第六十八話 初のダル絡み
「お前は此処で何をしているんだ。僧侶が来る場所じゃねぇだろうが、冷やかしなら早く出て行くんだな」
顔を赤らめたチンピラ風情の男達が絡んでくるのでいい迷惑だし、周りにいる冒険者達もニヤニヤしているだけで助けてくれる気配はない。
「お嬢ちゃんは冒険者なのか、だったら俺達のパーティに入らないか、飯炊き要員として入れてやるよ」
そのチンピラの恰好は作業着のような恰好をしているし、周りを見渡してもジールのように皮の鎧を着ている者など一人もいないのでこれがこのギルドの特徴かもしれない。
「結構よ、大体こんな昼間から酒を飲んでいるパーティに入りたいと思う訳ないでしょ」
常識的な事を言ったと思うのだが、そいつらだけではなく周りからも嘲笑のような声が聞こえて来た。
「何も知らねぇんだな、いいか鉱石が取れるのは夜の内だけなんだ、俺達は仕事を終えてここで一杯やっているのにそれの何処がいけないんだよ」
「こいつの言う通りだぜ、いいからそんな男といるよりこっちにこい。この街で稼ぐ方法を教えてやるからよ」
ジールは恥ずかしさと怒りで顔を赤くしているし、俺は初めてギルドで冒険者に絡まれたので段々イライラしてきた。
「五月蠅い連中だな、俺達は鉱石狙いじゃ無いんだからあっちに行ってくれ」
「はぁ此処にいるのにお前は何を言っているんだ? 偉そうにするんじゃねぇよ」
その男は鉱石採取のせいかジールのウエストぐらいある太い腕で胸倉を掴んできて無理やり俺を立たせた。
そんな腕で殴られたら痛いどころではなさそうなのでそっと杖を握りしめる。
「放しなよ、仲間が苦しんでいるよ」
「「ぐがががががががががが」」
名前を付ける程の魔法では無いただちょっと痺れるだけの雷を他の2人に浴びせてやった。
それだけの威力しか無いので意識しなくても騒音のような音はなっていない。本当だったら目の前の男にこそ食らわしてやりたいが自爆しそうなのでその手を放すまで我慢する。
「お前らだいがががががががががががが」
胸倉から手を放して助けに行ったところで同じように浴びせてあげた。
こいつらは慣れていないのか杖の先から細い雷が伸びているというのにそれに対応しようとすらしない。
「あのさぁ杖を持っているんだから魔法使いに決まっているだろ、油断しすぎなんだよ」
「はぁはぁ、お前は詠唱をしていなかっただろうが、さてはこの女がやりやがったんだな」
単なる馬鹿では無くてそれ位の知識は持ち合わせていたらしい。
「外れさ、あんたらに聞こえないように詠唱を唱えていただけだよ、だからこんなもんですんでいるんだ、それともちゃん唱えてやろうか」
その言葉に反応してジールは俺を庇うようにランスを構えている。必要は無いのだが周りの目があるから守る振りをしてくれた。
これで終わるかと思ったが今度は奥の方からドロフェイの体格とそっくりな男が歩いてやって来る。
ただその顔は彫りが深いかなりのイケメンと言った感じの男だ。
「お前らの負けだな、いいかそれ以上騒ぐとどうなるか分かっているんだろうな」
「あんたには関係ないだろ」
「ここで俺に文句を言うのか、おいっ」
まだ雷の影響で立ち上がれない男達の首元を掴んで一人ずつその場所から入口に向けて放り投げ出し始めた。
(おいおい、そんな人間を軽々投げるなんてどんな力だよ)
「まぁこれでいいだろ、でっお前らは俺と一緒に飲もうな」
断る言葉が出掛かったが、周りの冒険者の此方を見ている空気の色が変わったような気がしたので無下に断らない方が良いように思える。
(何だか悪い予感しかしないんだけどな、それにしても職員は何をやっているんだ。助けなくてもいいからせめて声を掛けてくれよ)
ほんの少し悩んでいるとジールが背中越しに聞いて来た。
「ねぇ変な雰囲気だよ」
「そうだな、このまま従った方が良いかも」
「分かった」
黙って頷くと俺達をエスコートするように案内を始め、奥の席に座った途端に目の前のテーブルに次々と料理が並び始めた。
周りの冒険者はこっちを気にしていない様な振りをしているが、息を飲み込みながら此方の様子を伺っている様なので何があっても良いように思わず杖を持つ手に力が入ってしまう。
「あの、これは」
「奢ってやるから好きに食べろよ、それでお前らの名前は」
「俺がユウで彼女がジールさ、それであんたは誰なんだい」
「俺かい、此処を仕切っているギルド長のアキムさ」
ギルド長にしては若いし、それに此処にいる冒険者の誰よりも強そうな男だ。




