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第六十話 第二回戦の始まり

 杖を身体の前に構えてしっかりと握りしめるが、詠唱の真似事も止め普段通りにしようと心掛ける。


「さて、やってみるか」


 杖の先に雷の球を出現させ、向かってくる魔人達の方へ移動させると1組は後ろに下がって行くがそれ以外は速度も進行方向も変えようとはしなかった。


「ねぇまたあれなの、それでいいの?」


「本当にそれが理由なのか試してみたいんだ。ほらっ今度はいつもみたいにいい音を出してるだろ」


(あっあいつら、もしかして見に行こうしてるのか、くっそ~さてはさっきのを見ていたんだな、馬鹿にしやがって)


 魔人達の更に上に向かわせているのに、2組の魔人はわざわざ雷の球に近づいて行っている。下にいるオーガは棍棒でどうやら触るつもりらしい。


「あっそうだ、ライルさんは対話とか試さなくて良いんですか?」


「良いんだよ、そんな態度には見えないからな、それより本気を出してくれよ……そろそろだろ」


 ライルが突撃の合図の為の片手を上げたので騎士達の緊張感が此方にも伝わってきて身体がピリピリしてくる。


「それでは行きますよ……行けっスパーク」


 空が震えるほどの重低音の音が響き渡り、まばゆい光を放ちながら魔人に迫っていく。


 今度は速度も上がっているせいか向かってくる全てのハーピーの頭上に当り、飛ぶことが出来なくなったハーピーはオーガと共に落下して行った。


「さっきとはまるで別物じゃないか」


 副長のレオニーは耳を抑えながら驚いたように呟いたが、隊長であるライルは耳を塞ぐ事をしないで真っすぐ前を見ている。


「あの高さから落ちたんだ、いいか、これなら勝機があるぞ、全てを殺してくるんだ」


「「「おおおぉぉぉぉ~」」」


 先程までは悲壮感が漂っていたが、向こう岸に戻って行った1組を覗いて全てが落ちているのを見て、騎馬隊の闘志が高まったようだ。


 まだ耳鳴りが治まっていないはずなのにそれを気にせず一気に坂を下って行く。


「「「&%”$&$&’~」」」


 だが、直撃を受けたハーピーはともかくオーガはよろめきながらも立ち上がり、威嚇の叫び声を上げ始めた。


「よしっ、私も行ってくる」


「止めろって殺されるだけだぞ、雷銃」


 馬に乗り込もうとしたジールの鎧を片手で掴んで動けなくさせ、騎馬隊に当たらないように弧を描く様に【雷銃】を撃ち込んで行く。


 なるべく邪魔にならないように撃ったつもりだったが騎士はともかく、馬にとってその音は恐怖でしか無いらしく足を止めてしまう馬が何頭か出てしまった。


 それでも一体のオーガの頭を吹き飛ばし、もう一体は肩から胸にかけて深くえぐり取ったが、最後の一体にはその棍棒で弾かれてしまった。


「全ては殺せなかったか」


「それでもさっきよりかはいい出来じゃない」


「もっとやるか……無理だな」


 既に下では騎士とオーガによる乱戦が始まってしまったのでこれ以上の魔法は騎士にも被害を与えてしまうかも知れない。


 ただ騎士達は思った以上に善戦していて、数の有利を生かして戦っている。


(あぁやられた……俺に何か……【雷剣】だったらいけるのか)


 久しぶりの魔法ではあるが、雷を纏わせた杖ならばオーガの棍棒もその身体も焼き切る事が出来そうだ。


「よしっ俺が行ってくる」


「何言ってんのよ、魔法使いのあんたが接近戦をするなんて馬鹿じゃないの、私を止めたようにもっと冷静になってよ」


「だってさ、あんな状態だと撃つ事は出来ないし、それに見てみろよやられている騎士も出始めたぞ」


「君はそんな事は気にしなくていい。君の魔法のおかげでハーピーは戦力外だしオーガだって本来の力とは遠くかけ離れているんだ、それだけで十分だよ、ただなまだ何があるか分からないからその魔力を温存しておいてくれ」


「……はい」


 しかし、出だしは調子が良かった騎馬隊だが今は拮抗してしまっている。


「君達は此処から先に進むんじゃないぞ、では行ってくる」


「はっお供します」


 ライルと副長も坂を下り戦闘に加わり始めると、士気が上がったのかほんの少しだけ盛り返したような気がした。

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