第六十六話 目が覚めると
目を覚ますと下着だけの状態で上等なシーツを掛けられていて、特に何かをされている感じは無かった。
(この世界だから怪我は全て治ったんだろうな、そもそもこの世界じゃなかったらあんな事は起きなかったんだけど……あっ)
何気に隣を見ると椅子の上にボロボロになってしまった皮の鎧とズボンが置いてあり、マジックバックはどうなってしまったのか気になって取り出すと、それは今までと変わらずに綺麗なままポケットの中にあった。
(良かった~これが壊れていたら全財産を失う事になっていたよ)
その中からエルフの里で着ていた服を取り出して着替えをしていると、扉が開いてライルが中に入って来た。
「元気そうじゃないか、ただね、かなりひどい状態だったんだ、もう少し身体を休めて置いたほうがいいな」
「ライルさんが助けてくれたのですか、本当に有難うございます」
深々と頭を下げるが、黙ってあそこから離れてしまったので何となく気不味いような気もする。
「気にしなくていいさ、ただね、ジール嬢には良くお礼を言うんだぜ、彼女だってかなりの怪我をしていたのに走って私達の所に助けを求めに来たんだからな」
「そうだったんですか、ジールは大丈夫ですか」
「彼女は大丈夫だよ、それよりまさか勝手に居なくなるとは思わなかったけどな」
「すみません」
もう一度頭を下げるが、笑いながら肩を叩いて来たのでそれ程気にしていないように思える。
「その気持ちは分かるから気にしないで良いよ、私だって……いや、君には私の部下になって欲しかったが、君はこのままの方が良いかもな」
「そうですね」
「今回の事が全て終わったら何処かでゆっくりと食事でもしようじゃないか」
「その時はお礼をさせて下さい」
すると勢いよく扉が開かれ、若い兵士が中に入ろうとして来たがライルが片手を上げるとその若い兵士は敬礼をして出て行ってしまった。
「どうやら時間が来てしまったようだ。私達はもう行かなくて行けないが君達は此処で休んでから出発するといい、料金は私の部隊に請求がいく事になっているから気にしないでくれ」
「何処に行くんですか」
「帝国だよ、わが国王の狙いは察しがつくだろ」
「それでいいんですか」
「私はこの国の騎士だからな、仕方のない事さ……そうそうジール嬢は買い物に行っているそうだからもう少ししたら帰って来るだろうな」
少しだけ悲しそうな顔をしながらライルは部屋を出て行ってしまった。明確な答えは貰っていないがこのニックスヒリア王国は魔国との戦いで疲弊し勇者すらまともに動けない状態のレストル帝国をどうにかするつもりなのだろう。
(今村さん達も巻き込まれているのだろうな、そんな事に関わらなくてはいけないなんてかわいそうだけど今の俺には何も出来ない)
心の底から皆に同情をしてしまうが、どうか無事でいられるように祈るしかない。
窓の外を眺めながら弾かれたことによって自由に動ける俺のこの状況に安堵を覚えていると今度はジールが部屋に入って来た。
「やっと目が覚めたんだね、ちょっと寝すぎだよ」
ジールは何故か何時のも恰好ではなく平服を着ている。
「どうしたんだ、そんな恰好で外に出るなんて珍しいな」
「修理に出さなくちゃ行けなかったらこれを着るしか無いんだよ、それよりあんたが庇ってくれたから少しの怪我ですんだんだよ、ありがとね」
「いや、全ては俺のせいだったんだから謝るのは俺の方だ」
意識が無くなってからからの話を聞くとおおむねライルから聞いていたのと同じ内容だったが、やはりあんな場所で実験をしてしまった俺が馬鹿だと改めて思い知らされた。
翌日になってジールの修理した鎧を引き取りに行くときに、俺も武具の新調をしようと思ったがこの村では修理屋しか無かったのでゴルゴダか、もしくはその前にどこかの街で買い揃えようともう。
◇◇◇
「あのさ、駆け足は止めてくれないか。こっちは徒歩何だからさ」
「あんたには乗って欲しくはないんじゃないの、馬は馬鹿じゃないからね」
出発する日の朝にいつものように馬に乗ろうとしたが、俺のせいで怪我をしてしまったこの馬は近づくだけで暴れ出してしまってのでちょっと離れたところを歩く事になってしまった。
「これじゃゴルゴダまでかなり時間が掛かるよな」
「それも全部あんたのせいだから文句を言わないでよ、だったら自分で馬に乗れるようにすればいいじゃない」
「そう簡単にいくかよ」
こうなったら馬のご機嫌を取る為に次の村でこの馬の好きそうな食事を与えるしかない。




