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第六十九話 アキムとの話

 目の前に座っている男は自分の事をギルド長だと言っていて、この会話を聞いているはずの冒険者達は何も言ってこない事を考えるとどうやら本当の事らしい。


「ちょっと、だったらあんな事になる前に何か言ってくれたらいいじゃない。だから此処は雰囲気が悪いんだよ」


「知るかよ、お前らは冒険者なんだからそれぐらいは自分達で解決しろよな、それが出来ない奴にやれる仕事じゃねぇんだよ」


「だったら俺達は合格ですよね」


「まぁそうだな、ただなお前らはどうしてこっち側にいるんだ?」


「「??」」


 実はこの街のギルドは建物が二分割されていて此方側は鉱石ダンジョンに行く冒険者専用となっている。


 いわゆる普通の冒険者は反対側に行かなくてはならず、間違えないようにちゃんと入口に看板があるそうだが俺達は完全に見逃していた。


「注意力がねぇ野郎達だな」


「どうしてそんな面倒な事をしてるのよ」


「そりゃぁよ、持ち込む物が違うし働く時間だって違うんだぜ、揉め事が多くなったから分けただけさ」


 確かに仕事を終えた者とこれから行く者が同じ受付に並んでいたらそうなるのかも知れないが、珍しいギルドだと思う。


(まぁそんなに他のギルドも知らないけどね)


「それじゃ向こう側に行きますよ」


「待てよ、向こうは休憩時間なんだ、行っても誰も対応しないぞ」


 そう言いながらアキムは常温のエールの入ったコップを差し出してきたので飲まざるを得ない状況になってしまった。


「ギルド長がこんな所で飲んでても良いの?」


「揉め事が起きないように見張っているんだからこれも仕事さ」


「見てるだけじゃない」


「武器を出さない限りは何もしないさ、それよりお前はどうやって魔法を出したんだ?」


 やはりわざわざ引き留めたのはその事が理由らしい。


「まぁそこは秘密ですね」


 ギルド長でもあり、怒ると怖そうな人に対する言い方では無いが下手な嘘をつくよりマシだと判断した。


(頼むから怒らないでくれよ)


「まぁ言わねぇよな、それよりよどうして鉱石ダンジョンに行かないんだ。この街なら魔獣の討伐より稼げるんだけどな、まぁそのおかげでC級以上の殆どの冒険者は討伐をやらなくなっちまうんだけどな」


「俺はD級だよ、だったら普通って事じゃないかな」


「はぁ~お前がD級だと、いい歳のくせにか」


 アキムに悪気があるのか無いのか知らないが、大声を出してくれたせいで他の冒険者達は盗み聞きをしているにもかかわらず完全に身体を此方に向けている。


「大声を出さないでよ、俺はね冒険者になったばかりなんだから仕方がないでしょうが、それより一つ質問してもいいかな」


「ん~なんだ、答えられる事ならいいぞ」


「【サムライ】って冒険者が此処にいるよね、何処に行けば会えるかな」


「お前、奴に何の用だ」


 いきなりアキムの目が鋭くなり、先程まで此方を向いていた冒険者も今ではわざとらしく席を立ち始めた。


(おいおいおいおい、どうなってるんだ? 聞いてはいけないことだったのかよ)


 一筋の汗が額から流れ一気に口の中が乾き始める。


「どうかしたのですか」


「ちょっとこい」


 アキムはその顔のまま立ち上がると奥の扉を開け、俺達はただ黙って付いて行くしかなかった。



 ◇◇◇



 最上階にある豪勢な一室の中に入れられ、今のアキムは難しい顔をして俺達からギルドカードを奪うとずっと水晶を見ている。


 思わず適当な理由を告げて此処から逃げ出したくなるが、部屋の前には護衛らしき職員がいるので下手な事は言えそうもない。


「何だと、お嬢ちゃんはラング家のご息女なのか……お前はファウンダーエルフの里で暮らしていただと……ワイバーン……」


 冒険者登録ではそんな事を記入してはいないのに、俺達の事を次々と呟き始めている。


「どういう事?」


「私も知らないよ」


 暫くアキムはブツブツと呟いていたがようやくその目を水晶から放してその視線を俺達の方に向けた。


「お前もそうだが、お嬢ちゃんも面白い奴だな」


「どうして里で暮らしていた事が分かったんですか」


 ほんの数分前までは冒険者らしく敬語など使わなかったが、もう普段通りの言葉遣いになってしまっている。


「それはだな……」


 ギルドカードには秘密があり、討伐履歴や移動した場所は全てどの職員もカードを預かれば分かってしまうし、職員がそれ以外で知り得た情報も勝手に入れられてしまうそうだがそこまでになるとギルド長だけしか見る事は出来ないそうだ。


(何だよ、それだと噂話も書かれているんじゃないのか)

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