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第六十五話 さぁ実験の時間だ

 ジールにしっかり掴まりながらザシャが言っていた言葉を思い出している。


(魔法に魔力を込めるだと、そもそも魔力を込めているから魔法が使えているんじゃないのか)


「あのさ、どうして詠唱を唱えるんだ」


「何……あぁそうかあんたは知らないもんね、いい、詠唱って…………どう? 理解した」


「何となくね」


 ジールの説明は分かりにくかったが、要するに詠唱すると魔力が増幅すると言う事だろう。


(属性は関係なくなるのかな? もっと詳しく知るには魔法使いを探すか、もしくは学校だよな)


「ねぇもしかして普通の魔法を習おうとか思っているの?」


「それもありかなって思ったんだよ」


「止めときなって、折角あんたはエルフの使い方が出来るんだからそのままの方がいいよ、もしかして詠唱を覚える事によって今の魔法が使えなくなるかも知れないよ……ねぇやっぱり人間が使えるのがおかしいんだよ、あんたってさ実はハーフエルフとかなの」


「違うさ、ただの……人間だよ」



 ◇◇◇



「う~ん」


 ジールに捕まりながら雷の球を出現させて馬と同じ速度で移動させている。


(ここまでで魔力を込めているんだけどな、う~ん)


 どうしたら良いか分からず身体に力を入れてみたり、唸ったりしているが特に魔力を込めているようには思えない。


(どうやるんだ……そういや最初の頃を思い出して……魔力の流れを感じて……)


 一度解除してからもう一度雷の球を出す時に、今度は自分の中にある魔力の流れを感じながら慎重に試してみる。


(あれっ魔力がまだ繋がっているんだな)


 今までは気にもしていなかったが、どうやら俺と雷の球は薄っすらと魔力で繋がっているようだ。


 そこまでは良かったのだが、それからの事が全く先に進まないまま時間だけが過ぎて行った。


「ねぇ、さっきから何なのよ、凄く耳障りなんだけど意味がないなら止めてよね」


 その音は真夏のコンビニの前にある電灯のような「ジジジ」と言う音なのだが、この世界では電気が存在しないのでジールにとっては音が小さくても不快な音なのだろう。


「ちょっとした実験なんだ、そうだっ耳栓をしてくれ」


 マジックバックの中から耳栓を探すがそんな物はある訳もなく。仕方が無いので下着の端を切ってジールの耳に詰めてみた。


「ねぇ何を詰めたのよ」


「布だよ」


「ねぇってば聞こえにくいよ」


 一度ジールの耳から外して只の布だと言う説明をした。


(そんな事よりどうやって魔力を込めるかだよな……これかな)


 魔力を杖の先に集め、それを雷の球に伸ばして行く様なイメージをする。最初は何も変化はなかったが試行錯誤している内にようやく魔力が流れ出して行った。


 これが正解なのかは分からないが、今までは「ジジジ」と言う音が流れていたがだんだんと二気筒バイクのマフラーから出る音のように渇いた音に変化していく。


 こうなってしまうと下着の耳栓など意味がないらしく、ジールはその端正な顔を歪めながら振り向いて怒りを抑えきれないようだ。


「ちょっといい加減にしてよね、魔法の練習だろうから我慢していたけどさ、せめてもっと遠くにあれを浮かべればいいでしょ」


「悪かったって、だけどさ今は上手くいっているからもう少しだけ我慢してくれないかな」


 今の段階でも20mは離れているのだが、段々とその音が大きくなるにつれてこの音を聞いた事がある俺ですら我慢が出来なくなってくる。


(あぁもう五月蠅いな、これを何処かに当てるか……んっどうしたんだ)


 目標物を選んでいる最中に何故か雷の球から音が聞こえなくなってきたが、魔力はまだ身体からそこへ流れている感覚はある。


(音がしないって事は威力がなくなったのかな)


 不思議に思って見ていると、それまでは光を放っていたがそれすらも消えて黒色に変化しながら大きさも小さくなっているようだ。


(何が起こっているんだ……あ~~~)


「ジール頭を下げろっ雷……」


 焦ってしまったせいか【雷瞬】の魔法が発動せず、ただジールの身体に覆いかぶさると次の瞬間に雷の球は音もなく破裂した。


 最初に衝撃波が襲って来て俺とジールをいとも簡単に吹き飛ばし、身体の至る所が熱くなってくる。


(ジールは大丈夫か……)


 馬は穴だらけになって倒れ、俺はジールを抱えたまま意識を失った。

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