第七十話 条件
誤字報告有難うございます。
「お前らの事は分かったんだがよ、それでどうしてサムライを探しているんだ?」
つい数秒前までは笑顔を見せていたアキムだったが今は真剣な表情に変わっている。
「その名前の意味を知らないでしょ、サムライって言う名は同郷では剣士の意味を持っているんだ。だから気になってね」
「記憶が無いのにか?」
「言葉を覚えていただけさ、もしかしたらそいつは俺の事を知っているかも知れないだろ」
「そんなもんかね? まぁそれだとしても只では教えてやれんな」
「はぁ? あんたはギルド長だろ、情報屋みたいに金が欲しいって言うのかよ」
ちょっと風変わりなギルド長だとは思ってはいたが、腐っている奴だとは思わなかった。だがそれでもサムライの情報は欲しい。
「勘違いするな、俺は賄賂なんか求めちゃいねぇよ、だがなギルド長ともあろう俺が冒険者の情報を勝手に流す訳にはいかねぇんだよ、それでも言える事があるからそれを条件にお前に仕事をして欲しいだけさ、まぁ信用できなければ断ってくれてもいいんだがな」
(その理屈は正しいのか? 何か違うような気もするけどどうなんだろう)
答えを言いあぐねている間にアキムは引き出しから紙を出してきて何かを書いてから最後にサインをし始めた。
そこに書かれている内容は先程の言葉を書いただけだそうだが、殴り書きにしか思えないので正式な依頼票とは違っている。
「それには何の意味があるんですか」
「依頼達成の報酬に冒険者の情報なんて事は正式には出せないからな、ただなこれには俺のサインがしてあるんだ。もし俺が嘘を言ったと判断したら何処かの街のギルド長にこれを渡せばそいつが俺を裁いてくれるだろうよ、それでも気に食わなければお嬢ちゃんの父上にでも言えばいいんじゃねぇか」
ジールは俺の手からその紙を奪ってじっくりと読み込んでいる。
俺は理解した振りをしていたがその紙の文字を全て理解した訳では無いので何処か変な事が書かれているのかいないのかジールに任せるしかない。
「あのさぁ、ちょっとこれはズルいんじゃないの」
「どうした? おかしなことが書いてあったのか」
「あんたはちゃんと読みなって、いい、これだと適当な事を言って誤魔化されるかも知れないわよ」
ジールはアキムを睨みつけながら話しているが、指摘されたアキムは動揺をする訳ではなく涼しい顔をしたままだ。
「ちゃんと俺が知っている場所って書いてあるだろ、そのことで他のギルド長に見せても問題は無い場所を教えてやるさ、それになそれ以上の事を言える訳無いだろ、まぁお前ならその街に行けば分かるんじゃねぇの、でっどうするよ、嫌なら断ってくれても構わないんだぜ」
これ以上はいくら交渉しても無駄の様に思えるし、この街でこれ以上探しても時間の無駄の様に思えるので、何の依頼だか知らないがその依頼を受けたい気分になってくる。
「仕事の内容が書いていないじゃない、ダンジョンでの仕事って何なのよ、鉱石でも掘れっていうの?」
「えっダンジョンで仕事をするの?」
「ったく、あんたはいいから黙っていてくれないかな」
俺がちゃんと目を通していないのが気に障ったのかかなりジールの機嫌が悪く、本気で怒った目を向けてくる。
(字を読んで理解するのにかなりの時間が掛かるって事を言わないと駄目だな、これでもかなり読解力は付いた方なんだけどな)
「人手が中々集まらなくてな、それにお前らだけで行けと言う訳じゃないんだぜ、二十人前後を予定しているからその中に入って貰うつもりさ、ただお前らみたいな低階級の連中はいないから最初は煙たがられるかもしれないがな」
アキムの依頼内容はこの近くにある最大級の鉱石ダンジョンの中にいきなり新たな階層が出現したのでその調査だそうだ。
既に何組ものパーティが調査の為に潜ったのだが、そこに出現する魔物はやけに強く死者が出てしまっているので今では自ら名乗り出て挑もうとする冒険者はいなくなってしまった。
「最初の攻略すると良い鉱石が手に入るし、その後もそこの階層の優先権を貰えるんでしょ、それなのに行こうとしないなんて情けない冒険者しかこの街にはいないの?」
「見てもいないのにそこまで言うなよな、いいか40層迄は楽に倒せる魔物しかいないのにそこにはミノタウロスがいるんだぞ、それに何十体と出現するようだからかなりの死者が出たんだ。それになそいつらを討伐してもそれに見合う鉱石が出るかも知れないなかわざわざ行こうなんて思う奴はいないのさ、まぁギルドとしては調べなくちゃいけないんだ、まぁそう言うこった」
更に話を聞いて行くと仮に失敗したとしても情報はくれるそうなのでそこまで悪い話ではなさそうだ。ただしそこまでにかかった経費は自分で払わなくてはいけなくなってしまうが。
ただ、一つだけ承服できない条件がある。
「ダンジョンに行く事は構わないけど、その二十人のパーティには入る気はないね、まぁダンジョンには初めて入るからサポート要員は欲しいけど、この街のC級やB級の冒険者とは一緒には行きたくないかな」
「ちょっと、何を言うのよ、そんなの無理に決まっているでしょ」
本当に無理なら引き返せばいい。それよりもそいつらとパーティを組むのは嫌なんだ。




