第七十一話 ドワーフ族の集落
サポート要員はギルド長のアキムに任せる事にして俺達はその間にドワーフが働いている地区に向かって行く。
いくら何でもこの格好でダンジョンに入るには無謀な気もするしそれに必要な物も手に入れたいからだ。
それに俺としては初めて見るドワーフ族がどういった者達なのか楽しみで仕方が無いのだが馬を操作してるジールの背中からは不機嫌な匂いが漂っている。
「あのさ、もしかして怒っているよね」
「当たり前でしょ、ギルド長がどんなパーティを作るのか知らないけどさ、D級以下の階級とだけで行く何てありえないでしょ」
確かにミノタウロスと出会った事も無いし戦った事も無いからその怖さを知らないが、もし討伐出来ない相手だと分かったらジールだけを連れて逃げるつもりだ。
あのオーガですら【雷瞬】での攻撃を完全に躱せなかったのだから逃げるだけなら何とかなるのではないかと思っている。
「そうだけどさ、依頼の達成条件が完全攻略じゃないんだから無理はしないさ」
「だからと言って何でB級やC級の冒険者が一緒じゃ嫌なのよ、もしかして自分の力を誇示したいっていうの?」
「違うよ、何もせずに此処にいた連中とは一緒に行動したくないんだよ」
「どういう事……あ~あのね、それは仕方のない事なんじゃないの」
「俺はそうは思わない。この街の冒険者にとってワイバーンに襲われた街や村なんて他人事なんだろ、だからこの街の冒険者はそんな状況を知っていてダンジョンに入っていたんだ」
「そうだけどさ……」
ジールが言葉にしないセリフは予想がつくし、もし俺があそこにいなかったとしたら討伐の為のわざわざイレイガに行ったかどうか分からない。
綺麗事を言っているのは分かってはいるがワイバーンを討伐した俺達を利用してミノタウロスを倒させようとしているのも何んとなく気に入らないだけだ。
「さっきも言ったけど無茶はしないよ、俺の逃げ足が速いのは知っているだろ」
「もしかしてダンジョンの中であれをするつもりなの」
「それしか無いだろ、ただ今度はどんな道か分からないから怪我しても良いように回復薬はいっぱい買っておくよ」
「ちょっと馬鹿なの、怪我をする前提じゃない」
ジールは怒っている口調ではあったが話始めた頃とは雰囲気が変わっている。納得はしてはいないだろうが理解はしてくれたようだ。
◇◇◇
街の外れのあるドワーフ族の集落は平屋の石造りの家が並んでいて、倉庫の様な建物からは何本もの煙突が伸びていてそこから煙を吐き出している。
「凄いな、中世と工業地帯が交わったようだな」
「んっ何か言った? 良く聞こえないんだけど」
思わず日本語で呟いてしまったのだが、運良く騒音に紛れて聞き取れなかったようだ。
「何でもないよ」
「ねぇもっと大きい声で話してよ、あんたの魔法よりかはマシだけどそれにしても五月蠅いよね」
「あのさ、城壁が途中で壊されていて柵しか無いんだけどどうなっているんだ」
「ドワーフ族が勝手に壊したんじゃないの? 城壁を壊すなんて信じられないけどね」
城壁は無理やり壊されたようになっていて、そこからは柵が伸びているのだがいびつな形だしあれだと盗賊や魔獣が簡単に出入してしまうと思う。
本当にあれで良いのか?
◇◇◇
アキムから聞かされたことはドワーフ族はかなり厄介な種族らしく、初めて見る人間に対してはまともな物を売ってはくれないそうだ。
そのまともでは無い物すら人間の鍛冶屋が作る物に比べたら数段も上等な物らしいので殆ど文句が言えないらしい。
だが今回はそれを防ぐためにアキムが紹介状を書いてくれたので俺達が向かう店はもう決まっている。
簡単な地図に書かれてあった武具店は大通りに面していてこの辺りでもかなり大きな店のように見えるのでちょっとだけテンションが下がってしまう。
「ちょっと何でそんな顔をしてんのよ、私には良い店に見えるんだけどな」
「確かに良さそうだけどさ、ギルド長が紹介したんだったら隠れた名店かそれなりの雰囲気のある店かなって思っていたんだよ」
「馬鹿じゃないの、いい武具を取り扱っているから繁盛しているんでしょ、命を守る物を売っているんだからいい店に人が集まるに決まっているじゃない」
「そうだよ、本当にそうだと思うけどさ、ただ男のロマンってもの……」
呆れた顔をしたジールは俺をそこに置き去りにして一人で店の中に入り、近くにいた店員にアキムから預かった紹介状を手渡している。
(あれはドワーフ族何だよな、う~ん、ちょっと違うんだよな)
その店員は背丈も低いしがっちりしているのでドワーフ族らしい体格をしているのだが、俺の期待に反してその顔はシュッとしていてかなりのイケメンだ。
(現実はこんなものか)
直ぐに案内をしてくれるようでジールが振り向いて早く来るように手を振っているので気を持ち直して店の中に入った。
入口に近い場所は剣が壁一面に飾られてあり思わず見入ってしまいそうになったがそれを察知したジールが寄って来る。
「早くしなさいよ、そんなに嫌なら他に行けば良いじゃない」
「違うよ、ただ感心していただけだよ」
イケメンのドワーフは笑顔を絶やさずに俺達を店の奥まで連れて行き、更にはその建物を抜けてもう一つのかなり暑い倉庫の中に入って行った。
「オヤジ~、ギルド長の紹介状をもった人間が来ましたよ~」
「何じゃ、お前が対応すれば良いじゃろうが」
「あっいかにもなドワーフだ」
「ああん、何が言いたいんじゃお主は」
そこに現れたのは想像通りのドワーフだったので心の声が漏れてしまった。




