第六十三話 こんな日がくるなんて
オーガに肩をがっしりと掴まれてしまっていて動こうとしても全く動く事が出来ないでいる。
「貴様~約束が違うじゃないか」
ライルは駆け寄りながら剣をオーガに突きつけ、騎士達も回りを囲んでいる。
だがオーガはまるで気にしない様でそのまま俺の顔を覗き込んできた。
「オレハハナシガシタインダケドナ、ソレニシタニアルヤツハオレニハキカナイゼ」
隠してある【雷網】がバレてしまっているようだし、このまま肩を握りつぶされたら終わってしまうので【雷網】を解除するしか無かった。
「これでいいのか」
「ソウサオマエハ……」
「クアッコーーー」
オーガの言葉を遮るようにかん高い鳴き声が聞こると傷だらけのハーピーが俺達を取り囲んでいる騎士を飛び越えてきた。
すると俺の行動よりも速くオーガがそのハーピーに向かって飛び蹴りをし、またしてもハーピーは元のいた場所まで吹き飛ばされる。
「’”#$%&&$&’」
オーガの野太い声が響くと下にいるオーガはそのままそのハーピーを取り押さえた。
「’%#%’’%$&」
「’&$#”%’(&」
目の前のオーガと下にいるオーガが会話をしているのでそっとマジックバックの中からおばば様の腕輪を取り出し試しに装着してみた。
すると、最初は上手く聞き取れなかったが段々と話している言葉が耳ではなく頭の中に聞こえて来た。
「……はこのまま歩いて帰れ、ただその馬鹿はそこで反省させてろ、いいな」
「ザシャ隊長はどうされるのですか」
「俺はこいつと話してから帰る。それからその馬鹿を使って帰るからお前らよりは早く戻るんじゃねぇか」
(こいつって、もしかしなくても俺の事だよな)
下にいるオーガ達はついさっきまではかなりの怪我をしていたが、今では何事も無かったように走り始めた。
そしてただ一羽だけ残されたハーピーは項垂れながらもそこに座っている。
部下達と話が終わるとザシャは両手を上げその場に座り、その隣に座れと言わんばかりに地面を叩いた。
「何をしたいんだ」
「ライルさん、どうやらただ話がしたいみたいなんで、良いですか」
「君は本当に良いのか」
「どのみち暴れられたらお手上げですよ」
ライルが片手を上げると囲んでいた兵士と共に少し離れていき、そこで俺達の動向を見守っていてくれるようだ。
心配そうなジールの顔が見えたので笑顔を見せてみたが、どうしても表情がぎこちなくなていると思うのでどのような風に見えているのか分からない。
「それで話って何だい」
「んっ何だ、頭に言葉が聞こえるぞ」
「直ぐに慣れるから普通の言葉でいいよ、ザシャ隊長」
「どうして俺の名前を知っているんだ?」
ザシャは驚きを隠せない様子で俺を見てくるが、それは俺も同じ気持ちだ。まさかこの俺がオーガと座って会話をする日が来るなんて数年前なら想像も出来なかった状況だ。
「腕輪のおかげでさっきの会話を聞いたんだよ」
「人間族はそんな技術を持っているとはな」
「人間はどうなんだろ、分からないな、これはエルフの技術なんだよ」
「けっエルフの野郎どもか、癪に障るがまぁ仕方ねぇと思うしかねぇか」
ザシャはエルフと聞くと顔を歪めたのでもしかしたら人間族よりエルフ族の方が嫌いなのかも知れない。
「魔族とエルフ族は仲が悪いのかい」
「どうだろうな、他の連中の事は知らんが俺らの一族は嫌っているな、何度も戦った事があるがどうも奴らの戦い方は苦手でな……んっお前の魔法はあの国の連中とは違うと思っていたが、そうかエルフの魔法かっ」
まさかいきなり当てられるとは思わなかったし、そんなに違う物だろうか。
「エルフから教わった事は認めるよ」
「ふ~ん、てっきり勇者かと思ったがそうだったのか、まさかエルフの仕業だったとはな、ただなぁそれにしてはお粗末な魔法じゃねぇか、がはははははは」
いきなり馬鹿にし始めるし、何がそんなに面白いのだろうか。




