」


 思わず二人で声を揃えてしまったが、どうみてもゲルトは俺達が希望している要件を満たしている人物だとは思えない。


「おいおいお前さん方それはちょっとあんまりじゃねぇか、確かに魔法が使えるようには見えねぇかも知れねぇけどよ、ちゃんとご希望の魔法は使えるんだぜ」


「なぁ何の事なの?」


「ちょっと待ってて、後で説明するからさ」


 こんな事を言うとジールが不貞腐れるかも知れないが、それよりもこの問題は今の俺達にとって重要な事だ。


「ギャーギャー騒ぐんじゃねぇよ、いいから試して来いよ、もし気に食わないんだったらまた考えればいいだろ」


「分かりました。それではダンジョンで試させて貰います」


「そんな言い方をされるとどうも気分が良くねぇな、悪いけんどよ気分を持ち直すために一杯やってから行かねぇか」


「どっちに転んでも必ず奢ってやるから先ずは上手くいくかどうか試させてくれ」



 ◇◇◇



 ダンジョンに着く前にジールにはどういう事なのか説明はしたのだが、やはり最初に相談しなかったのは失敗だったように思える。


「早くそれを言ってくれたら良かったじゃない。あの冒険者達にもそれを伝えたらまだ残っていたかもしれないんだよ」


「ジールちゃんよ、あれはあれで良いんだ。いいかいおこぼれだけを狙う奴らは要らねぇんだ。それにな……」


 ヘンリクの指導がジールに対して始まったが、要は役目を果たさない奴は邪魔でしかないと言う事だ。


「あ~もう五月蠅いな分かったって言ったでしょ、しつこいんだよ、それだから女性にもてないんだよ」


「なっお前っ何も知らねぇくせにっ」


 二人が馬鹿な会話をしているとそこにゲルトがヒョコヒョコと歩きながら寄って来た、


「まさかこれだけじゃねぇよな、他はどれぐらいやってくるんだい」


 この場には俺達とゲルトを含めて4人しかいないが、あくまでもテストなのでわざわざハルやヨモギは呼んでいない。


「今日は只のお試しだからこれで良いんだよ、ほらっ早く行こうぜ」


 別にどの階層でも良かったのだが31層に良く出現するリングボアを実験対象に選んだ。この魔物は身体こそ3mを超えるが単体で襲ってくるので実験には丁度いい。


 転移魔道具で31層に下りてリングボアを探して歩くと直ぐに発見したようでヘンリクからの合図があった。


「その角の先からこっちに向かって来るぞ、ゲルトさんよ本当に出来るのか見せてくれや」


「はいはいっと、さぁ久しぶりに唱えてみるかね」


 ゲルトは懐から取り出した魔石を握りしめて詠唱を唱えると直ぐに合図である右手が上がった。


(もう完成したのか? 良く分からないけど本当なのかな)


 ゲルトに注目するがその周りに何かがあるように見えない。するとグルトの後ろにいるヘンリクとジールが慌てたように必死に俺の後ろを指で指している。


「あっそうかこっちに来ているんだっけ、雷銃」


 振り向きながら魔法を出すと既に3mまで近づいていたが、【雷銃】の本来の音と反響している音で立ち止まってその短い首を左右に向けながら周囲を警戒している。


 そのまま逃げ出しそうな雰囲気がしたので【雷銃】を飛ばしその身体を簡単に吹き飛ばした。解除した後で耳栓を外しているといきなり後ろから後頭部を叩かれる。


「おいっ成功したぞ、これならいけるんじゃねぇか」


「本当ね、全くと言っていい程あんたの魔法の音が聞こえなかったわよ」


「喜んでくれるのは嬉しいけどよ、あっしの障壁は魔法は防げるが普通の攻撃には全く効果が無いんだぜ、それでも良いのかい」


 そこまでは贅沢は言ってられないので満面の笑みで頷き、もう少し実験をしようと再びリングボアを探しに歩き始めたが、此方に向かってくるのは魔物ではなくかなりの数の冒険者達だった。


「えっ何なの? もしかして何かあったのかな」


 一番最初に到着した男が汗を拭きながらヘンリクと向かい合った。


「あんた達よ、何のんびり歩いているんだ? このダンジョンに何かあったようだから早く出た方がいいぞ」


「あぁあの音の事かい? いやぁこいつの魔法のせいなんだよ」


 そのヘンリクの言葉を聞いてその男が後ろから走って来た男達にその事を告げると誰もが俺に対して怒りに満ちた視線を投げかけてくる。


「てめぇがやったのか、こんな場所で遊ぶんじゃぇよ、早くここから出て行きやがれ」


 あっ本気で怒ってる。


 

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