第六十七話 ゴルゴダの冒険者ギルドにて
かなり時間を費やしてしまったが、何とか辿り着いたゴルゴダの街はこれまでの街とは少し違っていてある区間からいくつもの煙が上がっている。
「あそこには何があるんだ?」
「ん~、この街にはドワーフ族がいるからね、彼等が武具や道具を作っているんでしょ」
(ドワーフか、想像通りの種族なのか直ぐにでも見に行きたいけど先ずはあっちに行かないとな)
この街に来た目的は【サムライ】が誰かを確認する事なので、一番最初に行く場所は勿論冒険者ギルドだ。
「さぁ行こうか」
「ねぇその前に武具を新調した方が良いんじゃない。その格好だと舐められるでしょ」
自分の魔法でボロボロになった鎧とかは処分してしまったので。今はエルフの里で普段着として着ていた作務衣の様な服を着ている。
見た目は何の変哲もない服だが、魔法の効果が掛かってあるので売るとすればかなりの高額になるだろう。ただしこの服には防御力は見た目通りだが。
「新人の冒険者じゃないから絡んでこないだろ、一応D級の冒険者なんだからさ」
「そうだといいけど」
誰かに絡まれるだとかはどうでもいいが、それよりも道中は色んな人にずっとジールの従者だと見られていたのが心外だ。
(杖を持っているのに何で勘違いされてたのかな、そもそもこいつが俺を乗せないからそう見られたんだよな、まぁそのおかげでかなり練習が出来たからいいか)
◇◇◇
この街のギルドも他の街のギルドと大差はないように思えたが、中に入って見ると今迄嗅いだことのない独特な匂いが漂っている。
「何だろこの匂いは」
「そうね、何なのかしら」
入ってすぐの場所で立ち止まったまま小声で話していると、見た目は細いがしっかりと筋肉が付いている初老になったばかりの様な男が寄って来た。
「もしかして新人か」
「いや、他の街で登録はしてあるよ、ただこの街に来るのは初めてだけど」
「そうかい、だったら何でそんな場所でしかめっ面をしているんだい」
「この中の匂いが何なのかって思っただけよ……臭いとかでは無いんだけどね」
何て表現して良いのか分からないので戸惑っているし、これを口に出したことで揉めないようにジールは言葉を選んだつもりだった。
だが、目の前の男は笑い出し、この会話を聞いていた者達も笑い始めた。
「えっ何なのよ、何も面白い事言っていないんだけど」
「あぁすまんな、別に悪気があった訳じゃないんだ、ただな、そんなんで良くこの街に来たなって思っただけさ」
「どういう意味なんだ」
「その説明はあっちでしてやるさ」
にやけながらその男が指を差した方角には酒を売っているカウンターがあった。
(タダよりかはマシだろうな、それぐらいで情報が買えるのなら良いとするか)
元の世界では強い方では決して無いがそこそこは飲めるので週に一度は飲んでいたが、この世界に迷い込んでから数える程しか飲んでいない。
酔うと魔力が乱れて魔法が使えなくなるという理由もあるが、それより問題なのはこの世界の酒が不味いからだ。
せめて冷えていれば良いのだがここでは常温が当たり前のようになっているし、だったら冷却の魔法で冷やせば済む話だがそんな人間が酒場の店員でいる訳は無いし、俺もそんな便利な魔法は使えない。
そんな不味いと認識している酒をその男、ゲルトは何杯も自分の前に並べている。
「そんなに並べて飲まなくても良いんじゃないか、飲み終わったら注文すればいいだろ」
「すまんがまだ君らを信用した訳じゃないんでね、情報に合った報酬を先に貰わないと損をするかも知れねぇからな」
その気持ちは理解出来るが、いくら何でも初めて入ったギルドの中でしかも冒険者の見ている前でそんな馬鹿な事は出来ない。
「分かったから酔う前にちゃんと教えてね」
「はいよ、先ずな……」
それ程重要な情報ではなく、この匂いの原因は鉱石ダンジョンであった。
鉱石ダンジョンとは魔物の数は少ないがその代わりに様々な種類の鉱石が取れるダンジョンの事を言うらしい。
(だからドワーフ族がいるのか)
この街では討伐よりも鉱石を採る冒険者の方が多いし、冒険者間で揉めないようにちゃんとした取り決めがあるのだが俺達には関係の無い話だったので序盤でどうでも良くなっていた。
(俺の魔法は狭い場所ではちょっとアレだからな)
「ねぇもうダンジョンの話はいいから、それより【サムライ】って冒険者の事は知っているの」
「何だ、あいつの事が知りたいのか」
ジールの言葉か耳に入ったのか、見るからにお近づきになりたくない輩が俺達のテーブルに寄って来た。
「おいっゲルトのおっさんはそこをどけっ」




